昨日7月10日、韓国経済における二つの重要イベントがあった。
前者はSKハイニックスのナスダック上場。後者は中央日報のワークアウト申請可否である。今回はどちらもリアルタイムの動きがとても重要なので、最初にSKハイニックスのナスダック上場について少し取り上げてから、中央日報のワークアウト申請可否について見ていこうと思う。
結論を先に述べると、韓国で最も大事な半導体インフラと、情報インフラの二つが同時に「流出」したことで韓国の脆弱性がますます高まったことになる。
それでは韓国経済の専門家の視点で解説しよう。
SKハイニックス、ナスダック上場の要点まとめ
SKハイニックスが米ナスダック市場に上場したとロイターが報じている 。
初値は170ドルで、公募価格149ドルを14%上回る形となった 。
公募による調達額は約265億ドルに達し、AIブームによる投資家需要の強さが示された。
株価・評価の背景
公募価格149ドルは、ソウル市場の過去3営業日平均株価に2.7%上乗せした水準 。
ADR10単位=普通株1株に相当する仕組みで上場している 。
半導体株はAI関連支出の鈍化懸念で最近やや失速しているが、SKハイニックス株は 2週間前の最高値から25%下落しつつも、1年前比では約630%高い水準にある。
こちらも寝る前にSKハイニックスの公募価格から上乗せされた開いた市場を見ていたわけだが、その結果は168ドルだった。それじゃSKハイニックスは半導体が振るわないなかでも好調じゃないかと思うかもしれない。
確かに今の株価が推移すれば149ドルから、上乗せされているので悪くないと思う。問題はまだ一般的な取引に入ったわけない。悪魔でも条件付き取引である。では、一体、これは何なのか。
正式上場日前に売買できる“暫定取引”
条件付き取引とは、正式な上場日より前に、株式の受け渡しが完了していない状態で売買を許可する制度。
まだ株式の受け渡し(settlement)が完了していないが、しかし投資家は売買できる。
ただし「条件付き」であり、正式上場が完了しないと取引は確定しない
つまり、“上場は確定していないが、事実上ほぼ確実なので、先に売買を始めてもいいという話。
さすがに正式上場が遅れたり、中止になって取引が無効になることはほとんどいないので、通常の取引と大差はない。
だから、99%はほぼ確定だが、そういうこともマレにある。13日なってからが本番と。ここが一つの注意点。
もう一つはスペースXのIPOもそうだったが、最初に値をつり上げて、高くなってから落とす。いわゆる「上場ゴール」というのがIPOなどの投資の世界では良くある。
これも解説しておこうか。
なぜ大型IPOは“最初に釣り上げてから落とす”のか
初値を高く作ることで、既存株主が最大利益を確定できる
IPOは「企業の資金調達」ではなく、既存株主(VC、創業者、大口投資家)が利益を回収するイベント。
だから初値を高く作るほど、彼らは儲かる。
● 初値を高くする方法
公募価格を低めに設定
需要を煽る(AIブーム、宇宙ブームなど)
条件付き取引で流動性を確保
メディアで「史上最大級」「AI革命」などの煽り記事を大量に出す
これで 初値が跳ねる → 既存株主が売り抜ける。
② 上場後は“買い材料が尽きる”ため、自然と下落する
IPO前は「期待」で買われるが、IPO後は「現実の業績」で評価される。
● よくある流れ
上場前:期待で買われる
上場直後:初値が跳ねる
数日〜数週間後:材料が尽きて下落
半年後:公募価格割れ
これが 上場ゴール と呼ばれる。
SpaceX も SKハイニックスも“同じ構造”
● SpaceX の場合
上場前から世界最大級のIPOと煽られる
初値が跳ねる
しかし上場後すぐに「債権発行」が嫌気されて売られる
典型的な上場ゴールの値動き
● SKハイニックスのナスダック上場
初値170ドル(公募149ドルの14%上)
しかし条件付き取引の段階で既に売りが出ている
韓国市場では「ウォン安 → 外国人は売りやすい」
上場後の下落はむしろ自然な流れ
スペースXの上場についてはこちらも大きく取り上げて記事にしたが、実際、200ドルあげたとき、ニュースはイケイケモードだった。しかし、スペースXが債権発行を理由にドンドン売られており、今日で初期値150ドルを下回った。
