ここからは韓国経済の話題だ。
朝鮮日報は、2026年5月13日の記事で次のように報じた。
「米国の消費者物価指数(CPI)が3年ぶりの高水準となり、Fedの金利凍結長期化観測を受けてウォン安が進行した」さらに、「中東の地政学リスクがドル高圧力を強めた」と説明している。
つまり、記事は“外部要因(米CPI・地政学リスク)によるウォン安”という構図で説明している。しかし、これはウォン安の“表面的な説明”にすぎない。
ウォン安の最大の直接原因は「外国人の5日連続・24兆ウォン投げ売り」
既に動画のワンポイント解説で突っ込んだのだが、外国人の投げ売りが5日連続で起きている。まずはそれを載せておこう。

この画像を見ればわかるが、個人が圧倒的に買い支えて、外国人の24兆ウォン以上の過去最大の投げ売りを相殺している。今の韓国証券市場は個人投資家が借金してコスピを買い支えている状況だと思われる。
それは別の機会に詳しく分析するとして今回はウォン動向の話だ。まとめておくと韓国メディアはスルーしているが、外国人が韓国株や先物を大規模に売る。するとウォンが手に入るので、売却代金のウォンをドルに換える。これが大量のウォン売りを発生させて、ウォン安が急加速したことになる。
なぜ韓国メディアは「外国人投げ売り」をスルーするのか
朝鮮日報の記事は本当に短いので、冗長だらけの字数稼ぎの大好きな韓国メディアとしてはかなりおかしく感じる。しかも、経済を扱うニュース、ウォン動向を伝えるニュース記者が外国人の5日間連続投げ売りを知らないわけがない。金額だって24兆ウォン以上だ。
ただ、専門家としては韓国メディアは避けた理由は3つぐらいだろうか。一つは外国人の投げ売りは外資撤退を意味するので、韓国市場がせっかく半導体ブームで過去最高の盛り上がりを見せているところに傷が付くとでもいうのか。
実際、外資が逃げていると知れば、株安。ウォン安はさらに進むからな。だから、ウォン安は地政学的なリスクだと説明していると。韓国メディアが国内の問題を外部からの原因にすり替えることはよくある。
後は韓国政府の保守派の朝鮮日報でさえ忖度している。つまり、韓国政府からコスピ7800で外資もたくさん買っているというイメージをアピールしたい。しかし、過去最大の5日連続の投げ売りはそれに水を差すどころか、コスピやウォンの暴落を招きかねない。政府のイメージとも真逆だ。だから、韓国メディアが自主規制した可能性は高い。
まとめると朝鮮日報はウォン安の直接原因を完全にスルーしている。
CPI → 間接要因
中東リスク → 間接要因
外国人売り越し → 直接要因(最重要)
明らかに説明すべき特設要因が出てこない。意図的であることは明白だろう。
韓国経済の専門家としては、今回のウォン安の最大要因は外国人の5日連続・24兆ウォンの投げ売りであると断言できる。でも、韓国メディアは外資撤退や韓国証券市場の脆弱性、政府の無策などを書くと政府に睨まれるので外部要因だけを報道している。
それで、韓国証券市場の最大の弱点は外国人依存度の高さである。コスピの3割だったか。これを解消しない限り、ウォン安のリスクに常に晒されると。
ウォン動向の分析は済んだので次はコスピについてだ。
記事を引用しよう。
(ブルームバーグ): 世界最大の半導体メモリーメーカー、韓国のサムスン電子は労使間の賃上げ交渉が土壇場で物別れに終わり、従業員のストライキにつながるリスクが高まっている。事業混乱の恐れから、同社の株価は13日のソウル市場で一時5.7%下落した。
労使交渉の決裂は韓国労働当局の仲介による2日間のマラソン交渉の末に起きた。人工知能(AI)関連の好調な収益に連動するボーナスの支給を巡り、経営側と労働組合側の溝は大きいままだ。
労組は既存のボーナス上限を撤廃することや営業利益の15%を労働者ボーナスに充てることなどを要求している。今回の交渉決裂は、AIインフラ需要の拡大で生まれた利益の配分拡大を求める動きが国内で強まっていることを浮き彫りにしている。
サムスン最大の労組は競合のSKハイニックスが年間営業利益の10%を業績連動ボーナス原資として配分することで昨年合意した点を引き合いに出している。
労組側は21日から18日間のスト決行を警告。メモリー市場でSKハイニックスや米マイクロン・テクノロジーと激しく競争する中、サムスンの半導体事業に混乱が生じる懸念が強まっている。長期化すれば次世代半導体の開発加速に向けた取り組みにも影響する可能性もある。
12時間続いた協議の末に提示された仲介案について、労組は声明で「後退」と位置付けた。サムスンは最悪の事態を回避するための取り組みを継続するとしている。
ニュースは以上。
上の中身は既に取り上げた内容だ。強調しておきたいのはサムスン電子のストによって韓国株が大きく揺れ動くという事実が証明されたことである。ここに事業混乱の恐れから、同社の株価は13日のソウル市場で一時5.7%下落したとある。
実際、ストをすれば確実にコスピ急落は避けられないと思われる。上で突っ込んだ通り、コスピ急落はウォン安も招くので再び1500突破もあり得ると見ている。それが最初にウォン動向を出した理由でもある。
