先週、こちらはイラン戦争におけるトランプ交渉術においてゲーム理論を用いた考えたかについて紹介した。でも、こういう考え方というのは作中でも触れていたが、オールドメディアはあまりこういった別の視点からのアプローチといったものを用いることはない。
それはそれでいいのかもしれないが、こちらの最終目的は集合知の力による知の発達である。集合知とはみんなで考えるネット世論みたいなものだと思っていいのだが、大事なのは情報に流されないことだ。自分で考える習慣を身につける。
こちらはサイトや動画で毎日、情報提供しており、韓国経済では分析や解説をメインにしているが、韓国経済は初心者さんでもわかりやすい経済構造であり、しかも、問題点が山ほどあって、それがどのように絡んでいるかを解きほぐす感じである。
この数値がどんな意味を持つのか。それが何処に影響してくるのか。そういった視点で物事を考える習慣を身につけていくと日常でも色々と役立つと思っている。
だから、こちらは情報提供の先にあるものを感じ取っていただければ嬉しい。毎日、動画を視聴していれば方向性というか。こちらをどのように考えてこの記事を取り上げて、突っ込んでいるかといったところに興味を持って頂けると楽しめると思う。
前置きは少し長くなったが、今回の記事もゲーム理論における解説を覚えていれば、ああ、これ先週にやったことじゃん。なるほどと理解できるはずだ。
では、記事を引用しよう。
ホルムズ海峡の封鎖で動揺が続く原油市場を、新たなニュースがざわつかせている。UAE(アラブ首長国連邦)が5月1日付でOPECから脱退したからだ。58年間続いた加盟関係に終止符を打つ決定であり、OPEC内でサウジアラビア、イラクに次ぐトップ3の産油国がこれまで市場に大きな影響力を及ぼしてきたカルテルから抜けることを意味する。
経済学的にみると、これは、ある意味で「教科書通り」の出来事である。そして同じ論理は、ここ1年あまり世界貿易の風景を一変させたトランプ関税と、それに対する各国の対応にも通底している。
「みんなで絞ればもうかる」という構図
OPECがやってきたのは、要するに協調による減産である。各国が「これ以上は売らない」と互いに約束し、市場に出る原油の量を絞れば価格は高く保たれる。皆で利益を分け合えるはずだ——というのが基本構図だ。経済学ではこれを「カルテル」と呼ぶ。
ところがカルテルには、どうしても消えない弱点がある。「みんなで守れば全員が得をする。しかし、自分だけ破ればもっと得をする」という構造だ。仮にA国とB国がそれぞれ数量4を生産すると約束していたとする。A国だけがこっそり5を生産すれば、市場価格はわずかにしか下がらない一方、自国の販売量は2割以上増える。
つまり、抜け駆けは個別には合理的なのだ。問題は、全員が同じ計算をする点にある。誰かが必ず、最初に動く。
UAEは「鍵をかけられた金庫」を抱えていた
UAEの離脱は、この「抜け駆けの誘惑」が限界まで高まった結果だと見るのが自然である。アブダビ国営石油会社(ADNOC)は1500億ドル規模の投資を経て、日量500万バレルという当初生産目標を予定より3年早く達成することを射程に入れている。
UAEの生産能力は急拡大した。ところがOPECのクオータ(生産割当)は、その能力を十分に使うことを許さなかった。UAEはOPEC内で生産割当への不満を募らせ、未稼働の余剰生産能力が異例なほど大きい状態が続いていた。
要するに、UAEは「鍵をかけられた金庫」を抱えていた。能力はあるのに売れない。原油価格が高止まりしている分、抜け駆けして増産できれば得られる利益は莫大だ。
サウジアラビアとの政治的不和、イラン戦争に伴うホルムズ海峡危機といった要因も背中を押したが、本質はカルテル理論が予言する通りの均衡崩壊である。参加者の中に「能力に余剰がある者」が混じっていると、カルテルは必ずきしむ。
2019年のカタール離脱、その後のエクアドル、アンゴラに続く今回のUAE離脱は、長期的にOPECの結束が侵食されつつあることを示している。
同じ論理が貿易の舞台にも
ここで視点を切り替えよう。OPECでは「カルテルの囚人のジレンマ」が、同じ論理は、まったく違う舞台にも顔を出していた。トランプ大統領が2025年に始めた一連の関税である。
