「店主の生計脅威で深刻な苦痛…」 「要求案を受け入れない場合、刑事責任を問う」

ここからは韓国経済の話題だ。

4月はイラン戦争の話題をこちらは注目していたわけが、どうやら4月に貨物連帯ストが起きていたようだ。こちらも今回の記事で初めて知ったのだが、ストを振り返ると中々興味深いので最初から時系列順におっていく。物流好きとしては実に楽しいという。

2026年4月7日


貨物連帯・コンビニ支部が 無期限スト開始。

● 4月17日
CU物流センター(晋州)を占拠、供給網が麻痺。

● 4月20日
死亡事故発生(スト激化の決定的事件)。

● 4月21日
BGFリテールが代替配送を開始。

● 4月23〜24日
全国のCU店舗で商品欠品が深刻化。
AFPBB・NAVERなど主要メディアが大きく報道。

● 4月下旬
スト長期化、店主側の被害が拡大。
CU加盟店主協議会が損害賠償を検討。

時系列ではこんな感じになっている。まずは貨物連帯ストがなぜ起きたのか。彼の要求は次のようになっている。

● 1. 安全運賃制の適用拡大(CU配送にも適用)
● 2. 安全運賃制の恒久化
● 3. BGFロジスとの直接交渉
● 4. 運賃引き上げ
● 5. 過重労働の改善
● 6. 死亡事故の責任追及と再発防止
● 7. 労働者としての法的地位の強化

まず、ここで抑えておきたいのは要求には正当性を持つものと、持たないものが存在する。例えば運賃の引き上げだが、これは事実である。韓国政府・研究機関も韓国の貨物運転手は運賃が「低い」と認めている。

これは運転手が「個人事業主扱い」となるためだ。つまり、個人事業主というのは日本でもそうなのだが、企業という大きな後ろ盾がない。だから、企業が出した条件を飲まざる得ないことが良くある。

しかも、個人事業主なので燃料費・車両維持費を自己負担である。イラン戦争でガソリン価格が高騰すれば、当然、大きな負担となって跳ね返ってくる。つまり、実質賃金が変わらない場合、ガソリン価格の高騰で稼ぎが減るてこと。実際、運賃も10年以上ほぼ据え置きである。

しかも、過重労働というのもそう。1日12〜16時間労働。過労運転による事故が多発している。実際、韓国政府が「貨物運転手の過労運転率は一般運転手の3倍」とされている。

そして、安全運賃制(最低運賃制度)である。これは以前の貨物連帯ストで尹錫悦の政権時代の時に起きたときに、尹錫悦が史上初の「業務開始命令」という強硬姿勢で物流ストを無理矢理、押さえ込んだが、そのときも安全運賃制というのが要求に出てきた。

それによってセメントやコンテナ輸送などの一部に安全運賃制が採用された。

それで、安全運賃制の拡大も今回のストの要求にあるのだが、CU配送(BGFロジス)は適用外てこと。じゃあ、そもそもCU配送ってなんだよ。ここを抑えておかないとストの本質が見えてこない。

まず、CUというのは韓国最大のコンビニチェーンである。店舗数は18000店。運営会社はBFGリテール。日本で言えばセブンイレブンジャパンだろうか。そして、このCUで扱う商品を全国の店舗に配送するための物流システムを担う会社がBFGロジスである。

それで、コンビニの商品で重要なのは、毎日配送する商品である。おにぎりやサンドイッチ、弁道、飲料などあるが、この物流が止まると翌日には棚には商品がなくなるわけだ。そのため、CU配送は韓国の小売インフラの“生命線”とさえいわれている。

そして、ストライキを起こすときに重要なのは相手の被害が最大減になるポイントを的確に狙うことだ。良く質問されるんだが、なぜ、この時期にストやっているんだ?と。むしろ、この時期が相手に最大ダメージを与えるからストライキをしているんだよ。と、返すことができる。

