韓国の5月の最大イベント「サムスン電子のストライキ」は残り5日と迫っている。既に交渉決裂しているのだが、必死に韓国政府が未だに説得しているようだ。
さらに、政府仲裁案が新たに出てきた。それで、今までよりも譲歩してきた内容だったのだが、それは労組は拒否した。
では、記事を引用しよう。
サムスン電子のストが1週間先に迫る中で、韓国政府が提示した大規模成果給仲裁案まで労組が強く拒否し労使対立が激化している。
労組は中央労働委員会が提案した組合員投票案に対しても「たわごと」と一蹴し、交渉決裂を宣言した。
業界によると、サムスン電子最大の労組である超企業労組サムスン電子支部のチェ・スンホ委員長は最近組合員コミュニティで中央労働委員会の提案に言及しながら「暫定合意をしなくても組合員投票に任せられるのではないかとたわごとを言った」と批判したという。
中央労働委員会は13日の事後調停過程で既存の超過利益成果金制度を維持した上で半導体(DS)部門に特別褒賞を追加支給する仲裁案を提示した。
核心はDS部門が業界で売り上げと営業利益で1位を達成した場合、営業利益の12%を別途の財源として成果給支給に活用しようという内容だ。
業界では今年サムスン電子DS部門の営業利益が300兆ウォン水準に達すると予想している。これを基準とすれば特別褒賞規模だけで36兆ウォンに達する。既存の超過利益成果金4兆ウォン水準まで合わせれば合計40兆ウォン規模の報賞になる計算だ。
中央労働委員会はこうした案を今年だけでなく今後も同様の経営成果が続く場合に持続して適用する形で検討し、労組が要求してきた「成果給制度化」の要求も一部反映した。
だが労組はこれを受け入れなかった。
労組は現在、営業利益の15%を成果給財源として固定配分し、年俸の50%水準である既存の成果給上限を廃止すべきとの立場だ。成果給支給基準を団体協約などで明文化する「制度化」を核心要求事項として掲げている。
チェ委員長は「会社は過去にも成果を蓄積して赤字の時に補填するとしていたが守られなかった。口頭での約束ではなく明確な制度化が必要だ」と主張した。
これに対し使用側は成果給制度固定化が未来投資余力を落とし事業部間の報賞格差を拡大しかねないとして難色を示している。
労組が政府仲裁案まで強く拒否したことで、21日に予告されたストの可能性はさらに大きくなっている。
雇用労働部は終盤まで仲裁を継続するという立場だが、一部では国家経済に及ぼす衝撃を考慮して政府が緊急調停権発動に出なければならないという主張も出ている。
緊急調停権が発動されれば最大30日間にわたりストが禁止され、中央労働委員会の強制調停手続きが進行される。
高麗(コリョ)大学法学専門大学院のパク・チスン教授は「サムスン電子のストは国家経済に及ぼす影響が極めて大きい事案。最後の手段である緊急調停権検討が必要になるかもしれない」と話した。
ニュースは以上。
「暫定合意をしなくても組合員投票に任せられるのではないか」
しかし、どうして中央労働委員会はアホなことを言って労組を怒らせるのか。中央労働委員会は大変な「失言」だということを理解してないのがあまりにも怖い。なんで相手の立場を考えて発言しないのか。
中央労働委員会は仲裁役で「中立」であるはずなのに、どういうわけか。サムスン電子会社の仲間じゃないのか。そう思われても仕方がない。
さて、これがどうして致命的な失言なのか。解説していこう、既にいくつか突っ込んでいるがそれもまとめていく。
仲裁機関や仲裁役の必要条件は双方にとって「中立」であるということ。
まず、仲裁機関で絶対に必要なものとは何だと思うだろうか。簡単だ。仲裁機関や、仲裁するときに絶対に必要なのは「中立」なんだよ。イラン戦争でパキスタンが米国とイランの仲裁役として、1回だけは米国とイランを交渉の席に着かせたことに成功したが、その後はどちらも交渉するつもりはない。
しかし、パキスタンは米国とイランからすれば「中立国家」である。だからこそ、パキスタンを通じて色々な合意案が出てくるわけだが、米国は全て拒否している。
話を戻すと中央労働委員会とは労働者と使用者(企業)の間に立つ中立的な調停機関である。つまり、中立的な機関であることは存在する意義である。
そして、こちらが記事を読んだ瞬間に中立的ではない。企業よりと感じたわけだから、労働側が中央労働委員会をどう思ったかなんて容易に察することができる。
