ここからは韓国経済の話題だ。
サムスン電子のスト予定が21日と迫っているわけだが、会社と労組の対立は決定的。既に交渉自体決裂しており、もうストライキは不回避といったところまできている。
今回の記事はストライキが起きた場合、韓国政府は緊急調整権を発動すると示唆したこと。しかし、これは韓国経済の専門家としての視点で語るなら非常に悪手である。
なぜそういえるのか。
まずは記事を引用しよう。
サムスン電子の全面ストライキ危機が高まる中、金正官産業通商部長官は、労組が予告した通り今月21日に全面ストに突入すれば、緊急調整権の発動は不可避だと明らかにした。
金栄勲雇用労働部長官も「労働者のいない企業はなく、会社が潰れるように設立された労組もない」と述べ、労使の対話を促した。
金長官は14日、自身のSNSアカウントに投稿した文で「労使が合意に至らなければ21日から全面ストに突入するとしており、残念さと懸念を禁じ得ない。労使双方が速やかに対話を再開するよう切に求める」と訴えた。
同長官は「今回の事案の重大性と、想像すら難しい波及効果を考えると、いかなる場合でもストライキだけは防がなければならない」とし、「産業通商部長官として、もしストが発生するなら緊急調整も不可避だと考える」と付け加えた。
政府が緊急調整権を発動すれば、労組は30日間、あらゆる争議行為を中断しなければならない。これは、争議行為が国民経済を著しく害するおそれがある場合に、雇用労働部長官が発動できる権限だ。
金長官は「わが国経済におけるサムスン電子の重要性はいくら強調してもしすぎることはない」とし、「サムスン電子の業績と株価は460万人余りの株主をはじめ、国民年金など各種年金基金を通じて国民の生活に直接影響を与えている」と記した。
続けて、サムスン電子の半導体事業を韓国の独歩的な成長エンジンであり、ほぼ唯一の核心戦略資産だと評価し、その重要性を強調した。
金長官は「会社側は妥当な報酬を提示し、労働側は会社の未来と持続可能性を損なわない合理的な配分を求めてほしい」とし、「国家代表企業であるサムスン電子の労使が、国民と数多くの国内外の顧客、そして投資家たちの切実な期待に応えてくださるよう切にお願いする」と述べた。
これに先立ち、金栄勲労働部長官も自身のX(旧ツイッター)アカウントに、「民主主義は対話の力を信じること」という題の文章を投稿した。
金長官は「労働者のいない企業はなく、会社が潰れるように設立された労組もない」とし、「私の経験では、ストライキと同じくらい難しいのは交渉だった。ストライキ自体が目的でないなら、結局は交渉で締めくくらなければならないからだ」と述べた。
そのうえで、「共に生きよう」「対話が必要だ」をハッシュタグとして付けた。
中央労働委員会はこの日、サムスン電子の労使に対し、16日に再び事後調整に臨むよう正式に要請した。
先に11~12日に行われた1回目の事後調整は、2日目の深夜を大きく過ぎた13日未明、サムスン電子労組が交渉場を離れたことで決裂した。
現在、サムスングループ超企業労働組合サムスン電子支部(超企業労組)は、会社側に「最後通告」性格の公文書を送った状態だ。
超企業労組は、全永鉉サムスン電子代表取締役宛ての公文書で、「心から労使間の対話を望むなら、核心議題に対する具体的な案を提示せよ」とし、「5月15日午前10時までに代表取締役が直接回答してほしい。変化がない場合、適法な争議行為である『ストライキ』で対応することを明確にする」と警告した。
記事を引用しよう。
このように韓国政府は5万人規模のストの影響、サムスン電子が韓国を支えている具体的な事案を数値を出して述べている。サムスン電子の業績と株価は460万人余りの株主をはじめ、国民年金など各種年金基金を通じて国民の生活に直接影響を与えている。
こんなこといえるのは世界広しで韓国政府だけである。米国や日本は絶対に言わない。なぜなのか。一つの会社にそこまで依存する国なんて韓国以外は存在しないんだよ。中国政府だって言わない。それだけ、今回のストの影響が大きさを教えてくれるのは、日本人としてわかりやすくていいのだが、問題は緊急調整権を韓国政府が自ら出したことは「悪手」であるということ。