CUの配送が止まれば、明日にはおにぎりやサンドイッチ、弁当などが全国のCU(コンビニ)に届かなくなるので、これは社会的インパクトが大きい。明日から即効で影響が出る。当然、これは店側にとってたまったものではない。

コンビニチェーンのフランチャイズてことは、本店以外の店は、自営業となる。つまり、1日でも物流が止まると商売が成り立たないのだ。弁当もなければ、サンドイッチもない。ジュースもない。コンビニに誰が行くかてこと。

当然、売上激減で家賃や人件費が払えなくなる。すると店主が激怒して、どうにかしろと社会的な圧力が企業CUに向かう。実際、壊滅的な被害を受けたのが最後の損害賠償に繋がるわけだ。

さて、ここまではわかったとおもう。問題はここからだ。

ここで重要なのは貨物連帯からすれば、BGFロジスが実質的に運転手を使っていると主張するわけだが、企業側は「下請け会社の運転手であり、直接交渉はできない」といいだす。さて、ここで重要なのはドライバーの本当の雇い主は誰なのか。

これが現場と企業の乖離が決定的に出ている部分だ。

貨物連帯ストはBGHロジスが配送ルートや時間、物量を決めているのだから、実質的に運転手を“使っている”のはBGFロジスだという論理。

これはわかるだろう。結局、彼らの指示に従わないと仕事できないのだから。

ところが企業は法的には下請けの従業員だと述べる。理由はドライバーは運送会社と契約している。BGFロジスは運送会社に仕事を発注しているだけ。ドライバーの雇用契約・賃金・労働条件は運送会社の責任だ。契約上は雇用主は運送会社だから、BFGロジスは発注者に過ぎない。

だったら運送会社が悪いのか?実はそうでもない。なぜなら、運送会社が低賃金でしか出せないのは、元請け(BGFロジス)が提示する単価が低いからである。その単価から、ドライバーへの支払い、車両維持費に充てる必要がある。

じゃあ、BFGロジスが単価をあげればいいんじゃないのか?もっともだ。ここの単価をあげれば全ては解決する。そう思うかもしれないが、実はそうでもない。なぜなら、BFGロジスは単価を自由に決められない。BFGロジスはCUの物流子会社だが、価格決定権はBGFロジスではなく、親会社のBGFリテール(CU本体)が握っているからだ。

そして、親会社は激しい競争のために物流費を上げたくないわけだ。BFGロジスはとにかく低単価で回せと命令されている。でも、ドライバーが困っているなら親会社が単価をあげたらいいじゃないか。そう思うかもしれないが、実はこれをやるとCU本体の利益が減る。

なぜかというと、物流費を上げると、当然、納品コストが上がる。すると加盟店は商品価格をあげないといけない。値上げすると消費者は離れるので利益は減る。結果、加盟店からのロイヤリティが減るので、CU本体の利益も減る。つまり、CU全体のビジネスモデルが崩壊してしまう。

さらに多重下請け構造を理解するとわかりやすい。

CU(BGFリテール)
↓(低単価で発注)
BGFロジス
↓(さらに低単価で発注)
運送会社
↓(ギリギリの運賃)
ドライバー(個人事業主)

このようになってるので、単価をあげても運送会社が吸収してしまう。つまり、ドライバーの待遇は改善されない。

結局、一番重要なのはCU本体が物流費上げることが正解ではあるんだが、それをやれば利益減るからやりません。

まとめると、BGFロジスが単価を上げれば解決するように見えるが、 実際にはCU本体の“低コスト戦略”が単価上昇を封じている。 つまり問題はBGFロジスではなく、CU全体のビジネスモデルにある。

それで、ストはこのように起きて時系列通りに進んだ。そして、ストで被害を受けた店が損害賠償を請求した。

では、記事を引用しよう。

CU加盟店主らが民主労総公共運輸労組貨物連帯ストライキによる被害額を請求する内容証明を発送した。

CU加盟店主協議会は貨物連帯を相手に計140億4000万ウォン規模の損害賠償を請求する内容証明を4日に発送したと6日明らかにした。

協議会が算出した請求金額は、貨物連帯のスト過程で物流センターと生産工場を封鎖して発生した財産的被害額102億8000万ウォンと、店舗当たり20万ウォンずつ1万8800人あまりの店主が経験した精神的被害に対する慰謝料37億6000万ウォンを合わせたものだ。