しかも、この発言は短いのにさらに酷いところがある。暫定合意をしなくても組合員投票に任せられる。これもメチャクチャアウトである。なぜかといえば、これは労働者側がDS部門とDX部門で激しい対立していることを知っていて、この発言である。
つまり、暫定合意しなくても、DX部門の票数だけで合意できることを理解した上での発言。DS部門の要求は聞き入れられなくてもいいじゃないか。DS部門からすればそう聞こえる。
しかも、これは労組側に指示したことで、労働内部の意思決定プロセスに口を出したことになる。これも中立性としてはおかしい。中立の立場がなんで相手の条件を勝手に変えようとしているのか。労組の意思決定権の侵害である。
そして、これら全てが会社側の立場に寄った意見に聞こえることだ。
今回の対立状況を整理するとこうなる。
労組:成果給15%。成果給制度の明文化を要求
会社:制度化は拒否。
中央:政府案を提示したが労組が拒否
このようになっている。ここに中央労働委員会が会社側によった提案を受け入れろと迫った。つまり、中央労働委員会は今回の騒動の発端を労組側が妥協しないのが悪いと考えてるわけだ。
「中労委は会社側の味方なのか」と労組側が感じたことで「たわごと」と切り捨てられた。
つまり、今回の失言で労組側から完全に信頼を失った。そして、その結果は労組は政府案を拒否して調停は決裂。スト突入の可能性がさらに高まった。それは国家経済破綻リスクが拡大することを意味する。
では、中央労働委員会がなんでこんな失言をしたのか。それは政府からストを止めるように命令されてるんだろうな。中央労働委員会の委員長は韓国政府が任命している。
ただ、中央労働委員会は労組にとって成果給の制度化をどれだけ所望しているかを理解してないと思われる。こちらは既に仲裁案として、双方が妥協できる点を専門家として示した。
それは成果給10%と昇進制度の透明化であった。
こちらが成果給の量よりも昇進制度の透明化を重きに置いたのは、労働側は成果給よりも成果給の制度かを重きに重んじてることを発言で感じていたからである。
実際、40兆ウォンは成果給15%に近い額だ。つまり、会社側が、今、カネだけ多めに出しておけば相手は折れると思ってることになる。でも、彼らが求めてるのはそれだけじゃない。労働中央労働委員会の委員長はそれすら理解できないから、この発言が飛び出したといえる。
まとめるとこうなる。
中労委は“中立性”と“労組の意思決定権”という最重要原則を理解せず、労組の核心要求を軽視する発言をしたため、調停機関として致命的な失言となった。
それで追加情報である。サムスン電子の会社側がメモリに607%成果給。ファウンドリに50%~100%にとどまる条件を提示したことがわかった。この時点でDS側とファウンドリに激しい対立が予想される。
記事を引用しよう。
サムスン電子がメモリ半導体事業部に600%台の成果給を提案した一方、非メモリ半導体部門には最大100%水準の成果給を提示したと、16日にロイター通信が報じた。
この日ロイター通信が入手した賃金交渉の会議録によると、サムスン電子は今年3月、デバイスソリューション(DS)部門メモリ事業部の従業員に対し、年俸の607%水準の成果給を提示した。
一方、DS部門内の赤字事業部であるファウンドリ事業部とシステムLSIには50~100%の成果給を設定した。
サムスン電子の半導体事業を担当するDS部門は、大きくデータ保存装置を主力とするメモリ事業部と、チップ設計および受託生産などシステム半導体を包括するシステムLSI・ファウンドリ事業部に分かれる。
このうちメモリ事業部は最近、人工知能(AI)ブームに乗って莫大な利益を上げたが、システム半導体部門は大規模な赤字を記録した。
会社側の代表交渉委員である金亨魯副社長は、「システム半導体事業部は数兆ウォンの損失を記録し、率直に言って、当社でなければ彼らはおそらく破産していたか、門を閉ざしていただろう」とし、「成果給の支給をどう正当化できるのか」と述べたと、ロイターは伝えた。
労組側は、このような成果給の格差が「2030システム半導体1位」という会社のビジョンを揺るがし、従業員の流出をあおるとして反発したという。
崔承浩労組委員長は、「メモリ事業部は成果給5億ウォンを受け取るのに、ファウンドリ事業部は8000万ウォンしか受け取れないなら、その従業員たちに働き続ける動機があるのか」と述べた。
