韓国経済、最低賃金引き上げの副作用に政府戸惑う 最低賃金を引き下げるとどうなるのか

韓国経済、最低賃金引き上げの副作用に政府戸惑う 最低賃金を引き下げるとどうなるのか

記事要約:読者様から書いてくれたコメントで最低賃金の引き下げが可能かどうかについて質問したコメントがあるのだが、基本的に最低賃金引き上げることはあっても、最低賃金を引き下げることはあまりない。では、ここで問題なのは「最低賃金を引き下げれば雇用は増えるのか?」。実はそうではない。

ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン教授。この前も出てきたと思うが,彼は「Would cutting the minimum wage raise employment?」とタイトルでこのように述べている。大事な箇所を翻訳する。

Here’s how the fallacy works: if some subset of the work force accepts lower wages, it can gain jobs. If workers in the widget industry take a pay cut, this will lead to lower prices of widgets relative to other things, so people will buy more widgets, hence more employment.

But if everyone takes a pay cut, that logic no longer applies. The only way a general cut in wages can increase employment is if it leads people to buy more across the board. And why should it do that?

誤解の仕方は次のとおりです。労働力の一部が低賃金を受け入れると、雇用を得ることができます。ウィジェット業界の従業員が給与を削減すると、ウィジェットの価格が他のものと比べて低くなるため、ウィジェットの購入が増え、雇用が増えます。

しかし、誰もが給料を取った場合、その論理はもはや適用されません。賃金の一般的な引き下げが雇用を増加させる唯一の方法は、人々がより多くを買うように導く場合です。なぜそれをしなければならないのですか?

これはグーグル翻訳だが、意味は読み取れると思う。少し翻訳を捕捉しておくと、ウィジェットというのは架空の製品のことである。

クルーグマン教授は最低賃金引き下げをした場合は確かに雇用を得ることができる理由について製品価格が安くなるから、製品購入が増えるので雇用が増えるという。ところが、その前提には誰もが給料を受け取った場合、その論理はもはや適用されない。なぜなら、人がより多くの製品を買わなければいけないのか?

Well, the textbook argument — illustrated in this little writeup — runs like this: lower wages lead to a lower overall price level. This increases the real money supply, and therefore liquidity. As people try to make use of their excess liquidity, interest rates go down, leading to an overall rise in demand.

まあ、この小さな執筆に描かれている教科書の議論は、こういうふうに実行されます。賃金の引き下げは全体的な物価水準の低下につながります。これは、実質のマネーサプライ、したがって流動性を増加させる。過剰流動性を利用しようとすると、金利が下がり、需要が全体的に上昇する

続きはこんな感じだ。最低賃金の引き下げは全体的な物価水準の低下に繋がる。これはマネーサプライ、通貨の流通量を増加させる。そして、過剰流動性を利用しようとすれば、金利が下がり、需要が全体的に上昇する。

さて、ここまで読めば経済をある程度、理解している人にはクルーグマン教授の述べていることは、最低賃金引き下げがもたらす効果は雇用が増えないばかりか,実はデフレになるということに気付いたのではないだろうか。

大前提として、経済というのは緩やかなインフレが理想とされている。ところが、最低賃金引き下げはデフレをもたらすので、実は全く逆効果なのだ。過剰なインフレを抑えるためにデフレ政策を取ることがあっても、雇用が増えないようなことは普通はしない。雇用が減って喜ぶ政府なんていないからな。では、もう少し続きを読もうか。たまには英語の勉強しながら、経済論を見るのも楽しいかと。

Even in this case, it’s hard to see the point of cutting wages: you could achieve the same effect, much more easily, simply by having the Fed increase the money supply.

But what if we’re in a liquidity trap, with short-run interest rates at zero? Then the Fed can’t achieve anything by increasing the money supply; but by the same token, wage cuts do nothing to increase demand.*

この場合であっても、賃金削減のポイントを知ることは難しい。連邦機関にお金の供給を増やすだけで、より簡単に同じ効果を達成することができる。

しかし、もし短期金利がゼロである流動性罠に陥っているとすればどうでしょうか?そして、連邦準備制度は、マネーサプライを増やすことで何も達成できません。同じように、賃金引き下げは需要を増加させるものではありません。

先ほど、指摘した通り、最低賃金引き下げはデフレをもたらし、雇用を減らす。なら、デフレの時に使うのかという話だが、最低賃金引き下げなくても、マネーサプライをコントロールするだけで同じ効果が得られるとクルーグマン教授は述べている。ああ、「liquidity trap」流動性の罠がきているな。これがちょっと難しい。経済用語ではこのようにある。