トランプ氏の「相互関税」は、伝統的に見ればWTO(世界貿易機関)が掲げる最恵国待遇原則や関税譲許に反する性質を持っていた。本来であれば、各国が連名でWTOに提訴し、ルール違反として一括して戦うという対応が論理的にあり得たはずだ。
実際、中国は2025年2月にいち早く提訴し、カナダ、ブラジルが続いた。しかし、世界全体での団結した法的反撃は、ついに起こらなかった。なぜか。
トランプ氏は「抜け駆け」をデザインした
ここでカルテルの話を思い出してほしい。各国が一致して「アメリカとは個別取引しない」「WTOで一斉に争う」という立場を維持すれば、アメリカも自国経済への跳ね返りに耐えきれず、関税を撤回せざるを得ない。これが集団行動の利得である。
ところがトランプ政権は、OPECにおける「抜け駆け」と同じ仕組みを意図的に作り出した。各国に対して個別の「ディール」を持ちかけたのである。
英国は2025年5月にいち早く協定を結び、7月には欧州連合(EU)、インドネシア、日本、韓国、フィリピンが続いた。さらにインド、グアテマラ、エルサルバドルとも個別合意が成立した。
それぞれの合意で、アメリカは「他国よりやや低い関税」「特定品目の例外」といった選択的な優遇を提示した。重要なのは、この優遇は「他国を出し抜いた国にだけ与えられる」性質のものだったということだ。
各国の立場に立ってみてほしい。集団でWTOに提訴し戦線を維持すれば、長期的には全員にとって得である。だが、ライバル国がアメリカと先に合意してしまえば、自国だけが高関税のまま市場で不利になる。であれば、自分も急いで合意したほうがいい——。
これは、A社が約束を破って5を売り、B社だけが愚直に4のままでいるのを恐れる、あのカルテル崩壊の構図とまったく同じだ。
しかもプレイヤーは2、3カ国ではない。WTO加盟国は160を超える。経済学が示すとおり、参加者が多ければ多いほど、誰が裏切ったかを監視するのは難しく、抜け駆けの利得は相対的に大きくなる。
2019年以降、米国が新判事の任命を拒んでWTO上級委員会が機能停止に陥っていたことも、ルールに基づく対抗をいっそう非現実的にした。トランプ陣営はおそらくこの脆弱性を直感的に理解していた。「全員での提訴」という協調は、「個別優遇」の誘惑の前にもろくも崩れたのである。
2つのニュースが映す同じ真理
UAEのOPEC離脱と、トランプ関税に対する各国のバラバラな対応。一見まったく無関係に見える2つのニュースは、同じ経済学的真理を映している。すなわち、複数の主体が「協調すれば全員が得をするが、抜け駆けすればさらに得をする」状況に置かれたとき、その協調は本質的に脆い。とりわけ、参加者の中に「使われていない能力」や「他より大きな個別利益のチャンス」を持つ者がいるほど、崩壊は加速する。
これは悲観論ではなく、現実理解の枠組みである。OPECを再建するにせよ、ルールに基づく国際貿易体制を立て直すにせよ、感情論や正義感だけでは持続しない。
各参加者にとって「協調を維持するほうが、抜け駆けより長期的に得だ」と感じさせる仕組み——継続的な監視、繰り返しゲーム、信頼関係の構築、そして裏切りに対するきちんとした罰——が伴って初めて、カルテルも国際合意も生き残る。
UAEの離脱は、その仕組みがOPECにおいて機能不全に陥ったことの宣告である。そして同時に、関税戦争のなかで露わになったWTO体制の弱さと響きあいながら、世界の通商秩序が直面している試練の本質を、私たちに静かに教えてくれている。
ニュースは以上。
この記事を読んですんなり頭の中に入るならかなりの経済通だとおもう。こちらは何度か読み直してだいたいの内容を掴んだが、カルテルの本質というものがここに凝縮されている。みんなが同じように減産すれば、みんなは同じ利益をもらえるが、一人が裏切れば、その一人が得をする。
これが、カルテルの囚人のジレンマというやつだ。囚人のジレンマはすでに先日に解説したが、AとBの二人がいて、どちらも裏切らない方が得するのに、最後は二人とも裏切って損をするという。これは協力しない者が利益を得る状況で起こりえる。
各個人が合理的判断した結果、これをナッシュ均衡と呼ぶわけだが、それが必ずしもパレート最適とは限らない。
