中国経済、中国の鉄鋼過剰、世界揺るがす-業界全体が窮地に陥る恐れ

8月辺りから中国経済を悪化を感じさせるニュースが色々と出てきているのだが、やはり、不動産バブル崩壊によっての消費の落ち込みが半端ない。それは庶民はもちろん、富裕層まで財布の紐を閉めている。例えば、上海や北京の年収2億円の外食産業の利益が9割減となっていたりするのは明らかに、高級料理でさえ安くしないと売れないからだ。

そもそも中国は不動産バブル崩壊から深刻なデフレによる未曾有の大不況に突入している。若者の就職難は続き、公務員の給料すら減額されている。地方も金がなく未払いも横行しており、今の中国に良い材料はない。そもそも中国の住宅価格が下がり続けている時点でまだまだ底すら見えない。もっとも住宅価格が上がれば良いという問題でもない。

そして、内需の動向を知るのにもう一つ重要なのは鉄鋼需要である。特に中国メーカーは低価格を武器にして世界中に鉄鋼を売っている。もう、鉄鋼メーカーの首位は中国勢独占している状況だ。そして鉄鋼の過剰生産を行っている。

だが、この過剰生産は中国内需壊滅で余った鉄鋼を世界中で利益度外視で販売するので、世界中の鉄鋼メーカーはその影響を受けて利益を激減させている。韓国のポスコが倒産するとネットで騒がされている理由の一つもである。

鉄鋼需要は内需に大きく左右される。だから、中国の不動産バブル時期には建物を建てる需要が急増して中国の鉄鋼メーカーがどんどん大きくなった。だが、大不況となれば鉄鋼が余ってくる。そもそも中国ではもう住宅が中国人全員が住んでもお釣りが出るぐらいあまっている。今後、中国で建設需要は見込めない。だから鉄鋼が国内では売れない。

では、記事を引用しよう。

上海で建設鋼材の鋼管杭を販売するユィ・ヨンチャン氏の年間売り上げは、数年のうちに4分の3余り減った。「トンネルの先に光が見えない」ほどのひどい市況だという。

チリでは労働組合のリーダー、エクトル・メディナ氏がウアチパト製鉄所で50年近く続けている仕事を失おうとしている。

鉄鋼業界における中国という圧倒的な存在が、彼らが働く業界、ひいては彼らのキャリアと生活を長年にわたって支配してきたことが、あらためて浮き彫りとなっている。

世界2位の経済大国、中国は年10億トン余り、つまり、世界の生産量の半分以上を生産している。しかし今、その中国が揺らいでいる。

中国が鉄鋼のスーパーパワーになる過程で世界の鉄鋼業界に衝撃を与えたように、そのピークからの退潮もまた、それに劣らない激動を招く可能性を秘めている。

中国国内の建設不況が意味しているのは、鉄鋼が多過ぎ、需要が少な過ぎるということだ。各国は中国で余った鉄鋼が自国市場に流れ込み、価格を押し下げ、製鉄所を廃業に追い込み、労働者を失業させるのではと懸念。そうなれば、世界が今直面している経済的課題が一段と悪化することになる。

欧州一の経済大国ドイツは今年、ほとんど成長しない見通しだ。大統領選を11月に控える米国は鉄鋼業界向けの保護措置を強化しているが、ペンシルベニア州のような激戦州における鉄鋼の重要性を考えると、脅威と見なされ得るものなら何であれ、選挙戦の争点となる可能性がある。

「厳しい冬」
 

中国共産党の習近平総書記(国家主席)は、不動産頼みの経済成長から脱却しようとしているが、これは鉄鋼業界にとって重大な意味を持つ。

習氏は今後数十年かけハイテク製造業とグリーンテクノロジーを中国経済の原動力にしたいと考えている。そうした中で、不動産危機によって、鉄鋼需要が急拡大していた長い時代は終わりを告げた。

だが、経済と雇用を支えようとする習指導部が、需要縮小をどのように管理できるかを巡っては大きな疑問が残る。ユィ氏は「価格急落に伴い利益率も小さくなっている。中国の需要は弱い」と述べた。


中国宝武鋼鉄集団の胡望明会長は最近、この課題の深刻さを明確に示した。胡氏は毎年1億3000万トンの鉄鋼を生産する高炉帝国を統括している。この生産量は米国とドイツ、フランスを合わせても及ばない。

警告を発したのは胡氏が初めてではないにせよ、中国の鉄鋼セクターが「厳しい冬」に直面していると述べた同氏の言葉には、中国国内だけでなく世界全体が重みを感じた。

一部省略

生産能力過剰

鉄鋼価格の下落は、鉄鋼を使用する企業にとってはもちろん恩恵だが、生産者への影響は深刻で、利益は圧迫され、製鉄所閉鎖につながる。

一部省略

欧米と中国の間にある現在の貿易摩擦の多くは、21世紀のテクノロジーに集中している。だが、特に米国のラストベルト(さびた工業地帯)や英国の北部イングランドなど歴史ある企業やその周辺に築かれた地域社会に関して言えば、鉄鋼は感情に訴える力を保持している。加えて、国防部門が鉄鋼を必要としていることを踏まえると、鉄鋼は国家安全保障上の問題でもある。

