日別アーカイブ: 2024年7月13日

サムスン電子がHBMの好況に備えられない理由

韓国 今、韓国経済で輸出が好調な理由は生成AI特需による半導体が好調なことは誰の目でも明らかなのだが、SKハイニックスはともかくとしてサムスン電子は喜んでいられない状況だったりする。一体、それはどうしてなのか。それをこちらは何度も述べている。サムスン電子はSKハイニックスやマイクロンが合格しているエヌビディアのテストに未だに合格できていない。

実はこれが致命的なのだ。生成AI特需というのは全ての半導体に起きているわけではない。確かに半導体価格は企業の減産によって回復してきているのはトレンドフォースの価格動向を見ていればわかる。だが、生成AIに使う半導体というのはHBMである。この先、需要が増えるのはHBMであって、他の半導体は不況からサイクルが回復しているに過ぎない。

だから、サムスン電子が4月~6月に利益を1兆円稼いだとか述べているが、サムスン電子が倒産危機である事実は何も変わらない。なぜなら技術というのは向上させたり、進化させることが将来において必要だからだ。どういう意味なのか。簡単な事例をあげよう。

こちらはゲーム業界に詳しいので、ゲーム業界で見ていこうか。例えば、今、ゲーム業界ではスクエニ大きな損失が話題となり、ドラクエのキャラクターやモンスターデザインを手がけていた鳥山あきら氏が亡くなられた不運も重なり、ドラクエシリーズの先行きは危ぶまれている。実際、スクエニが大きく失敗したタイトルは莫大な開発費をかけてもそれを回収するのが難しいFFシリーズな気がしないでもないが、スクエニの場合、スマホゲームでも大きく失敗している。

いわゆる最初からユーザーにガチャで課金させて、人気がなくなったらてこ入れもせずにサービス終了させるといったものだ。これは極めて悪質であって弁護のしようがない。それをスクエニは数多くのタイトルでやってきた。企業からすれば人気が無くなる前に開発費の元を取る姿勢は当然かもしれないが、そういう企業の態度はユーザーの信頼性を著しく損じることを理解してなかった。

つまり、課金しながら楽しんでいたユーザーはスクエニの課金商法でどうせ課金しても数年後にタイトル終了するんでしょう?じゃあ、課金しなくてもいいなという発想になったのだ。実際、スクエニに限らずスマホゲームはこのようなタイトルが多い。

スクエニは大きな勘違いをしていた。今、そのスマホタイトルで開発費の元はとれたし、次も同じことをすればいい。しかし、ユーザーは同じようなやり方に苛立ち、スクエニそのものに過去の信頼がなくなった。それがあの大きな特別損失となってかえってきた。

スクエニはゲーム業界として超大手であるのだが、その内情は崖っぷちである。なぜなら、ユーザーから信頼が以前のようにスクエニが作るゲームなら面白いに決まっているがないからだ。ファミ通の攻略本が大丈夫でなくなったことも同じ理由だよな。結局、メーカーというのは信頼やブランド価値が重要であって、一度、離れたユーザーはかえってこない。信用がなくなればあるとき、それがソフトの売上本数の数字となってかえってくる。いわゆるキラータイトルの爆死というやつだ。

今、突っ込んできたスクエニの話は、実はサムスン電子にそのまま当てはまることが多い。ゲームと半導体のジャンルは異なるが、サムスン電子がHBMでエヌビディアのテストにいまだに合格できないというのは韓国の半導体技術に多くの投資家が疑問視している状態てことだ。

だから、今、1兆円稼ごうが、数年後にはサムスン電子の半導体が見向きもされずに大赤字になっている可能性だってあるのだ。そんなの信じられないと思うかもしれない。しかし、現実においてサムスン電子危機であって、崖っぷちであることにかわりない。さらにいえば、半導体はもう、世界中の国家や企業から注目されているので、韓国だけの独壇場ではなくなってきている。

例えばこんなニュースがある。それは大手半導体材料を手がける「レゾナック」を中心に日米の材料・装置などの企業10社による次世代半導体パッケージのコンソーシアム「US-JOINT」を米シリコンバレーに設立すると発表した。

では、記事を引用しよう。

(ブルームバーグ): 半導体材料を手がけるレゾナック・ホールディングスは、日米の材料・装置などの企業10社による次世代半導体パッケージのコンソーシアム「US-JOINT」を米シリコンバレーに設立すると発表した。2025年の稼働開始を目標に、今年からクリーンルームや装置導入などの準備を始める。