現在、サムスン電子は全面ストライキの危機の中で、労使対話を続けている。J.P.モルガンは、今回のストライキが現実化した場合、サムスンの営業利益に21兆~31兆ウォン(140億8000万ドル~207億90000万ドル)の損失影響が及ぶ可能性があると推定した。
一方、サムスン電子労働組合が予告した全面ストライキが4日後に迫る中、会社は従業員をなだめる内部メッセージを通知したと伝えられた。
サムスン電子半導体(DS・デバイスソリューション)部門は最近、各部門長にメールを送り、「争議行為と関連して部門員の間でさまざまな意見が交わされる過程で、一部の従業員が心理的負担を訴えるケースが発生している」と指摘した。
そのうえで、「争議行為への参加の有無は、従業員一人ひとりの自由な意思に基づいて決定されるべきだ」とし、「争議行為への参加の有無に対する圧力、葛藤などで被害を受ける部門員が生じないよう、きめ細かな管理をお願いしたい」と強調した。
会社はまた、「争議行為への参加を呼びかけたり説得したりする行為として、暴行・脅迫を用いてはならない」とする労働組合及び労働関係調整法第38条第1項も引用したという。
ニュースは以上。
こちらはメモリーが95%の営業利益を稼いでるので、ファウンドリ部門との成果給に差が出るのは当然だという立場である。しかし、ここまで差が出るとはな。まあ、当然だという意見も多いとは思う。
問題は記事にもあるが、ファウンドリ部門からすれば絶望的な格差である。ファウンドリ部門が反発するのは当然だ。
「メモリ事業部は成果給5億ウォンを受け取るのに、ファウンドリ事業部は8000万ウォンしか受け取れないなら、その従業員たちに働き続ける動機があるのか」
この言葉にはサムスン電子の内部構造が深く関わっている。簡単に述べれば、メモリー半導体はAIバブルによって世界中から期待されている部門。実際、サムスン電子はもう半導体企業としてしか投資家は思ってない。
一方、半導体のファウンドリ部門はTSMCが圧倒的なシェアを誇り、韓国のファウンドリ事業は苦戦中である。
だから、赤字部門に高額成果給は不合理という会社側の主張は成果給の内容だけを見れば正しい評価なんだが、それで納得してしまえば、
DS部門のなかでファウンドリ事業を養ってやってるとしか思わない。むしろ、成果給8000万ウォンでも高額だ。なしでいいと感じてるだろう。こうなるとファウンドリ部門は働く意欲そのものを失う。
成果給格差は、 単なる報酬問題ではなく、サムスンの半導体戦略そのものを揺るがす構造問題に発展していることになる。
これは、2030年システム半導体1位”というサムスンの目標と矛盾する。当然、システムなんでファウンドリも含まれるわけだ。
韓国ネットの反応
- 「607% vs 50%」の格差に対する怒り(最も多い)
メモリとファウンドリの成果給格差に対して、韓国ネットでは強い反発が噴出。
「同じ会社なのに格差がひどすぎる」
「ファウンドリは赤字でも、未来の成長軸なのに冷遇しすぎ」
「これでは優秀な人材が全部TSMCに流れる」
「メモリだけ儲かってるからって、他部門を切り捨てるのは愚策」
特に、“2030年システム半導体1位”というサムスンの目標と矛盾しているという批判が多い。
(記事の該当箇所:ファウンドリ50〜100%成果給、赤字部門扱い )
- 「赤字だから成果給は当然少ない」という会社擁護派
一方で、会社側の説明に一定の理解を示す声もある。
「赤字部門に高額成果給を出せるわけがない」
「メモリが稼いで会社を支えているのは事実」
「ファウンドリはTSMCに負け続けてる。成果給を要求する資格があるのか?」
金亨魯副社長の
「当社でなければ破産していた」
という発言が、ネットでも引用されている。
(記事の該当箇所:金副社長の発言 )
- 「労組のストは正当だ」という支持派
成果給格差があまりに極端なため、労組を支持する声も増えている。
「これはストをして当然のレベル」
「成果給制度が不透明すぎる。労組が制度化を求めるのは正しい」
「サムスンは成果給を“恩恵”として扱ってきた。制度化しないとまた裏切られる」
特に、“メモリ5億ウォン vs ファウンドリ8千万ウォン”という数字が強烈な反応を呼んでいる。
(記事の該当箇所:崔承浩委員長の発言 )
- 「ストをすれば韓国経済が死ぬ」という懸念派
J.P.モルガンの「21〜31兆ウォン損失」試算がネットで大きく話題に。
「サムスンが止まれば韓国経済が止まる」
「輸出・株価・ウォン相場が全部崩れる」
「SKハイニックスまで巻き込まれたら終わり」