こちらも公募の抽選にあたって株主なので、スペースXの株価は気にしているんだが、宝くじと思って買っておけばいい感覚である。ただ、数株では5年後に宇宙にいけないので、どこかの段階で大きく買いたいのだが、どこにしようか迷っている。
今のところ、IPO抽選で当たった135ドルを下回ったら買い足ししようと考えてるが、どこまで下がるかはわからない。
あのスペースXでさえ、こんな感じなのだ。そして、こんな赤字のスペースXにSKハイニックスは公募価格で負けたんだよ。
SKハイニックスも上場ゴールになる可能性はないとはいいきれない。だから、176ドルまであげて、168ドルで終わってるのが気になる。
これは既に以前の動画で「成功だが満点ではない」という評価したときに感じた不安である。
ここからさらに一歩踏み込もう。この質問を問いかければ答えは直ぐに導き出される。
5年後に持ちたい株は?スペースXですか。それともSKハイニックスですか
本来、投資というのはその企業の「将来性」を感じてするものである。スペースXは夢物語のようだが、マスク氏はそれを実現しようとしている。SKハイニックスは夢物語ではなくて、すでに存在するHBMという武器でナスダックのビッグテック相手に戦争を仕掛けたようなものである。
ナスダックに上場するとはそういうことだ。指数に組み入れられるなら、当然、世界中のインデックスファンドに注目される。ちょうどスペースXがナスダック100に編入されたんだったか。でも、株価は下がっている。
しかし、5年後に持ちたいなら、断然、スペースXであることはいうまでもない。だって半導体株を持っても夢は買えないじゃん。ここの投資が実現できなかった宇宙のロマンを広げるんだ。でも、SKハイニックスに投資しても、半導体の生産量が増えるだけじゃないか。
もちろん、どちらが好みかは投資家の判断であり、夢よりも現実だと思う人もいるだろう。それを否定するつもりは一切ない。大事なのは「5年後」を思い浮かべるとSKハイニックスがずっと王者でいられるとは思えないてことだ。どの企業にも栄枯盛衰がつきものだ。今を基準にして全てが上手くいくと考えるのは空想家である。
だから、こちらが言いたいのはまだ評価を下す段階ではないてこと。13日の正式上場から、一週間は株価上昇する見込みはある。しかし、その後は下落する可能性が高い。これはスペースXと同じだ。材料がなくなってしまうためだ。
さらに大事なのはマスク氏はニュースの話題性にことかかないが、SKハイニックスにはそれがないてこと。世間的にもほとんど認知されてない。SKハイニックスの知名度は低いのは当然だ。一般的に完成した「商品」に人は興味を示すが、よくわからない半導体には興味を示さない。サムスン電子のスマホを知っていても、SKハイニックスって?という日本人が多数だろう。
韓国メディアは大成功だと宣伝して、韓国人はSKハイニックス凄いとおもうかもしれないが、本当の評価は上場ゴールを越えてからである。
もちろん、重要な韓国経済ネタなのでちゃんとこちらは何が大きなニュースがあれば取り上げていくので安心してほしい。
では、駆け足になったが中央日報のワークアウト申請についてもみていこう。
韓国大手紙の中央日報 資金繰り悪化で再建手続きへ=債権団が同意
資金繰り悪化で債権団が同意、グループ全体が経営危機に直面**
韓国の大手新聞社である 中央日報 が、深刻な資金繰り悪化により ワークアウト(債権団主導の再建手続き) に入ることが正式に決まった。聯合ニュースの報道によれば、主取引銀行であるハナ銀行を含む金融債権団が協議会を開き、ワークアウト開始に同意したという。
ワークアウト開始の条件を満たす
ワークアウトは、金融債権総額の4分の3以上を保有する債権者の同意が必要となる。
今回、債権団は 75%以上の同意を示し、手続き開始が確定した 。中央日報は先月19日、資金繰りの悪化を理由にハナ銀行へワークアウト申請を行っていた。背景には、中央グループ全体の経営危機があるとされる。
大事なのは中央日報の身売り
ヤフーニュースに書いてないのだが、今回のワークアウト申請が通った本当の理由は中央日報の「身売り」である。昨日、動画配信でそこを付け足したのだが、もう一度、掲載しておこう。