  コンソーシアムには事業会社のレゾナックのほかTOWA、東京応化工業、アルバック、メックや米半導体製造装置メーカーのKLAなどが参加する。シリコンバレーの研究開発拠点を活用し、半導体パッケージの最新コンセプトの検証を行っていくという。

  レゾナックの阿部秀則業務執行役は会見で、「新しい技術ができたところに最初に採用された材料がデファクトスタンダードになっていくケースが多い」として、最先端の半導体設計が行われているシリコンバレーに拠点を構えることが重要だと説明。一社単独では検証に限界がある中、ベストなソリューションを短期間で導き出すにはオープンイノベーションが必要になると述べた。

  半導体の進化を巡っては、前工程の微細化が経済的要因などで限界に近づく中、後工程のパッケージングの技術革新が注目されている。

次世代半導体の日米共同開発拠点を米・シリコンバレーに開設へ 生成AI・自動運転などの登場で需要高まる 2025年の稼働を予定 (msn.com)

このように生成AI特需で半導体需要が高まってくると、他の半導体関連メーカーもどんどんその開発に本腰を入れていく。そうやって世界の技術がどんどん進化していく。だが、サムスン電子はその最先端であるHBMにおける最先端技術がない。今、サムスン電子はエヌビディアに放出してしまった551人の半導体人材に対して相当、悔やんでいるだろうな。技術者をしっかり繋ぎ止めるのも重要なのに、サムスン電子は一時の赤字で半導体技術者に対して酷い扱いをした。その結果、サムスン電子の労組は社員の20%を越える3万人以上に膨らみ、その労組は無期限ストに突入した。

サムスン電子は労働組合と向かいあうつもりはないようだが、実際はそれも悪手である。運営陣の工場生産に支障がないとかそういう問題ですらない。社員がストライキして不平を訴えてるのに何も対応しないのをみて、他の社員がどう思うかなんて一目瞭然なんだよな。こういうのは社員に対するサムスン電子の信頼という意味でじわじわと効いてくる。赤字なれば簡単に切り捨てられるような会社に誰が働きたいのかだ。

エヌビディアのテストに合格できないことがそんなに致命的なことなのか。そう思うかもしれないがメチャクチャ致命的なのだ。なぜなら、今、合格できないなら数年後にはさらにSKハイニックスやマイクロンが新製品を開発するのでどんどん遅れてしまうのだ。そもそも、既に数年以上、遅れているんだよな。なぜなら、サムスン電子はスタートラインにすら立っていない。

では、サムスン電子がどれだけ崖っぷちであるかわかる記事を引用しよう。

■サムスン電子、2019年にHBM組織を縮小

しかし、サムスン電子は準備ができていない。サムスン電子は2019年にHBMの開発組織を縮小した。HBMは性能が優れているが高価だ。そのため、特にHBM市場が大きくなるとは考えなかった。後発走者であるSKハイニックスは、それでもHBMは頑張って売ろうと生産していたが、1位のサムスン電子は小さい市場に関心を持たなかった。ところが、AI半導体市場が突然拡大してHBMの需要が急増すると、SKハイニックスは文字通り大当たりとなった。HBM開発に投資しなかったサムスン電子は当惑するしかなかった。

問題は時代の変化を読めなかった5年前の判断ではない。市場が確認されてから1年以上たっても、他でもないサムスン電子が一番得意とするDRAM分野で品質を完成させられなかったことが最大の問題だ。サムスン電子はすべてのライバルが恐れる動きの速い追撃者だった。アップルがiPhoneを世に出したとき、最初はOMNIAのように不十分な製品であってもすぐに発売して対応し、最終的にはギャラクシーシリーズで世界出荷数1位を勝ち取った企業がサムスン電子だ。

エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは2024年6月4日、台北で「サムスン電子のHBM半導体が搭載されるだろう」と述べたが、これは「頑張って品質テストを通過しろ」という屈辱的な意味が込められている/REUTERS

 動きの速い追撃者は偶然になれるものではない。どうなるのか分からない未来に備えるために、様々な先行技術を事前に十分に深く研究し、方向が決まれば誰よりも速く走っていかなければならない。HBMについては、サムスン電子にはそのような姿はみられない。

 先日、エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、台北のグランドハイライホテルで開かれた記者懇談会で「サムスン電子はいかなる認証テストにも失敗したことがなく、HBM半導体が搭載されるだろう」と述べた。これに先立ちロイターは、サムスン電子のHBMがエヌビディアの品質テストで脱落したと報じた。サムスン電子は「順調に」進んでいると反論したが、市場はサムスン電子の能力を疑っている。そうしたなか、エヌビディアのCEOがテスト失敗説を否定したのだ。

