韓国ガス公社「心配ない」の嘘──カタール不可抗力でLNG供給はむしろ危険に

今回の記事は韓国のエネルギー危機を終息させたニュースと言っても過言ではない。記事のタイトルをそのまま読むと「韓国ガス公社、LNG需給に心配ない…BPと700万(70万×10年)トン長期契約」である。ええ?もう、韓国はLNG供給に心配ない?あのBPと700万トンも長期契約したし。

そう思った人は完全に騙されています。理由はいくつもあげられるが、まずは韓国が1年で使うLNG消費量は約4000万トンされている。つまり、年間70万トンでは需要のわずか1.2~1.7%に過ぎないんだよ。ええ?全然足りてないじゃん!そうです。心配ないどころか。心配が限界突破しています!

ということで今回はこの記事の大嘘に突っ込みながら韓国の深刻なエネルギー危機を韓国経済の専門家の視点で解説しよう。

中東依存は減っただけでゼロではない

まず、今回の長期契約で、公社関係者は「中東産LNGの供給中断という状況下でも、BP社と長期導入契約を追加で締結したことで地政学的な供給リスクを緩和することができた」と説明した。

なるほどなるほど。確かにBPと10年で700万トンの契約に合意したとしよう。韓国は年間70万トンのLNGを手に入れた。だから、地政学的な供給リスクを緩和することができた。この記事は正しい。そりゃわずか1%でも緩和できれば、緩和といえるからな。実際、最初に述べた通り。年間消費の1.7%確保できたんだから緩和だよ。

それで、記事は「中東依存が19.5%に減った」と強調しているが、 2割が止まれば普通に危機。4000万の2割は800万トンだからである。

この中東依存のほとんどカタール産のLNGであり、以前に記事でも紹介したが、カタールのLNG施設がイランからの攻撃で損傷を受けて、LNG供給ができなくなり、カタールは韓国などに「不可抗力宣言」を出した。復習になるが不可抗力宣言はとても重要なので簡単に振り返ろう。

不可抗力宣言とは何か

不可抗力宣言とは、LNG供給国が「契約どおりに供給できない」と正式に通知する法的措置。戦争、テロ、天災、施設破戒、国家命令、国際制裁など深刻な事情で供給できない場合に発動する。そして、こちらの責任ではないので、契約を守れなくても違約金は払わないという宣言である。

つまり、これが出た瞬間、韓国に年間契約したLNGが供給されてなくても、イランが悪いから諦めろ。ガス施設復旧には5年かかるからそれまで、契約は事実上中止だ。もちろん、違約金は払わない。

こういう内容である。もちろん、これはLNGを供給するカタールからすれば、違約金は払わないが、LNGを売れないわけだから売却代金は一切入ってこなくなる。そして、5年もあれば他の代替先(BPとの長期契約がまさにそれ)を探してるので、この先の契約にも大きな支障が出る。このように高いリスクを背負うので最後のカードである。

このようにカタールはどうしようもなくて不可抗力宣言を出したわけだ。これは韓国だけじゃない。お得意様全体に出している。問題はこれによって韓国はスポット市場で高値で調達するしかなくなる。では、スポット市場とは何か。

ここでスポット市場についても解説しておくと後の解説が楽になるので先にやっておく。

スポット市場とはその時の価格で買う市場

スポット市場というのは長期契約ではなく“その時の需給で決まる価格”で原油やLNGを買う市場のことだ。つまり、先物における原油価格やLNG価格で買う市場と言い換えていい。当然、取引価格は毎日変化する。

だから、安いときはスポット市場で手に入れるほうが得なこともあるが、今回みたいに原油価格やLNG価格が高騰しているときに買おうとすれば、地獄のような値段で買うはめになる。LNGの世界では、 スポット価格は長期契約の3〜10倍になることが普通である。

例えば2022年の欧州エネルギー危機の場合はどうだったのか。

長期契約は1MMBtu=10〜15ドルだったが、スポット市場では1MMBtu=70〜100ドルとなんと最大で10倍まで跳ね上がっていた。

因みにMMBtu(百万英国熱量単位)は天然ガス取引の標準熱量単位で、1MMBtu≒28.3立方メートル天然ガスに相当する。特に天然ガスやLNG液化天然ガスでは国際単位として用いられる。

単位の話を詳しくやると難しいので、必要に迫られない限りは割愛する。

韓国のカタール依存はどれほど危険なのか

まずは韓国のLNG輸入先についておさらいしておこう。(2023年基準)

カタール:19.5%

米国:18~20%

オーストラリア:17~20%

マレーシア・インドネシア:10%前後

ロシア(サハリン):約数%

このようになっている。そして、今回のイラン戦争でカタールから一切、供給されなくなった。つまり、残り20%をどこからか調達しないといけないわけだ。

そして、この20%はスポット市場で調達することになるわけだ。長期契約で安いLNGを手に入れていた韓国にとっては絶望的な状況である。なぜなら、カタール依存していた韓国だけじゃない。多くの国がカタールのLNGに依存していたので、それらの国が一斉に調達先を探すとなれば、当然、スポット市場での価格は跳ね上がる。さらにいえば、長期契約を結んだときの価格も相当吹っかけられる。

記事にはBPと10年で700万トンの長期契約とあるが、もちろん、その金額は現在のスポット市場の価格が反映されるので、安いときの購入価格にはならない。長期なので何割引はあるにせよ、言い換えれば、超絶高値で10年もの間、韓国はBPのLNGを買うことになったのだ。