輸出

中国の産業規模は、国内需要の小さな波紋でさえ、それが波及すれば多大なダメージを国外にもたらすことを意味する。1-6月の輸出量は北米の全生産量に匹敵し、今年約1億トンに達する勢いだ。

これは、国内価格の低迷により、一部の鉄鋼を海外に出荷した方が採算が取れるようになったことが要因だ。ベンチマーク製品である熱延コイルは、20年以降で最も安い価格で中国から輸出されている。通常、中国より2、3カ月遅れるグローバル価格もまた、数年来の低水準にある。

スラブや薄板、鉄筋といった鉄鋼の基本的な形態であれば、市場の流動性は高く、新しい買い手を見つけるのは比較的容易だ。欧米が通商防衛が強化する中で、鉄鋼製品は新たな市場に流れ込む。

安価な輸入品の増加に悩まされているのが中南米で、他地域が極めて高い関税を中国製品に課していることが背景だ。今世紀の初めごろ、中国はこの地域に年間わずか8万500トンの鉄鋼を出荷していただけだったが、昨年は1000万トンに近づいた。

コロンビアの鉄鋼業界団体を率いるダニエル・レイ氏は「日に日に状況が危機的になっている。われわれは無防備な状態だ」と語った。同団体は政府に保護措置を講じるよう求めている。

バイデン米大統領は今年、全米鉄鋼労働組合(USW)で演説し、中国の鉄鋼とアルミニウムに高関税をかけるよう呼びかけた。同大統領の最高経済顧問の一人であるブレイナード国家経済会議(NEC)委員長は当時、中国の「政策主導による過剰生産能力は、米国の鉄鋼・アルミニウム産業の将来に深刻なリスクをもたらす」と述べた。

米国はまた、メキシコのような第三国を通じて中国から出荷される鉄鋼を抑制する対策も取っている。

ジレンマ
 

米国とその同盟国が鉄鋼セクターを巡り中国勢にどう対抗するかという問題は、緊張に満ちている。例えば日本製鉄によるUSスチール買収計画の支持者は、競争に勝てる規模の会社を誕生させることができると論じるが、トランプ、バイデン両氏を含め米国の政治家は反対している。

中国の鉄鋼問題は、鉄鋼の主要原料である鉄鉱石にも影響が及ぶ。鉄鉱石は今年最もパフォーマンスの悪い商品の一つで、16日終了週だけで価格が10%近く急落した。

中国政府は今、ジレンマに直面している。当局は鉄鋼業界の再編を望んでいるかもしれないが、実際にそう動けば経済の不確実性が高まっているタイミングで、成長にひずみが生じ、雇用が脅かされることになる。

需要低迷と過剰生産能力により、赤字企業が急増しており、6月時点で関連する赤字企業は2300社を超え、昨年末から3分の1増加した。

鉄鋼の過剰生産に対処する最新の取り組みは20年代に入り、「脱炭素」の枠組みの中で開始された。20年に生産量が過去最高の10億5000万トンに膨れ上がった後、中国政府は公害を引き起こす鉄鋼業界の炭素排出を抑制するため、前年以下という上限を課した。この取り組みは漸進的なもので、おおむね成功を収めているが、生産量の大幅な削減には至っていない。

今のような鉄鋼生産レベルを維持できているのは、主に輸出という開放弁のおかげだ。調査会社カラニッシュ・コモディティーズによると、国内需要は20年以降10%余り減少している。世界鉄鋼協会は今年4月、中国は鉄鋼需要のピークに達したもようで、中期的にはさらに減少し得るとの見通しを示した。

上海スチールホームのウー氏は「1社が損をするのは普通だが、業界全体が損をするのは異常だ。政府の政策調整が必要だ。市場に頼っているだけでは、業界全体が非常に悲惨なことになる」との見方を示した。

中国の鉄鋼過剰、世界揺るがす-業界全体が窮地に陥る恐れ – Bloomberg

この記事を読んで衝撃を受けた人はわりと多いんじゃないだろうか。例えばここだ。

胡氏は毎年1億3000万トンの鉄鋼を生産する高炉帝国を統括している。この生産量は米国とドイツ、フランスを合わせても及ばない。

この中国企業一社で米国、ドイツ、フランス全体の生産量を超えてるのだ。だが、それほどの規模の鉄鋼生産量で過剰生産や輸出をすれば鉄鋼価格が下がるのは当然だ。需要と供給のバランスが崩壊するからだ。