 発言後、サムスン電子の株価は3%以上急騰した。ジェンスン・フアン氏の発言を冷静に聞いてみると、協力業者への「空世辞」に近い。フアン氏は「サムスン電子、SKハイニックス、マイクロンの3社すべてが、HBMをわれわれに提供するだろう」とし、「サムスンとの作業はうまく進んでいるが、忍耐心を持たなければならない」と付け加えた。

 エヌビディアの立場としては、SKハイニックスが独占的にHBMを納品する現在の構図は望ましくない。複数の企業からHBMを供給されてこそ、供給量を増やし価格も下げられる。フアン氏の発言は、サムスン電子のHBMの品質が納品可能なくらいに上がったということではなく、頑張って品質テストを通過しろという意味だ。屈辱的だ。

■パッケージングの問題なのか、DRAM設計問題なのか

 サムスン電子の半導体を総括するDS(デバイスソリューション)部門のトップが交替させられた。DRAM事業を総括して2017年にサムソンSDIに異動し、その後は実質的には経営の第一線から退いた“オールドボーイ”のチョン・ヨンヒョン副会長が復帰した。サムスン電子のHBMのどのような部分がエヌビディアの要求を満たせていないのかについては、はっきりとは分からない。DRAMを積み上げるパッケージングに問題があるという説があり、一部からは、HBMを構成するサムスン電子のDRAM自体の問題だという見方も出ている。

 半導体業界の関係者は「一部のパッケージングの問題であれば、改善にこれほどまで長くはかからない」として、「DRAMの設計そのものの問題であれば、思ったより改善が難しい可能性もある」と述べた。サムスン電子がDRAMをうまく作れないとはあまり信じられない。チョン・ヨンヒョン副会長は内部的に「DRAM設計の技術力を引き上げなければならない」と強調しているという。雰囲気は尋常ではない。

 サムスン電子の危機は、最も根幹となる技術力を蓄積するプロセスとエネルギーが消えたという事実に起因する。完璧ではないということをこっそり伏せていた安易さが積もり積もって、文化になってしまったのが問題だ。

2024年第1四半期にサムスン電子は6兆6000億ウォン(約7700億円)の営業利益を計上し、完全にメモリーの春を迎えた。2024年のサムスン電子の実績は非常に良好だろう。しかし2、3年後には、狭められたり逆転されるかもしれない技術力の差が、サムスン電子を根幹から揺さぶるだろう。イ・ゴンヒ会長の新経営宣言の31年後、息子のイ・ジェヨン会長は父親と同じような動きをしている。表面的な行動をまねるのではなく、サムスン電子の現在に関する危機意識を明確に認知した動きになることを期待する。そうしなければならない。

サムスン電子がHBMの好況に備えられない理由 : 経済 : ハンギョレ新聞 (hani.co.kr)

これを読めば答えが書いてある。サムスン電子には最先端の半導体技術がない。昔はあったかもしれない技術はとっくに枯れていて、それを利用してきただけに過ぎない。スクエニが過去の遺産で食べてるようなものだ。

そして、技術開発より優先したのが大量生産だった。薄利多売をするために世界中に工場を作った。しかし、薄利多売を継続するにしても半導体の技術なくしてはどうしようもないのだ。

問題は時代の変化を読めなかった5年前の判断ではない。市場が確認されてから1年以上たっても、他でもないサムスン電子が一番得意とするDRAM分野で品質を完成させられなかったことが最大の問題だ。

これも前々からいわれていたことだ。サムスン電子は歩留率が他社に比べて圧倒的に悪い。それを数で補っているに過ぎないと。問題は高品質帯になるとその価格が跳ね上がるので、歩留率が悪いならそれが品質や信頼にどんどん影響してくることだ。

なんか凄いこと書いてあるように見えるが、ぱくるにはくれるだけの技術が無いと駄目ということだ。つまり、今のサムスン電子はパクれる技術すらHBMの半導体にないてことだ。

2024年第1四半期にサムスン電子は6兆6000億ウォン(約7700億円)の営業利益を計上し、完全にメモリーの春を迎えた。2024年のサムスン電子の実績は非常に良好だろう。しかし2、3年後には、狭められたり逆転されるかもしれない技術力の差が、サムスン電子を根幹から揺さぶるだろう。

サムスン電子がエヌビディアのテストにこのまま合格できないなら、このままサムスン電子が地に落ちて倒産することは十分、考えられる。それだけ今のサムスン電子は崖っぷちであるのだ。今、好調だから未来もそうとは考えて投資するとサムスン電子の株価が突然、暴落して大損失を被ることになるだろう。