でも、背に腹はかえられない。供給不足でLNGが止まればインドみたいに薪の生活を余儀なくされるからだ。だから、韓国政府からすれば高くても調達できたことを実績に自慢するだろうな。問題は韓国ガス公社にスポット市場のLNG代金を払うことが果たしてできるのかだ。ええ?できないの?現時点で可能性を考慮すればかなり難しいといえる。

では、なぜ難しいのかを解説しよう;

韓国ガス公社(KOGAS)は財務危機寸前

LNG代金を払うには当然、ドルがいるわけだ。問題は韓国のガス公社も、韓電と同じで破綻寸前であること。負債比率は400%超えている。未収金は10兆ウォン規模である。未収金というのはいずれ返してもらう予定の金額だが、事実上は返ってこないので負債と変わらない。

つまり、こんな破綻寸前の韓国ガス公社がスポット市場のLNG代金を払えるわけがないんだよ。しかも、今のウォンは1515ウォンとか、こちらも過去最安値を爆走中である。ウォン安になればなるほど調達コストが急増する。そして、LNG価格は一番高くなるのは需要が増える「冬」である。

だから、このまま韓国の冬はエネルギー危機に見舞われて、大規模停電や薪生活をしている可能性が高い。

簡単にまとめると「心配ないどころか。心配が限界突破している!」とはこういうことだ。

韓国ネットの反応

【韓国ネットの反応まとめ】
(韓国ガス公社「LNG需給に心配ない」発表に対して)

①「心配ない? 嘘だろ」派(最多)
記事の“心配ない”という表現に最も反発が強い。

「カタールが不可抗力宣言したのに心配ないわけがない」

「政府の発表はいつも楽観的すぎる」

「中東戦争が続いているのに安全と言われても信じられない」

→ 韓国人は政府のエネルギー関連発表を信用していない。

②「カタール依存がまだ20%もあるのに?」派
記事は中東依存が19.5%に下がったと強調しているが、
ネットでは逆に不安材料として受け止められている。

「20%止まったら普通に危機だろ」

「基幹供給がカタールなのに安心と言うのは詐欺」

「不可抗力宣言は“供給停止の合法化”だぞ」

→ “依存度が下がった”という政府の主張は説得力がない。

③「BPの70万トンなんて焼け石に水」派
記事はBPとの契約を強調しているが、
ネットでは「量が少なすぎる」と批判。

「年間70万トン?韓国の需要の2%だろ」

「これで心配ないと言うのは無理がある」

「PR記事にしか見えない」

→ BP契約は“象徴的”であり、実質的な安全保障にはならないという認識。

④「ガス公社は財務危機なのにどうやって買うんだ」派
韓国ガス公社の財務悪化を知っている層は、
“買いたくても買えない”という点を指摘。

「負債比率400%超えてるのに?」

「スポット市場で高値を買う体力がない」

「電力公社と同じで実質破綻状態」

→ 供給より“価格を払えるか”が問題だという視点。

⑤「冬になったら終わり」派
記事にも冬季リスクが書かれているため、
ネットでも冬の危機を懸念する声が多い。

「冬の需要が重なったら価格が爆上がりする」

「去年の欧州みたいになる」

「韓国は在庫が少ないから冬が一番危険」

→ 冬季のエネルギー危機を強く警戒。

⑥「日本とのスワップ協定は“保険”にならない」派
記事はJERAとのスワップ協定を強調しているが、
韓国ネットでは冷ややか。

「日本も逼迫したら融通なんてできない」

「スワップは余裕がある時だけ成立する」

「実質的な保険にはならない」

→ 日韓スワップは“条件付き”であり、万能ではないという理解。

🎯【総合まとめ】
韓国ネットの反応は、
政府・ガス公社の「心配ない」発表に対する強い不信感 が中心。

特に強いのは以下の3点:

カタール不可抗力宣言の影響を過小評価している

BP契約は量が少なすぎて安全保障にならない

ガス公社の財務危機でスポット市場に対応できない

つまり韓国ネット世論は:

「心配ない」ではなく「むしろ危険」

という方向でほぼ一致している。

まあ、こちらが解説したとおりの反応であるな。

まとめ

韓国ガス公社は「LNG需給に心配ない」と発表したが、実態はむしろ危険が高まっている。

理由は3つ。

① カタールが不可抗力宣言 → 基幹供給が止まる

韓国のLNGの約20%を占めるカタールが、イラン攻撃で施設損傷 → 不可抗力宣言。これは供給停止を合法化する最悪の事態。

② BP契約は“年間70万トン=1.7%”で焼け石に水

韓国の年間需要は約4000万トン。BP契約はその 1〜2%に過ぎず、供給安定には全く足りない。

③ スポット市場は高騰 → 韓国ガス公社は財務危機で買えない

カタールが止まればスポット市場に頼るしかないが、スポット価格は 長期契約の3〜10倍。しかもガス公社は 負債比率400%超・未収金10兆ウォン で体力がない。

韓国ガス公社の「心配ない」は広報的な楽観論で、実際には“中東ショック+カタール停止+財務危機”で極めて危険。韓国ネットも「嘘だ」「BP契約は少なすぎ」「冬が一番危険」という方向でほぼ一致している。

韓国が冬をまともに越せるのか。大規模停戦、凍死者が続出するかは今後のスポット市場価格やウォン次第てところだ。