>金融緩和により金利が一定水準以下に低下した場合、投機的動機による貨幣需要が無限大となり、通常の金融政策が効力を失うことを指します。

この説明で理解できれば良いのだが、難しいと思う。わかりやすくいうと日本は長年、ゼロ金利政策をとっていたわけだ。一般的に不況の場合、金利を下げれば、企業は銀行からお金を借りやすくなるので、民間投資や消費が増える。

ところが、金利の水準が低すぎるとその効果を失う。これを流動性の罠と呼んでいる。では、どうして金利を下げても消費や民間投資が増えないのか。

これは貯蓄するからだ。デフレになると物の値段が下がる。すると、現金をそのまま持っている方がいいという貯蓄や安全心理が働く。こんな状態で株式や不動産投資をするのか。儲からないのでしないわけだ。日本の失われた20年ではこの流動性の罠に陥ったわけだ。だから、量的緩和、マイナス金利政策というものを取らざる得なくなった。日銀が政策として2%インフレ目標を目指すわけだが、それを達成できずにいるのは流動性の罠に陥っているから。完全な手詰まり状態といえる。

難しい?もっとわかりやすく言えば、つまり、デフレでは低金利のメリットを感じないということ。日本人の貯蓄が大幅に増えている現状を見てもそれはわかるだろう。前にも述べたが、企業が成長するには投資が不可欠である。その投資が減れば減るほど景気は悪化していく。株を購入するというのは企業に投資しているわけだ。企業は集めたお金で新しい製品を作ったりする。しかし、デフレになると現金や内部留保が大きくなり、積極的な投資が減る。投資とは当然、雇用の増加にも関係する。何かをするときに新しい人材が必要になるからだ。

何だ。こんなわけのわからない長文を読むことになったのか。と、思ったかもしれないが、韓国経済を見る上でも、3つの大事な要素に、貿易、投資、雇用がある。そして、これらは独立しているわけではなく、全て関連して存在している。

前置きは長くなったが、韓国政府がこれから最低賃金引き下げを行うなら、上のようになるということを解説した。

お休みの日なので難しい経済用語を連発してしまったが、ついていけない場合は質問していただければわかる範囲で答える。ただ、流動の罠についての脱出方法についてはたぶん、誰もわからないとおもう。量的緩和、大規模な政府の財政出動とか、いわれているが、実際、日本の金利は高くないのだ。ただ、雇用は増加しているので、そのうちデフレから脱却はあるかもしれない。

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〔北朝鮮、韓国、朝鮮半島有事〕のまとめ

韓国経済、最低賃金引き上げの副作用に政府戸惑う

「一部業種・年齢層の雇用不振には最低賃金引き上げ影響がある」(金東ヨン〔キム・ドンヨン〕副首相兼企画財政部長官)

「本来思ったより(最低賃金引き上げの)副作用が先に現れている。(洪鍾学〔ホン・ジョンハク〕中小ベンチャー企業部長官)

文在寅(ムン・ジェイン)政府内で所得主導の成長に対する信頼に小さな亀裂が入っている。

「最低賃金引き上げ」は所得主導成長を代表する政策だ。ところが、「経済のコントロールタワー」と与党の「経済ブレーン」出身の長官が最低賃金の否定的な影響についてこのように直接言及した。

これは所得主導成長の成果がそれほど上がっていないことが様々な数値から証明されたためと分析される。まずは雇用指標だ。就業者増加幅が5カ月連続10万人台を下回ったのは、2008年の世界金融危機以後初めてだ。若者の雇用のための予算投入と政府の公共雇用拡大政策、労働時間短縮推進などの効果がなかったとも解釈できる。

文在寅政府の自慢の一つは、昨年4年ぶりに達成した3%成長だ。今年もまた3%成長が可能だというのが政府の公式な立場だ。だが、通貨政策を主管する韓国銀行は、今年の成長率見通しを従来の3%から2.9%に引き下げた。韓銀は来年の成長率見通しも従来の見通し(2.9%)より0.1%ポイント下げた2.8%に下方修正した。小商工人・自営業者などの反発も尋常でない。全国コンビニエンスストア加盟店協会はこの日記者会見を開き、来年度も最低賃金が大幅引き上げになれば、共同休業など対政府闘争に乗り出すと声を上げた。

振るわない雇用・経済指標に、経済政策の微細調整の信号が感知されている。洪長官が先に声を出した。文大統領のシンガポール訪問を随行中の洪長官は前日、最低賃金の水準を尋ねた質問に対し、「今(引き上げ)のスピードが合わず、お金が回る前に負担が大きくなっている状況」だと診断した12日、緊急経済懸案懇談会を主催した金副首相も記者と面会し、「経済状況と雇用条件などを考慮し、(最低賃金引き上げを)柔軟に検討しなければならない」と述べた。共に民主党の洪永杓(ホン・ヨンピョ)院内代表は党会議で「政府与党院内代表として雇用不振は非常に心苦しい」と述べた。その後、金副首相が洪院内代表のところを訪問し、雇用対策などを議論した。悪化した指標と予想できなかった集団的反発に慌てた政府が最低賃金引き上げのスピード調節に入ったと分析される。