内容証明によれば15日までに再発防止約束および公開謝罪要求と共に請求した被害額に対する履行計画案を協議会に提出を要求する内容も含まれた。

協議会は「15日までに要求案が受け入れられない場合、請求金額に対する損害賠償訴状受付と共にストライキ期間中に貨物連帯が犯した各種不法行為に対して刑事的責任を問う」と話した。

刑事的対応には業務妨害·脅迫·名誉毀損などの疑惑告訴と共に特殊財産損壊·共有財産法違反などに対する告発が含まれる。

CU加盟店主協議会のチェ·ジョンヨル会長は「店主の被害額が具体的に算出されたことにより訴訟手続きを進行するために内容証明を発送した」として「現在の金額は立証可能な部分だけを反映した暫定値であり、今後さらに増える可能性がある」と主張した。

協議会は物流を担当するBGFロジスにも別途の内容証明を送り、貨物連帯所属の運転手の配送を店主が拒否する場合、代替運転手の割り当てを要求した。 これを履行しない場合、団体配送拒否と加盟契約解約まで検討するという立場だ。

ハ·ドンソン協議会事務局長は「店主と家族の生計を脅かされ深刻な精神的苦痛を体験した」とし、「該当運転手たちに再び向き合うだけでも大きな不安を感じる」と明らかにした。

一方、貨物連帯所属の運転手たちは同日、復帰後初めての配送を進めているが、一部の店舗では配送を拒否する事例が続いている。 店主と運転手間の言い争いが発生しているが、現在まで大きな衝突はない状況だ。

ニュースは以上。

被害を受けたCU加盟店の店主らが賠償しろと貨物連帯を相手に内容証明を発送したと。要求に応じなければ刑事罰。そりゃ営業妨害ですよね。商品届けてないんだから。彼らは実際に被害を受けたので、賠償や慰謝料は当然なのだが、問題はこれは誰が払うんだろうか。

ここで面白いのは実は誰も払えないんです。おい、まてよ。散々、ここまで説明してきて、どういうことなんだと思うだろう?でも、よく考えてほしい。労組が140億ウォンの賠償金なんて払えるわけがない。裁判やっても、ほとんど回収できないだろう。

じゃあ、運送会社はどうなんだ?運送会社に責任はない。なぜなら、貨物連帯ストをやったのは貨物連帯の組合員であり、個人事業主である。そもそも運送会社はストを命令した覚えも参加を強制したこともない。被害者側なのだよ。

では、BFGロジスはどうなの?もちろん、払わない、そそも払う理由がない。だってストを起こした当事者でない。労組と契約関係なし。むしろ被害者だよな。

それならCU本体はどうなんだ。もちろん、払いません。理由はBFGロジスと同じだ。法的責任はない。

これが韓国で良くある誰も払わない。被害を受けた18000店はそのまま廃業して終わりである。そして、当然、店主協議会はそれを理解している。じゃあ、なんで請求したかは再発防止のためである。

そもそも個人事業主に払わせればいいじゃないか?でも、それは無理である。なぜなら、賠償能力もなければ、誰が実際にやったのかの証拠がない。例えば、物流センター封鎖したり、器物破損が見つかっても集団でやったら、誰がやったかなんて個人を特定できない。でも、集団に140億ウォン請求して、平等に払えといわれても払えるわけがない。

そもそも個人への賠償は極めて慎重である。なぜなら、個人に賠償させると“労働運動の弾圧”となるためである。

結局、被害を受けた店側が結局、泣き寝入りするしかない。だが、個人が賠償責任を受けない。だから、物流ストはまた繰り返されるわけだ。ええ?駄目じゃん。