ただ韓国の専門家はどう見ているのか。どうやら専門家はストの頻度によって3つにわけている。具体的には軽度スト(1から3日)、中度スト(1週間規模)、深刻スト(無期限・ライン停止)の3つだ。
それで軽度ストについてはそこまで深刻に捉える理由はない。韓国経済に与える影響はほとんどないためだ。だから、考えるとしたら中度ストから考えることになる。それで中度スト予測はこうなっている。
中度スト(1週間規模)が起きた場合
中度スト(1週間規模)
KOSPI:マイナス3〜5%
ウォン:5〜10ウォン安
サムスン電子はKOSPIの時価総額の約20%
半導体セクター全体が売られる
外国人が先物を売り、指数を押し下げる
1週間程度のストならコスピは最大で5%程度下がります。案外、たいしたことないと思うかもしれない。しかも、さっき見てきた通り、ストの可能性が確実視でマイナス5パーセント落ちたわけだ。
ということは韓国の専門家はストのリスクを軽く見ているか、サムスン電子のことだから、あまり悪い予想を出せないと見た方がいい。なぜなら、サムスン電子は韓国に君臨する最大財閥の筆頭であり、あらゆる韓国の要人やメディア関係者はサムスンや財閥批判をほぼ封じられてるからだ。また、ここでも財閥搾取の影響が出ていると言わざるを得ない。
なぜなら、サムスン電子が韓国社会における「聖域」だからである。
韓国メディアはサムスン電子からもたらされる莫大な広告費があるので逆らえない。証券会社はサムスン関連ビジネスで食べている。政治家もサムスンに依存している。大学教授だってサムスンから研究費が出ている。
だからこそ、専門家は“本当のリスク”を言えない構造になっている。しかし、ストが起きてもいないのにマイナス5パーセント下げるということは、実際に起きた中程度スト以上となれば、その与える影響は軽く見積もっても3倍以上だと推測できる。
それを踏まえると中程度ストの本当の影響をこちらが予測するとこうなる。
中度スト(1週間規模)
KOSPI:マイナス9〜15%
ウォン:10~15ウォン安
これがこちらが中度ストが起きた場合に発生するであろう予測だ。
深刻ストが起きた場合
深刻スト(全面スト・無期限スト)
■ 定義(具体的)
無期限スト(1週間〜数週間)
主要ライン(前工程=半導体製造)が停止
出勤率が50%以下
生産量が10〜30%減少
サプライチェーンに深刻な影響
韓国政府が介入するレベル
■ 市場への影響
KOSPI:マイナス5〜7%(最悪10%)
ウォン:マイナス10〜20ウォン(最悪30ウォン)
外国人が“韓国リスク”として大量売り越し
韓国銀行が実弾介入する可能性
これが韓国の専門家の見解だが、先ほど述べた通り、韓国の専門家はサムスン電子に食べさせてもらっているので、被害を軽くしか見積もれない。だから、これも3倍以上と考えたらこうなる。
市場への影響
KOSPI:マイナス15〜2%(最悪20%)
ウォン:マイナス30〜60ウォン(最悪60ウォン)
この程度の動きが予測される。
まとめるとこうなる。
深刻ストが起きた場合、KOSPI マイナス15〜20%、ウォン マイナス30〜60ウォン。韓国専門家の数字(マイナス5〜7%)は忖度による過小評価といえよう。
ただ、専門家として追加するなら、予測される影響は推測できるが、実際にストが発生するのか。した場合、どの程度の規模になるかの判断はとにかく難しい。
なぜなら、現時点で5万参加ということで、ストが与える影響が大きすぎて既に韓国政府が仲裁に動いている。さらに韓国政府には最強の切り札「緊急調整権」もある。ストが長期化しそうなら、韓国政府が出してくる可能性が高い。
そうなった場合、強制的にストが終了するので深刻ストにまで至らないで中度スト程度で終わるだろう。深刻ストになる可能性はそういう意味では低いのだ。確実に韓国経済が致命的なダメージを受けるなら韓国政府は伝家の宝刀を抜かざるを得ないからだ。
つまり、深刻ストは発生確率は低いが、 発生した場合の破壊力は“韓国経済の致命傷”レベルとなるので、国家が介入してでも強制的に終わらせると予測できる。
もっとも終わらせたからだと問題解決にはならない。なぜなら、双方が納得しないなら30日間の交渉期限を得たところで、妥協点を見いだすのは難しいだろう。
最後にそれでは「妥協点」はどこにあるのかを見ていこうか。
双方の妥協点について
こちらが考える最大の妥協点は、労働側に成果給10パーセント。さらに昇進内容の透明化といったところだろうか。おそらくこれで双方は妥協できる最終結論に近いと思われる。
この成果給10%ラインは絶対に譲れない。なぜなら、ライバル会社であるSKハイニックスが既に成果給10%を決めている。それが以前に出したが、アンカリング効果でそこが基準点となっている。
そして、もう一つは労働者側は、上司に気に入らなければ昇進できないという。昇進制度の不透明さを訴えてるので、これを明確化する。
これによって労働者側がそれなりの成果を得たと思えるんじゃないか。どう考えるかはこちらは当事者でないので推測でしかないが、ここが妥協点に近いと思う。
まとめるとこうなる。
深刻ストは発生確率が低い。 しかし起きれば韓国経済は致命傷。 だから政府は緊急調整権で強制終了させる。 ただし問題は解決しない。 妥協点は成果給10%+昇進制度の透明化。