企業政策にも変化が感知されている。文大統領は9日、インドのサムスン電子工場竣工式でサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長と会合した。それに対し、企業政策の目標が「財閥改革」から「成長」に変わるのではないかと解釈されている。財閥改革の「執刀医」である金尚祖(キム・サンジョ)公正取引委員長も、あるメディアとのインタビューで「国民の雇用や生活などの問題をどのように解決するかに政府の成敗がかかっている」として経済成果に重きを置く発言をした。

だが、青瓦台はこのような政策旋回の動きに対しては言葉を慎んでいる。与党では「李明博(イ・ミョンバク)・朴槿恵(パク・クネ)政権の時、産業全般の構造改善を疎かにした結果」(洪永杓院内代表)だと、振るわない指標を「前政権のせい」にしている。ソウル大経済学部の表鶴吉(ピョ・ハクキル)名誉教授は「所得主導の成長政策は失敗したのが数値で証明された」として「これからでも投資活性化と成長潜在力回復に力を注がなければならない」と話した。

(http://s.japanese.joins.com/article/167/243167.html)

韓国経済、最低賃金引き上げの副作用に政府戸惑う 最低賃金を引き下げるとどうなるのか」への6件のフィードバック

  1. 将棋では、とんでもない悪手を指してしまった場合、リカバリーするのでは無く、その悪手の顔を立てるような手を指せ、という考えがあります。

    文大統領も、今更軌道修正するのでは無く、最低賃金引き上げを前倒しし、財閥解体を徹底すべきでしょう。

    そういえば、労組が経営参加するという話、どうなったのでしょうか。

  2. デフレの罠には日本が落ち込んで抜け出せないでいますね

    ひょっとしたら、ムン大統領はこれを避けるために最低賃金のアップをやっているとか?

  3. ムムム・・・おかしい! 目蓋が下がってきた。
    次の記事読む事にしよっとw

  4. >ただ、雇用は増加しているので、そのうちデフレから脱却はあるかもしれない。

     これで外国人労働者を受け入れてしまったら元の木阿弥ですな。
    人手不足で労働者を確保したいのなら、より高い賃金を提示して募集すれば良いのです。
    それでも集まらないのなら、生産性向上のための投資をすれば良いのです。
    ところがどっこい日本の民間企業はそのどちらも積極的にやりたがらない。
    むしろ、外国人労働者を受け入れなければサービスを維持できないとして、経団連なんかを通じて政府に圧力をかけたりするわけですよ。
    国民の可処分所得が増えなくては消費が増えない。
    消費が増えなければ景気も良くならない。
    しかし、国が強制的に民間企業の賃金を上げさせると韓国のようになってしまう。
    それに、いくら金利を下げてもゼロにはならないのだから、銀行に支払う利息以上に利益の見込める投資先がなければ、誰もわざわざ銀行からお金を借りてまで投資したりはしないでしょう。
    利益が見込めないという事は損失が出るという事ですから、最初から損をすると解っていて投資する馬鹿はいない。
    デフレが長引きすぎて、家計も企業も消費や投資を増やせる状況ではないのです。
    こうなると、ドイツのように輸出で儲けるか(外国の富を奪うという事なので個人的にすごく嫌)、政府が減税や景気対策で財政支出を増やすしかデフレ脱却の方法はないと思うのですが、如何でしょうか?

    1. コメントありがとうございます。

      どうでしょうね。管理人も流動性の罠から抜け出す方法については、本当に難しいと思うんですよね。日銀が金利を上げればいいとおもうのですが、あげないですよね。企業は景気が良いと言っているのにあげない。しかも、財政支出増やすとかよいながら増税しようとしている。雇用が増えているなら、ここから投資を活性化させるようにもっていきたいですね。

      1. 先ず、財務省の身内の評価(出世)基準を変えたいですね。
        評価指標が財政の均衡と債務の返済(増加抑止)ですので、
        国民が要求しなくても低金利を続け、増税と歳出抑制をしたがるのでしょう。
        官僚幹部の人事は政府が押さえているとして、さて、政府の債務(純債務)はいかほどまで許されるのか?
        この目標感が無いので低ければ低い方が良い(省内で評価される)ことになる。
        財政の均衡を云うなら国民に触れさせない特別会計の公開と削減にもメスを入れるべきです。
        日本の経済学者も偉そうにするなら、世界に先駆け、国の発展と政府の債務の在り方を学術的に証明して欲しい。

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