UAEがどうしてOPECを離脱したかはよくわかるとおもう。今、原油価格はイラン戦争やホルムズ海峡封鎖で暴騰している。それを自分らが好きなように売ることができたら莫大な利益をあげられる。
それじゃ、UAEはOPEC離脱してペナルティーか何かないのか。そこである。結局、囚人のジレンマを回避するにはUAEが抜けたら損をする「仕組み」が導入されてなければならなかった。
例えば、AがBに商品を1回だけ販売するとしよう。しかし、Aは悪徳企業だった。Bはそれを知らずに商品を買って、中身を開けたら不良品だらけだった。怒ったBはAに交換しろと持ちかけるだろう。でも、Aは交換に応じない。なぜなのか。Aにとって不良品を送りつけるのは最大の利益を獲得できるし、取引は1回だけだからだ。
こういうことをされないために取引は複数回で行うのがゲーム理論ではベターな方法となる。実はこれ結構、オンラインゲームでのプレイヤー同士では良くある話なんだよ。なぜなら、オンラインゲームだと取引は同じ相手と複数回することはあまりないからだ。
だから、騙されないようにトレードボックスで商品を確認したりして、互いに同時にトレードという仕組みが今のゲームには実装されている。
では、ネットでUAEがOPEC抜けて何らかのペナルティーがあるかどうかきいておこうか。
UAEがOPECを離脱しても、“罰金・制裁・ペナルティ”のような公式処分は存在しません。OPECは国家主権を縛る条約機構ではなく、加盟・脱退は自由で、離脱国に対する罰則規定もありません。
UAEはOPEC離脱でペナルティを受けるのか?
- 公式な罰金・制裁は一切ない
OPECは国際条約機関ではなく「協調カルテル」であり、加盟国が離脱しても法的拘束力のある罰則は存在しない。
過去にもインドネシアなどが脱退したが、罰金や制裁は科されていない。
これは、OPECが「生産調整の協力枠組み」であって、加盟国の主権を制限する組織ではないため。
- ただし“非公式の不利益”はあり得る
公式ペナルティはないが、政治・経済的な“実質的コスト”は発生し得る。
■ サウジアラビアとの関係悪化
UAEとサウジは生産枠を巡って長年対立しており、今回の離脱で亀裂がさらに深まったと報じられている。
サウジがUAEの輸出先に自国原油を売り込むなど、市場シェア争いが激化する可能性がある。
■ OPEC内での影響力喪失
OPECの意思決定に関与できなくなるため、価格調整の場で発言力を失う。
ただしUAEは独自増産を優先しており、むしろ自由度が増すというメリットもある。
■ 中東の外交関係への影響
すでにイエメン問題などでサウジとUAEの関係は悪化しており、今回の離脱はその延長線上にあると分析されている。
「離脱で不利益を受ける取引」は存在するのか?
- OPEC内の“取引”という意味では存在しない
OPECは加盟国に対して補助金や特別な経済支援を行う組織ではないため、
離脱によって失われる“特典”もほぼない。 - ただし“政治的バーター”は中東では一般的
OPECとは別に、湾岸諸国間では以下のような非公式の取引・バーターが存在する:
外交支援の交換(例:イエメン内戦での協力)
投資・インフラ案件の優先供与
軍事協力・武器供与の調整
UAEがOPECを離脱したことで、
サウジとの政治的・経済的バーターが減る/不利になる可能性はあるが、
これは“ペナルティ”ではなく外交関係の変化に近い。
まとめ:UAEは罰則なし。ただし“サウジの反発”が最大リスク
公式ペナルティ:ゼロ
非公式リスク:サウジとの関係悪化、シェア争い、外交的摩擦
メリット:生産枠から解放され、自由に増産できる(UAEの長年の不満点)
このように実はOEPC抜けても何らペナルティーはない。罰則もない。単にサウジとの関係が悪化するだけ。元々、サウジと関係が悪化しているのだから、ここでサウジの関係を気にする理由がUAEにない。
つまり、罰則規定もないカルテルなら、UAEが自国の増産を増やして、相手より儲けられるとわかれば、抜けるのは実に合理的な判断だったわけだ。先ほど述べたとおり、カルテルは裏切ったものが一番得するのに、それを防ぐ罰則規定もない。
これでは時間の問題だったわけだ。UAEが抜けてこの先、OPECがまともに機能するかは知らないが、弱体化することは間違いない。