韓国の「迅速清算制度」は本末転倒──破綻を防ぐどころか誘発する危険な仕組み

6月2日、日本語で掲載されている韓国メディアにはコスピやサムスン電子がどうとかしかなかったので、韓国新聞を読みあさっていたら興味深い記事を見つけた。

それは、韓国の預金保険公社(KDIC)が創立30周年を迎え、破綻金融会社を2〜3日で処理する「迅速清算制度」の導入を急いでいる。

それでざっと記事を斜め読みしたら、表向きは「バンクラン(取り付け騒ぎ)を防ぐための制度」と説明してるのだが、制度の中身を精査すると、むしろ取り付けリスクを増幅させる“危険なショートカット”ではないかと思えてくる。

この時点でアウトだとおもうのだが、制度設計とは本来、リスクを最小化するために存在する。でも、韓国の場合はスピードを得る代わりにリスクを増やすという、本末転倒の構造を抱えてしまっている。

では、どうしてこんな本末転倒なことになっているのか。

韓国経済の専門家の視点で解説しよう。

韓国が迅速清算制度を急ぐ理由

これは記事によれば、「破綻後150日問題」という制度の限界があるためだ。ええ?どういうことだって。韓国では銀行が破綻したら処理するのに150日かかるの?そう思ったかもしれないが、かかるんだよ。

しかも、これは銀行の事情ではなく、制度そのものが遅いのだ。

それで韓国の破綻処理を調べると次のように絶望的な複雑である。

金融委員会

金融監督院

預金保険公社

企画財政部

国会(公的資金投入の承認)

外部評価機関

受け皿銀行

このように破綻してから、色々なところに回されて、150日前後かかるのが当たり前になっているようだ。

だから、150日も待てないから迅速清算制度が必要という理屈だ。理屈は確かにわかる。でも、これは制度の欠陥であることは言うまでもない。見直すべきはここだと思うのだが、別の制度で誤魔化すんだよ。ええ?なぜかって?それは韓国社会における誰も責任取りたがらない構造的バイアスが働くからだ。

150日制度を直さない本当の理由

最初から核心を突こう。

150日制度は明らかに欠陥だが、韓国はなぜ改革しないのか。理由は単純で、改革すると痛みが大きすぎるから。つまり、年金制度や労働市場改革と同じで、「みんな問題だとは思っているが、誰も自分の持ち分は手放したくない」構図がある。

では、その痛みとは何か

官庁の縄張りを壊さないといけないから。150日制度は、金融委員会・金融監督院・預金保険公社・企画財政部・国会…といった官庁の縄張りの上に乗っている仕組みであることは上に書いた通りだ。。

破綻処理を早くしようとすれば、本来は誰が最終決定権を持つのか。誰が責任を負うのか。。どのプロセスを削るのかなどを決めて、権限を一本化しなければならない。しかし、それはすなわち「どこかの官庁から権限を取り上げる」ことを意味する。韓国の官僚機構が、そんな改革を素直に受け入れるはずがない。

要は俺たちの仕事を減らすなということだ。いやいや、仕事減った方がいいですよね?効率的じゃないですか。でも、れは彼らにとって給料削減・権限縮小・影響力低下につながる。

まじですか!と思うかもしれないが、 官僚組織とはそういうものだ。制度の合理性より、自分たちの縄張りと予算と権限が最優先。だから150日制度は、誰も触りたがらない“聖域”になっていると。だめじゃんと思った方は正解だ。でも、それが韓国である。

次に見直さない理由として、公的資金投入の責任がハッキリしてしまうから。150日制度を改革して破綻処理を早くすると、「誰が、いつ、どの銀行に、いくら税金を突っ込んだのか」が、今よりもはるかにクリアになる。いいことだと思うだろう?でも、韓国ではそれが別の問題を生むんだよ。

「なぜこの銀行だけ救済したのか」「評価額は本当に妥当だったのか」「特定勢力への利益供与ではないのか」こういう“政治的に面倒な質問”が一気に噴き出す。

つまり、破綻処理の迅速化は、政治家と官僚にとって“説明責任の地雷原”なのだ。

だから彼らは、「時間をかけて複雑にしておけば、責任の所在が曖昧になる」という、ある意味で“合理的な”判断をしている。

要するに、「責任を取りたくないから制度を遅くしている」ということだ。

いやいや、国民の預金がかかってるんですよ?でも、彼らにとっては自分の政治生命の方が大事なのだ。韓国では誰も責任取りたがらないから制度をわざと遅くするというのはわりとよくあるんだよな。

