イラン戦争やホルムズ海峡封鎖による影響で、韓国ではガソリン価格が高騰している。それによって韓国政府はガソリンの価格規制や、物量規制などして、ガソリン消費を抑える動きが見受けられる。
実際、原油備蓄がロスタイムに入っていて、尽きかけてるので放出できない。このように韓国のエネルギー危機は深刻化を迎えてるわけだが、その兆候を読み取る上で一番わかりやすい業種というのが「韓国の航空業界」である。なぜなら、航空業界というのは燃料の高騰で一番打撃を受けるためだ。
これは空から人や荷物を運んでいるためである。しかも、韓国の飛行機で運ぶものは半導体などの精密機械を始め、軽い食料なども多いのでこれらの燃料価格の高騰が半導体や食料品の価格を値上げさせる。
案の定、中東情勢の悪化で原油価格が急騰し、韓国のLCCが次々と非常経営に突入している。その影響がついに、客室乗務員の入社延期や無給休職という形で表面化している。
「韓国の航空業界で何が起きているのか?」 「なぜここまで深刻なのか?」 「今後、韓国経済にどんな影響が出るのか?」
今日は、この3点を韓国経済の専門家の視点で解説していこう。
原油高が韓国LCCを直撃
現在、原油価格はイラン戦争の長期化懸念で105ドルまで上昇している。原油価格はあらゆる製品の値段を押し上げるので、韓国の航空燃料価格はわずか2ヶ月で2.5倍に跳ね上がった。航空燃料は1バレル 214.71ドル、2ヶ月前の約2.5倍だ。
韓国の航空会社限定というより、航空機の燃料コストは約3割~4割を占めるのだが、このような燃料価格の高騰は致命的である。
因みに韓国のLCCの「航空運賃」も凄まじく値上がりしている。
2025年の相場(イラン戦争前)
燃料費高騰もそうだが、当然、航空運賃もイラン戦争前とイラン戦争後で倍近く跳ね上がっている。2025年の韓国LCCの往復運賃は15000円~25000円だったのだが、戦争後は平均38153円となっている。これは約1.5~2倍といったところ。
片道でも「ジンエアー」などは15000円となっている。燃料費が2ヶ月前の約2.5倍になれば航空運賃も急上昇している。すると航空会社は飛行機を通常通り飛ばすと大赤字になるので「減便」に動く。減便というのは飛行機を飛ばす数を単純に減らすだけではなくて、当然、そこで働く雇用にも大きく影響する。だから、こんなエピソードがある。
ジンエアー、客室乗務員(CA)の入社を延期
先ほど少し触れたジンエアー航空だが、新規に採用した客室乗務員を約50人の入社を今年下半期に延期した。会社側として苦肉の策で「非常経営体制に入ったため、やむを得ない措置」と説明している。
ただ、韓国の若者は日本の氷河期と呼ばれるほど「就職難」である。客室乗務員の採用するときの条件に年齢制限はないのだが、傾向としては若者を採用することが多い。これはどうしてなのかというと、条件が専門・短大卒以上ということで、20~22歳が応募しやすい。
さらに未経験・第二新卒も歓迎という条件もあるが、これも、(=20代前半〜中盤が中心となる。つまり、だいたい20歳~26歳辺りが最も多い。その上の採用例もあるが、やはり、年齢がある程度、重視されてることはいうまでもない。これは単純な話はCAは体力仕事であるということ。
飛行機の中で長時間勤務するので、時差や立ち仕事は多くなる。体力ないときつい。これはLCCではないんだが、大韓航空では「ウォーキング審査」なんてものもある。
ええ?何それと思うかもしれないが、姿勢・身だしなみをチェックするそうだ。韓国の航空会社のCAはある意味、韓国の玄関を扱う大事な「職場」ともいえるので、だから、文化的な意味合いも強いが、やはり、そういうところはきちんとして客を迎えることが重要だってことなんだろう。
他にもCAは契約社員でスタートするので、長期雇用が前提ではない。これも若い層が中心になりやすい理由だ。
それで話を戻すと、客室乗務員を約50人の入社を今年下半期に延期ということは、韓国の若者における就職難をより深刻化させている事態といえるわけだ。50人はかなり狭い登竜門を潜って合格したと思われるが、それが50人とも採用延期。これが現実である。
CAといえば、韓国でも華やかなイメージを持つことは多いが、その雇用も絶望的。特に若者にはかなりきついニュースだと思われる。
聯合ニュースには、社員に毎年支給していた安全奨励金を無期限で延期したなどもあるので、非常経営体制であることがにじみ出ている。
「原油高×1500ウォン突破のダブルパンチの恐ろしさ(ドル建て決済の罠)」
聯合ニュースの記事には原油価格高騰によるCAの雇用延期や減便などしか書いてないのだが、ここは韓国経済の専門家としては深掘りしておきたい。
そもそも聯合ニュースの記者は、今のウォンレートを知らないわけがない。原油価格高騰だけじゃない。1500ウォン突破というウォン安も輸入物価や燃油を引き上げる。
なぜなら、航空機の燃料サーチャージはドル建て決済だからである。最初に航空燃料は1バレル 214.71ドルとあるが、ウォンではないことに注目だ。つまり、ウォンレートが直撃する。