しかも、そのバランス崩壊が世界中の鉄鋼価格を引き下げる。もちろん、他国も黙っていない。中国の過剰輸出を受けて追加関税を引き上げてなんとか自国の鉄鋼メーカーを守ろうとしている。だが、関税を引き上げても中国の鉄鋼が裏ではいってくるのを防ぐのは難しい。そもそも鉄鋼価格の平均が下がるのだから、過剰輸出を食い止めるだけでは鉄鋼メーカーは救えない。

中国の鉄鋼メーカーがこのまま事業縮小するのは自業自得だが、それに付き合わされる世界の鉄鋼メーカーは再編を余儀なくされている。それが日本製鉄とUSスチール買収計画にも繋がるわけだ。まあ、アメリカのリーダーは反対しているので交渉は難航している。

だが、中国鉄鋼メーカーがどんどん沈んでいるのは見ての通り。業界は再編されていくだろうが、こちらが注目なのはポスコ倒産まで行くかはどうかはどうなんだ。

ポスコが倒産すればその関連で589万人が解雇されるといわれるが、実際、その可能性は大いにあるんだよな。なぜなら、韓国のポスコは円安でも苦しめられている。安い価格では中国鉄鋼に完全敗北。高価格帯は円安効果で日本の鉄鋼メーカーが独占。どう考えてもポスコが生き残る術がない。

しかも、中国内の需要低迷と過剰生産能力により、赤字企業が急増しており、6月時点で関連する中国の赤字企業は2300社を超え、昨年末から3分の1増加した。

中国政府の輸出拡大で成長率を引き上げる計画が裏目に出ている。このままだと内需がますます低迷するてことだ。

中国経済、中国の鉄鋼過剰、世界揺るがす-業界全体が窮地に陥る恐れ」への6件のフィードバック

  1. もう、40年前になるか。上海の浦東地区開発がはじまったころ東方明珠塔や上海大橋、巨大ビル群が建設されたのは。旧、国際空港の虹橋空港に行く高速道路の道すがら遠目にみえる高層ビル群は新宿の新東京国際ビルを凌駕していた。やがて、地下鉄が開通し空港までは地下鉄で行ける様になった。新空港の浦東空港からはリニアモーターまで走るようになり中国の発展を印象付けた。だけど無理で過剰な開発は中国自身を傷つけた。おれは上海の森ビルにもいったけど、まさに雲のなかを突き抜けるような感覚だった。まちには歩く歩道がありさながら未来都市を連想させた。奇抜な形のビルが建ち並び世界の工場と云われ発展したけれど賃金が上昇し、旨味はなくなった。段ボール肉まんで信頼をなくし、廃油使用が輪をかけた。マクドナルドで緑がかかった肉を使い、農薬過剰で危険を認識された。多くの会社が倒産し、食物の信用をうしなった。最近習近平が姿を見せない。どうかしたのだろうか?

  2. どうしたのだろうか。嫁なし、子なし、カネなし、信用なし、女ほしい、自慢話多しの零戦搭乗員のじい様は?今年は一度も登場しない。塀の中かもしれない。マッサージ屋の受付嬢ちゃんにちょっかい出してつかまったか?塀の中では携帯はもてないだろうしなぁ。台湾人の女店長にサイトを登録してもらったのにな。

  3. 兵庫県知事の辞職勧告決議案が全会一致で可決することになった。維新の決定が遅くなったけど橋下府政の貯金を完全に使いはたした感がある。人が二人もなくなっているのだ。この斎藤元彦知事は間接殺人の疑いがある。亡くなった職員にも家族がいたはずだ。パワハラ殺人だ。こんな人間を推挙した維新には責任がある。馬場代表以下藤田幹事長、吉村洋文共同代表にも責任がある。橋元徹にも指導監督不足がある。おれは二度と維新は支持しない。馬場になってから、、いや以前から酷い人間の集まりであった。

  4. おれは若いころ、小田原のパブで国会議員からボトルを1本貰ったことがある。いまなら公職選挙法でアウトだろう。彼は民主党の大臣だった。帰りしなにボトルを飲めと言われて、誰か知らないで貰った。あとでマスターに教えてもらい初めて彼の素性をしった。おおらかな時代だった。テーブルが隣だけの若者の話に耳を傾けてくれた。いまは、酷い奴が議員を勤めている。裏金やら不倫やら、脱税やらで姦しい。

  5. さっき、中国の地下鉄開通に触れた。で、補足する。凄く広いホールでポスター一つない無機質な空間なのだ。建物のスケールは大きい。入り口は普通なんだけど中は凄く広い。金属探知機があって、さながら空港並みのセキュリティだった。バスなんか連結で日本の倍はある。上海はもとより北京なんか京都みたいに重厚だ。北京は王者の風格。上海は対抗心が強い。

  6. 蓮舫を見なくなった。批判のみの人だからいなくても、なんの痛痒も、感じないがこのままフェードアウトしてくれれはありがたい。詰問調の話など聞きたくはない。復活はわからんがメッキが剥げてどうだろうか。帰化人や外国勢力への、選挙権はやめてもらいたい。選挙権は日本人のものだ。

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