希望公約:ユリノミクスで消費増税凍結、内部留保課税検討も…そもそも内部留保とは何?
記事要約:朝に取り上げた希望の党の選挙公約に関して読者様が内部留保について気になったようでコメントで残してくれた。コメント欄で解説しても良かったのだが、ちょうど、経済ネタということで記事で解説しようと思う。まずは読者様のコメントを抜き出してみよう。
>そこで、管理人さんに窺いたいのが「内部留保」のことなのですが……これって、現実的なのでしょうか?貯え、と言えば僕みたいな経済素人ならなおのこと、イメージとしてお金を想像してしまうのですが、内部留保のほとんどは、土地建物はじめとした、それこそ流動性の低い資産である、という話も聞きます。そもそもが、「市民」との対立項に「企業」を立てる考え方が嫌いなのではありますが……もしよろしければ、ご見識を伺いたく存じます。
日本の企業に300兆円もの内部留保があるので、それに課税すれば良いというのが希望の党の見解だ。別記事でもう少し確認しておこう。
>「300兆円もの大企業の内部留保への課税」なども検討して、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の改善を図るとした。
経済に詳しくなければ「内部留保」は企業に余っているお金だと勘違いしているかもしれない。では、内部留保とは何かを解説する。それから質問に答えることにする。
■内部留保とは何か
1.内部留保は株主に還元されるべきお金
2.内部留保なんていう言葉は会計には存在しない。正しくは利益剰余金
3.内部留保は株主のお金なので勝手に使えない←投資家から猛反対される
■内部留保は株主に還元されるべきお金
内部留保の意味を調べると、企業が経済活動を通して獲得した利益のうち、企業内部保留され蓄積された部分のことである。 社内留保、社内分配とも呼ばれることもあるそうだ。
これだけ見れば会社や企業のお金のように見えるのだが、まず、第一前提に「株式会社」と付く企業の全ては「株主の物」であるということ。ええ?驚くかも知れないが、あくまでも株式会社というものは株主から委託を受けた経営者が事業を行う、利益を株主に配当する。
だから、仮に数億円の内部留保があったとすれば、それは本来、株主が得るはずの「配当」なのだ。では、なぜ株主は内部留保を認めているのか。それは投資の問題である。利益のほとんど還元してしまったら、企業が次の事業に投資ができない。投資した方がさらに株主に利益が増大するかもしれない。といったことや、ある程度の資産がなければ、会社がピンチの時に困るというのもある。だから、株主はある程度の企業の内部留保を認めている。もっと還元すべきという意見はたくさんあるが。
■内部留保なんていう言葉は会計には存在しない。正しくは利益剰余金
会計というか簿記の知識があれば、内部留保は損益計算書や貸借対照表にないことを知っているわけだが、会計でいえば利益剰余金となる。そして、利益剰余金は「株主資本」に分類される。
株主資本とは、資本金・資本剰余金・利益剰余金・自己株式などから構成されている。先ほど、株式会社というものが株主の物だという説明もこれでわかるだろう。だから、次の話になるわけだ。
■内部留保は株主のお金なので勝手に使えない←投資家から猛反対される
利益剰余金は株主資本なので、株主の許可なくは使えない。大きな投資をするときは承認を得て使うことはある。因みに勝手に使えば株主訴訟を起こされる恐れもある。
実はこれは数年ほど前に韓国でも企業の内部留保に課税をかけるという話しがあった。サムスン電子が蓄えている内部留保がばく大だったからだ。結果、サムスン電子が大規模な投資を行うようになったと。税金払うより、投資したほうがましだと。内部留保の説明はこれぐらいでいいだろうか。
さて、質問の回答だが、内部留保は株主のものなのでそこに税金をかければ投資家は希望の党を応援することはないだろう。さらに内部留保を減らして投資を促すという政策なら悪くはないとおもうが、実はこれ「二重課税」である。なぜなら、企業は税金を払った後の利益剰余金が内部留保なのだから、そこに課税すればもう一度税金を取ることになる。
二重課税問題をどうするか。管理人としては内部留保のほとんど現金預金ということで保守的に経営する企業に投資を促す方法として課税を検討しているならまだいいのだが、それを財源というなら、かなりの税収入を見込んでいるわけだ。