つまり、韓国の航空会社は原油高+1500ウォンという二重の衝撃にノックアウト寸前となっているのだ。
韓国LCCの財務体力は極めて弱い
さらに韓国LCCの財務状況も補足しておこうか。
航空機はリースに依存しており、自社の整備能力が弱い。これはLCCで大きな事故が起きたときに取り上げて事故の原因が「整備不良」であるの指摘したとを覚えているだろうか。さらに燃料ヘッジはほぼできない。そもそも現金を持ってない。
つまり、原油高+ウォン安は即経営危機となる。
LCC各社で“減便ラッシュ
聯合ニュースにはその後の記事で減便について書いてあるが、まとめると次の通り。
減便数(4〜6月中心)
ジンエアー:176便
チェジュ航空:187便
エアプサン:212便
イースター航空:150便
エアソウル:51便
エアプレミア:73便
エアロK:250便
合計すると、1100便以上の国際線が削減されたことになる。特に影響が大きいのは、 韓国人の旅行需要が高い 東南アジア路線。
でも、これでは1100便の削減がどれだけ大きいかを理解するのは難しいだろう。そこで、重要となるのが韓国LCCの通常時の国際線便数だ。
ただ、便数は乗ってないので人数から推定していく。韓国LCC9社の国際線利用客は 2023年1〜11月で 2178万6842人と韓国国土交通部が発表している。
それで韓国LCCの1便あたりの平均搭乗率はだいたい8割~9割。飛行機の大きさまで考慮すると計算が面倒なので、そこは単純(150~160人規模)で行くが、1便辺りの平均搭乗者数は150〜160人となる。後は利用客の人数と平均搭乗者数を割ればいい。
2178万6842人 ÷ 155人 ≒ 14万便(年間)となる。さらにこれを月間で割ると、11600便。ただ、2023年よりも2025年は円安による日本旅行ブームで増便していたので、それらを考慮すると、だいたい8000便から10000便といったところだ。
後は簡単だ。8000便から1100便が減ったので引けばいい。つまり、全体の10パーセントほどは消えたことになる。結論を述べれば、韓国LCCの1ヶ月分の国際線の“1割以上”が消えたとわりと衝撃的な数値である。
無給休職が広がる
聯合ニュースの記事を読めば、チェジュ航空は6月に客室乗務員の無給休職を受付。ティーウェイ航空は5〜6月の2カ月間、客室乗務員を対象。エアロKは全社員対象に5月の無給休職を受付とある。希望者のみと書いてあるが、どう見ても人件費削減のための圧力である。
さらに、雇用労働部は先月末に開催した非常雇用労働状況点検会議で、航空業界で雇用危機の兆しが表れていると分析したとある。政府が航空業界の雇用危機を認識しているわけだ。
そんな中で韓国航空会社が縋るのはノージャパンとかいってた日本路線である。
日本路線にすがるしかない韓国LCCの哀れな実態
円安で日本旅行がブームと最初に述べたが、これは数値からも出ている。韓国国土交通部の統計では、 韓国LCCの国際線のうち 40〜55%が日本路線とある。理由は簡単だ。日本と韓国は近距離なので燃料コストが低い。需要は安定している。近いので回転率も早い。
これを見ればわかるが、イラン戦争後で東南アジア路線は全滅コース。ますます日本路線にすがるしかないのだ。言い換えれば、日本以外の路線は飛ばせば飛ばすほど赤字である。
結局、韓国のLCCは日本路線しか生き残れる道がない。それは日本の需要に完全に振り回されることを意味する。だから、韓国のLCCが致命的な打撃を受けても耐えられるのは日本や円安のおかげといえよう。もっとも短期的にだ。イラン戦争長期化すれば倒産するLCCも出てくるかもしれない。
韓国ネットの反応
韓国ネットの反応を総合すると、以下の3点に集約される。
1. LCCの経営体力の弱さへの不満
「燃料が上がっただけで非常経営か」という批判。
2. 日本路線依存への危機感
「日本がなければLCCは生きられない」という認識。
3. 雇用不安への怒り
入社延期・無給休職に対して「若者が犠牲」という声。
反応については想定内てところだ。
特に面白いのは政府批判だ。
韓国政府が“雇用危機の兆候”と述べたことに対しても不満が多い。
- 「兆候じゃなくて、もう危機だろう」
- 「政府は見ているだけで何もしない」
- 「航空業界が倒れたら地方空港も終わる」
全くもってその通りである。
まとめ
今回の原油高と中東情勢の悪化は、韓国LCCが抱えてきた構造的な脆弱性を一気に表面化させた。入社延期や無給休職といった雇用不安が広がり、ネット上でも「日本路線依存の限界」や「危機管理の甘さ」を指摘する声が相次いでいる。
1100便を超える減便は単なる一時的な調整ではなく、韓国LCCが外部環境の変化に耐えられないビジネスモデルに陥っていることを示す象徴的な出来事だといえよう。
今後、燃料価格や地政学リスクが長期化すれば、韓国の航空業界はさらなる再編や経営危機に直面する可能性が高い。韓国LCCは今まさに、事業構造そのものの転換を迫られている。できなければ倒産。ますます若者の雇用に深刻な影響が出る。