韓国では“サムスンショック”への恐怖が根強い。
(記事の該当箇所:J.P.モルガンの損失試算 )
- 「会社の内部メール」に対する皮肉
サムスンが「スト参加は自由意思」とメールした件については、冷笑的な反応が多い。
「自由意思?サムスンでそんなものが通じるか」
「圧力があるからメールを送ったんだろ」
「会社が“脅迫するな”と言うのは、逆に内部が荒れている証拠」
(記事の該当箇所:内部メールの内容 )
- 「成果給よりも構造改革が必要」という冷静派
一部の専門層からは、より構造的な批判も。
「メモリ依存の体質を変えない限り、成果給格差は永遠に続く」
「ファウンドリの競争力強化が最優先」
「成果給の問題ではなく、事業戦略の問題」
サムスンの“メモリ偏重”が根本原因だという指摘。
以上が韓国ネットの反応だ。まあ、妥当な意見だよな。
さて、ここでもう一つ深掘りしようか。韓国経済の専門家としてはサムスン電子はファウンドリ事業から撤退しようとしている可能性が高い。それは米国に造ったファウンドリ用の工場に受注がなくて生産停止に追い込まれているところから推測できる。
なぜ、その可能性が高いかを解説していこう。
サムスンはファウンドリ事業を「縮小 → 撤退」へ向かう可能性が高い
理由はいくつかある。最初はさっき少し触れたが、米国ファウンドリ工場が“受注ゼロ”で稼働停止している。テキサスのファウンドリ工場が受注不足で稼働停止している。
これを見てサムスン電子のファウンドリ事業の未来が明るいなんて誰も思わない。
ファウンドリは稼働率が70%を切ると赤字になり、50%を切ると“撤退ライン”と言われる超固定費ビジネスである。サムスンの米国工場は稼働率が30〜40%しかない。つまり、受注がほぼ無い。理由はさっきもあげたがTSMCに完全敗北という状態である。
米国工場が止まる=ファウンドリ事業の未来がないという意味。
次にファウンドリ部門は“数兆ウォンの赤字”で会社の足を引っ張っているのは事実。サムスンの副社長が「当社でなければ破産していた」と言ったほど、ファウンドリは深刻な赤字部門である。
メモリが稼いだ利益をファウンドリが食いつぶしている構造である。サムスンの財務体質から見ても、赤字部門を10年支える余裕はない。この時点で縮小→撤退の動きは予測できる。
さらに、TSMCとの技術格差が“決定的”である。これは次世代半導体技術の格差でもある。サムスンは3nmを量産できない。2nmの次世代半導体メモリーは計画遅延している。歩留まり率もTSMCの半分以下で酷い。顧客がほぼ全てTSMCに流出している。
特にApple・NVIDIA・AMD・Qualcommがサムスンを完全に見捨てたのが致命的である。
ファウンドリは顧客が戻らないビジネス。一度失ったら挽回は不可能だ。
さらに、今回の記事で会社(サムスン内部)でも「ファウンドリ切り捨て論」が強まっているてこと。今回の成果給格差(メモリ607% vs ファウンドリ50%)は、会社がファウンドリを“未来事業”として扱っていない証拠である。
もし本気で2030年にTSMCを抜く気があるなら、人材確保や投資拡大などファウンドリ事業をより強化しようとするはずだ。もちろん、社員のやる気を出させるために報酬もあげる。今は赤字だけど将来に期待していると評価をしてこそ、社員は頑張れるのだ。
しかし現実は逆で、ファウンドリの士気を完全に潰してしまった。
これは“撤退準備”の典型的な兆候である。
最後に、米国がサムスンに求めているのは「メモリ」であって「ファウンドリ」ではないのも明白。米国の戦略は明確。
TSMC:ロジック(ファウンドリ)
サムスン:メモリ
インテル:米国製造の象徴
つまり、米国はサムスンにファウンドリを求めていない。
CHIPS法の補助金もメモリには積極的。ファウンドリには消極的という差がある。
米国の戦略に合わせるなら、サムスンはファウンドリを縮小し、メモリに集中するのが合理的なのだ。
これらを総合すると、サムスンがファウンドリ事業を縮小 → 撤退する可能性は非常に高いといえる。
韓国メディアは絶対に言わないが、専門家の間では「サムスンはファウンドリを諦めるのでは?」という見方が急速に強まっている。
ただ、それを公にすれば先ほどの2030年システム半導体1位”というサムスンの目標そのものが瓦解する。だから、韓国ネットが怒ってるのは当然なのだ。しかし、売れない事業をいつまで抱えてるのは企業経営としてはお話にならない。株主からも確実に叩かれるだろう。