では、銀行側はどうか。

破綻処理が早くなるということは、銀行経営陣の責任追及も早くなるということだ。

「なぜ不良債権を放置したのか」「なぜリスク管理ができていなかったのか」「なぜ資本増強を怠ったのか」

こうした追及が、今よりも“即時”に来る。さらに、株主・債権者の損失確定も早まる。

つまり、銀行側にとっては迅速処理=自分たちのダメージが早く確定する制度でしかない。だから当然、銀行はロビー活動を通じて全力で抵抗する。

要は、「俺たちの責任を早く確定させるな」ということだ。

いやいや、破綻したのはあなたたちの経営判断ですよね?でも、彼らは自分の責任が早く確定する制度を絶対に支持しない。

こいつら腐ってやがると思うかもしれないが、それが彼らにとっての合理性なんだよ。誰も責任を取りたくないからわざと遅らせる。そして、そのリスクを全て国民が請け負う。彼らの財布は痛まない。

これが韓国の金融行政の“構造的な歪み”であり、150日制度が放置され続ける理由でもある。

最後に経済的は話を入れておくとITシステム統合に莫大なコストがかかるというのがある。

破綻後の迅速処理を実現するには、預金移管や契約移管をスムーズに行うためのITシステムの標準化・統合が必要になる。

しかし韓国の金融業界は、地方銀行、貯蓄銀行、協同組合。第2金融圏と、システムがバラバラである。ここに手を入れるということは、莫大なコストと調整負担が発生する。

誰がその費用を負担するのか?
銀行は嫌がる。政府も嫌がる。官僚も嫌がる。

つまり、「誰も金を出したくないから制度を直さない」という、非常にシンプルな理由だ。

いやいや、金融システムの安定は国の根幹ですよ?でも、彼らにとっては“今の予算”の方が大事なのだ。こいつら腐ってやがる!

でも、これだけ説明したら150日制度は欠陥はわかったと思う。だから、韓国は逆にリスクを増やすという意味不明なことをやり出した。それが最初に出てきた「迅速清算制度」である。

しかしそのショートカットは、破綻前に銀行を選定する=取り付けリスクを最大化する
という致命的な副作用を持つ。

ショートカットは取り付けリスクを最大化する

韓国が選んだこのショートカット。破綻前に銀行を選定しておく制度は、実は金融行政の中でも最も危険な領域に踏み込んでいる。

なぜか。理由は単純で、銀行は「破綻しそう」と言われた瞬間に破綻するからだ。ええ?どういうこと?実際、これはこちらも取り上げたが、米国のシリコンレバー銀行を思い出してほしい。SNSの噂だけで取り付け騒ぎが起きた。

そして、韓国でも2011年の貯蓄銀行危機というのがあった。これも、「監督対象らしい」という噂だけで、店頭に行列ができ、取り付けが発生し、破綻が連鎖した。

つまり、この制度の最大の欠点は事前に決めていた情報が漏れた瞬間に取り付け騒ぎがこるてこと。整理しておこうか。

「破綻前に選定する」という行為そのものが爆弾の理由。

迅速清算制度は、破綻後ではなく破綻前に、資産査定、負債移管の範囲決定、買収候補との交渉、公的資金の規模調整などを行う。

つまり、破綻前から当局が銀行の内部に深く入り込む。ここで問題になるのが情報漏洩だ。

韓国の金融行政は、政治・メディア・官僚・銀行・地方勢力が複雑に絡み合っており、情報が漏れやすい構造になっている。

そんな国で、「あの銀行、当局が動いてるらしいぞ」という噂が一度でも出たらどうなるか。

答えは簡単だ。預金者が一斉に逃げる。

今はSNSの時代だ。

誰かがX(旧Twitter)に書く。まとめサイトが拾う。YouTubeで解説動画が出る。カカオトークで一気に広まる。この流れは数時間で起きる。つまり、 破綻前に銀行を選定する制度は、取り付けリスクを最大化する制度といえよう。

皆さんは知らないかもしれないが、健全な銀行でも噂だけで取り付け騒ぎが起きたら実際、危機となる可能性がある。それだけ、銀行の預金システムとは危ういものである。

銀行は「噂」で死ぬ。これは歴史が証明している

銀行は、預金者が「この銀行は安全だ」と信じているからこそ成り立つビジネスだ。
逆に言えば、信頼が崩れた瞬間に終わる。だから、過去にもこんな事例があるわけだ。

さっき少し触れたが、SVB(シリコンバレー銀行)はSNSの噂で48時間で破綻。2011年の韓国貯蓄銀行危機は「監督対象」という噂だけで取り付け発生。イギリスのノーザンロックも報道1本で取り付け騒ぎ