最も注目されるのは経営権の売却だ。
ワークアウトが開始され経営権売却が
現実化すれば、創業家から第三者へ
経営権が移るという、韓国メディア業界で
前例のない事態が起こり得る。
つまり、中央日報は既存の創業家から完全に売られたのだ。これはある意味、ワークアウト申請可否よりも興味深い。なぜなら、これから中央日報は買われる企業次第で、その企業に逆らえなくなるから。報道の中立性?なにそれ?美味しいのですか状態になる。
一番良いのは財閥グループのどこかに拾われることだ。まだ、韓国内の企業だし救いはある。だが、中央日報の経営権はわりとどこも欲しがる。中央日報はいらないけど経営権があれば色々できるからだ。
だから、今回、1300億円の負債という本来は通るはずがないワークアウト申請が通ったのは中央日報の経営権が欲しい希望者が複数存在したため、債権団は“売却による回収”を選んだことになる。
このまま清算処理しても1300億円の貸し倒れ引当金が増えるだけ。なら、買ってくれる企業に売った方がましだ。普通の創業者は絶対に売らないんですが、もう、売るしかなかったんだよ。
外資が直接買う心配はないが、間接的になら十分にあり得る
しかし、こうなってくるとこの身売りの話はただの身内ネタでは過ぎなくなる。もっとグローバルな話。世界最大級の投資ファンドは韓国財閥株を大量保有しており、その構造上、新聞社の間接支配は十分に起こり得る。後、中国系のファンドなどに買われた場合、どうするのか。
もちろん、韓国政府が外資に買わせることはおそらくない。だから、直接的に外資を経営権を持つことは考えにくいが、間接的なら十分にあり得る。
理由は簡単だ。そもそも韓国はサムスン電子やSKハイニックスといった一部の企業しか儲かっていない。だから、そこに財閥が名乗り出たら株主からすれば、赤字の企業をかってどうするんだになる。
ワークアウトに中央日報はこれから売上あげて数年後には100億円以上の利益を上乗せするとか書いてあるんだが、そんなことできるなら誰も苦労しねえよ。新聞社もテレビも全てオワコン産業なのだから。
そうなってくると外資は表向きは韓国企業に買わせて、裏でその韓国企業に投資目的だとかいって、株を大量購入して大株主になる。そうなったら、中央日報を意図的に操れるわけだ。
新聞社の経営権で重要になるのをまとめておこうか。
外資が中央日報を操ると何が起きるか
新聞社の経営権は単なる企業資産ではない。
世論形成するのはメディアだし、政治的影響力もある。報道内容で国民感情の誘導する。選挙への影響だって大きい。外交政策の方向性だって、誰を識者に選ぶかで変わってくる。これらを左右する“国家権力”そのもの。
外資が間接的に中央日報を支配すれば──
韓国政府批判の方向性を変えられる。
韓国の外交政策を誘導できる。
韓国の対中・対米姿勢を操作できる。
韓国の選挙に影響を与えられる。
これは 国家安全保障の崩壊 に直結する。
そして、問題は韓国政府にそれを防ぐ手段がない。韓国政府からすれば、そのまま廃刊しておいてくれたほうが何倍もやりやすかった。
しかも、外資が握ろうとしてるのはただのウェブメディアではない。韓国の三大新聞社である「中央日報」なのだ。こちらも必ず毎日チェックしている重要メディア。韓国の政治ニュースの中心。外交論調を決めるメディア」。ただのウェブメディアを買うのと比べものにならないほど利用価値がある。
だが、ワークアウト申請が許可されたので、もう経営権は売ってしまったのだ。後は誰に売るかは知らないが、サイコロは投げられた。次にどの目が出るかを待っている状態である。
だから、これもSKハイニックスのナスダック上場の影響と同じぐらい重要な転換点となった。
最終結論
SKハイニックスのナスダック上場で韓国の資本インフラが揺らぎ、中央日報のワークアウトで韓国の情報インフラが揺らいだ。2026年7月10日、韓国にとって、産業と世論の主導権が同時に外部へ流出する歴史的な転換点となった。
中央日報の経営権はすでに創業家を離れ、サイコロは投げられた。あとは誰がその権力を握るかを待つだけである。
これがどのように韓国経済に影響するかは現時点では判断できないが、確実に言えることは良くはならないてことだ。