しかも、最悪のタイミングでだ。さすが韓国政府。なんでこうも無能なんだろうか。
では、なぜ「悪手」なのかを解説しよう。
韓国政府の緊急調整権示唆は悪手
まず、緊急調整権というのは以前に説明したが、韓国政府がストライキを確実に終わらせる最大の切り札。発動した瞬間、ストライキは強制的に30日の交渉期限まで止まる。しかも、その間にストライキを続けた場合、違法行為とな利、逮捕や拘束もあり得る。日本で言えば、内閣総理大臣の衆議院議員解散権に匹敵するレベルの最強のカード。
しかし、最強のカードというのは、最強だからこそ与える影響が最大となる。だからこそ切るタイミングというのが極めて難しい。そして、一番重要なのはストを止めても問題は解決しないてこと。緊急調整権の解説は以上だ。
それで、なぜこのタイミングでの示唆は握手なのか。会社側と労組、世論の立場で考えればすぐにわかる。
会社「どうせ緊急調整権発動するなら、別に今、話し合う必要ないよね?」
労組「政府は俺たちにびびってるぞ。ストライキして緊急調整権で止めるなら止めてみろ」
世論「うわあ。黄色い封筒法可決してストライキさせやすくしたアホな政府が自分らで強権発動しているわ」と失笑である。
会社も労組も緊急調整権発動するなら、譲歩する理由がなくなったということ。つまり、切り札をスト前に示唆したことで、その時点でのカードの価値は半減した。そりゃそうだ。相手がするかもしれないと思わせることが重要であって、そこに譲歩の余地があったのだ。でも、ストライキしたら発動するなんていえば、ああ、そうですか。じゃあ、譲歩いらないにしかならないだろう。だから、悪手なんだよ。
さらに突っ込むと韓国政府は会社側の見方と断定されること。つまり、労働者側からすれば敵として認識される。労組と世論はこう見る、
「政府が財閥の味方をして労働者を弾圧している」とな。これは当然だ。なんでストライキを強制的に政府が止めるんだになる。しかも、過去の貨物連帯ストや鉄道ストなどの社会的なインフラが壊れて、国民が生命の危機が去らされるような事態にはならないのに止めるなんておかしいわけだ。
せいぜい困るのはサムスン電子とその関連である。だから、韓国政府は最強財閥をアシストしている。搾取されている労働者を弾圧している。庶民からすればそうとしかみられない。
労組は緊急調整権を示唆した韓国政府の主張を逆手にとり、労組を強行化させてストの正当性を主張するだろう。それは財閥搾取の構造で庶民の不満と重なり、SNS・メディアで支持を集めることになる。
つまり、政府が労組を団結させる結果となる。
さらに外国人は政府の介入を極端に嫌うというのも何度も述べている。つまり、緊急調整権は外資にとっては最悪のサプライズであり、リスクである。そうなると株価やウォンは下落。半導体サプライチェーンリスクを感じ取る。
国家介入を示唆ことで、事態をより最悪に導いたんだよ。いつも通り、韓国政府はアホだから。
だって今回のサムスン電子のスト問題は内部の待遇問題なんだぜ。
争点も何度も書いてるが、成果給15%、成果給上限の廃止。昇給制度の透明化の3つだ。つまり、どうみても企業の待遇問題なんだよ。
そこに緊急調整権を使うことなんて誰が見てもおかしいんだよ。
さらに緊急調整権を使っても問題解決にはならないと最初に述べた。平たく言えば、30日後にまたストをやればいいんだよ。
そして、労組はすでに「緊急調整権は違法だ」「政府は財閥の犬だ」「国際労働機関(ILO)」に提訴すると述べている。つまり、緊急調整権なんて想定内なんだよ。
以上の理由だ。
まとめておくと、緊急調整権は“最後の切り札であり、これを示唆した瞬間に政府は交渉力を失う。 労組は強硬化し、会社は政府任せになり、 市場は政治リスクを織り込み始める。 今回の示唆は、韓国政府にとって明確な悪手である。
一言で述べれば、どの世界においても民間組織の待遇問題に政府が直接介入するケースなどあり得ない。でも、それを示唆した韓国政府は自ら追い詰められることになる。緊急調整権発動で、サムスン電子の待遇問題に国家が介入した今回の判断は、 韓国経済にとって明確な悪手である。