希望の党はまず二重課税問題をどうするかを説明する必要があるし、どの程度の税率を考えているかも明らかにしないといけない。実際、300兆円といってもそれが全て現金預金でもないだろう。もっとも、大企業が反対するので現実的ではないだろう。
>自民党の片山さつき政調会長代理は6日、ブルームバーグのインタビューで、希望の党の公約は消費増税凍結という国民にとってインパクトの強い項目はあるものの、これまでいろいろな党が掲げてきた政策を「切って貼って配置しただけに見える」と指摘。「全体の一貫性が全然見えない」と批判した。
管理人が思ったことをそのまま片山さつき氏が述べているな。全体の一貫性が全く見えないんだよな。保守的であるのは歓迎なのだが、内部留保に課税するというのは様々な問題があるということを知らないで語っているなら、経済素人だろうな。
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〔北朝鮮、韓国、朝鮮半島有事〕のまとめ
希望公約:ユリノミクスで消費増税凍結、内部留保課税検討も…
希望の党(代表・小池百合子東京都知事)は6日、衆院選の公約を発表した。安倍晋三政権のアベノミクスは民間活力を引き出す規制改革が不十分だとして、新たな経済政策「ユリノミクス」を提唱。2019年10月からの税率10%への消費増税凍結や大企業を対象にした内部留保課税の検討も明記した。
「ユリノミクス」については「金融緩和と財政出動に過度に依存せず、民間の活力を引き出す」と説明。日本銀行の金融政策については「大規模金融緩和は当面維持した上、円滑な出口戦略を政府日銀一体となって模索する」と記載した。
公約は、株高・円安・失業率の低下などアベノミクスの成果を認めたものの、「一般国民に好景気の実感はない」と強調した。消費増税は「一度立ち止まって考えるべきだ」として凍結する方針を明記し、実行する前に歳出削減、国有資産売却を徹底すべきだとの考えも示した。「300兆円もの大企業の内部留保への課税」なども検討して、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の改善を図るとした。
慶応大学大学院の岸博幸教授は希望の党が消費増税凍結を公約に掲げたことについて「それ自体は悪くないと思う」としながらも、景気回復後の再増税時期などについて「何も言っていない」と指摘。企業経営者の日本経済に対する先行き懸念を払しょくしないままで内部留保課税を訴えても、「それで本当に問題が解決できるかというと多くの経済学者はた多分反対だ」と批判した。
希望の党の金融政策に関するエコノミストの反応はこちら
政府系金融機関・官民ファンドの廃止
小池代表は会見で、公約には「他党がこれまで打ち出せなかったこと、 タブーに挑戦するぐらい思い切った案」を盛り込んだと語った。自身の衆院選出馬に関しては国政と地方の連携を進める上で「私が都政に身を置いているのはプラスの効果がある」と改めて否定した。
民間主導の事業再編や起業を促進するため、政府系金融機関・官民ファンドの「可及的速やかな廃止」も訴え、事業開始の元手となる資金「シードマネー」の提供を誘発する制度改革を進めて国内の独立系企業再生ファンドやベンチャーキャピタルを育成する方針も打ち出した。
2030年までの「原発ゼロ」を目指し、再生可能エネルギーの比率を30%まで向上させる方針も明記。「原発ゼロ」をいったん政府が決めた場合は政権交代によって変わることがないよう憲法に明記することを目指すとした。
原発ゼロなど希望の党のスローガンに関する記事はこちら
改憲については「自衛隊の存在を含め、時代に合った憲法のあり方」を議論すると提唱。地方自治の「分権」の考え方を明記し、「課税自主権」「財政自主権」についても規定する案を唱えた。
北朝鮮への対応など安全保障政策については「党派を超えて取り組む」とし、集団的自衛権の行使を条件付きで認める現行の安全保障法制も「憲法にのっとり適切に運用」すると明記した。
自民党の片山さつき政調会長代理は6日、ブルームバーグのインタビューで、希望の党の公約は消費増税凍結という国民にとってインパクトの強い項目はあるものの、これまでいろいろな党が掲げてきた政策を「切って貼って配置しただけに見える」と指摘。「全体の一貫性が全然見えない」と批判した。
(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-10-06/OXCSIY6JIJUQ01)