つまり、銀行は「破綻しそう」という噂だけで破綻する。

健全かどうかは関係ない。噂が先に走れば、資金繰りは一瞬で崩壊する。

■ 銀行のビジネスモデルは“危ういバランス”の上にある

銀行は預金の大半を貸し出しに回している。つまり、預金者全員が同時に引き出しに来たら、どんな銀行でも耐えられない。

これは銀行の構造上避けられない。

だからこそ、「噂だけで取り付けが起きる」=「噂だけで銀行が死ぬ」という現象が起きる。

そして、迅速清算制度は、「破綻前に銀行を選定する」=「噂の火種を制度が自ら作る」

という、制度設計としては致命的な矛盾を抱えている。

だから、制度が“破綻を防ぐ”どころか、制度が“破綻の引き金”になる危険性すらある。

では、どうしてアホな制度を導入しようとしているのか。それに突っ込んでいこうか。

ここまで読んだ人は、ほぼ全員こう思ったはずだ。

「いや、こんな制度、どう考えても危険だろ。なんで導入しようとしてるんだよ?」

その疑問は正しい。むしろ、そこにこそ韓国金融行政の“核心”がある。

結論から言うと、韓国はアホだから危険な制度を導入しているのではない。“アホに見えるほど追い詰められている”から導入しているのだ。もう、この時点で駄目とかいってたら進まないけど。

そして、制度設計の原則(リスク最小化)を完全に無視した制度が生まれる背景には、韓国社会特有の“構造的バイアス”がある。150日制度の欠陥は最初にやった。結論は見直せない。でも、それでは困るんだよ。

なぜなら破綻予備軍が多すぎて、制度改革を待っていられないんだよ。

韓国は今、金融システム全体が火薬庫の上に乗っている。

不動産PFの焦げ付き、地方銀行の脆弱性、家計負債の世界最悪レベル、金利高止まり、中小企業の延滞率上昇などわりと全部、過去で扱ってきている内容なので深くはしない。

つまり、破綻が“いつ起きてもおかしくない”状況なんだよ。

制度改革に数年かけている余裕などない。だから、危険だとわかっていても、「とりあえず破綻前に準備しておこう」という方向に走る。

これは、火事が起きそうな家で、「消防署の組織改革は後回しでいいから、とりあえずバケツだけ置いとけ」と言っているようなものだ。

でも、それが新たな金融リスクを生むのだから救いようがないんだよな。情報漏れて取り付け騒ぎが起きました。じゃあ、誰がその責任取るんだになるのは目に見えているんだよ。こんな制度作るから悪い?造った理由は150日制度に問題があるからだという政治的議論を招いて結局、なにも変わらなくなる。

そして、ツケを払うのはいつも国民

官僚は責任を取らない。
政治家も責任を取らない。
銀行経営陣も責任を取らない。

では誰が損をするのか。

預金者と納税者だ。

制度の歪みのツケは、いつも国民に回ってくる。

全体まとめ

結局のところ、韓国が迅速清算制度という“危険なショートカット”に走った理由は明白だ。

本来改革すべき150日制度を直すと、官庁も政治家も銀行も痛みを負うからだ。

だから誰も触らない。だから制度は放置される。だからショートカットに逃げる。

しかし、そのショートカットは、破綻を防ぐどころか、破綻の引き金になりかねない。

破綻前に銀行を選定するという行為は、「危ないらしい」という噂を制度が自ら作り出すようなものだ。SNS時代の韓国でそんなことをすれば、取り付け騒ぎが起きるのは時間の問題である。

そして、取り付けが起きたらどうなるか。

官僚は「情報漏洩が悪い」と言う

政治家は「制度の運用が悪い」と言う

銀行は「風評被害だ」と言う

そして最後に必ずこう言う。

「そもそも150日制度が遅いのが悪い」

だが、その150日制度を直すべき時に、誰も直さなかったのは誰か。

官庁だ。政治家だ。銀行だ。

つまり、制度の欠陥を放置した者たちが、その欠陥を隠すために作った制度が、
新たな金融リスクを生んでいる。

これが韓国金融行政の“構造的病理”であり、
今回の迅速清算制度の本質だ。

制度設計とは本来、リスクを最小化するために存在する。

しかし韓国がやっているのは、スピードを得る代わりにリスクを増やすという、本末転倒の制度設計である。

そして、そのツケを払うのはいつも国民だ。預金者であり、納税者であり、一般の生活者だ。

制度を守るために国民が犠牲になる――そんな金融行政に未来はない。