韓国経済 前回、韓国の西江大学経済学教授のイ・ユンス氏が韓銀のインフレ報告書巡っての物議について取り上げた。今回はその続きである。まさかの前後編となっているが、わりと後編も興味深い内容となっているのでしっかりと確認しておきたい。
あと、韓国経済学者であるがイ・ユンス氏の経歴は凄い。国際通貨基金(IMF)、世界銀行、アジア開発銀行のコンサルタント、韓国銀行、金融監督院の顧問を歴任している。つまり、世界的な機関の顧問として活躍できる経済学者の一人である。確かにまともな論理をしているからな。
後編の内容を簡単に述べておくと安い光熱費は国民にとって良いことなのか?農産物の輸入を増やせば、残っていた国内の農業基盤が崩れるんじゃないの?「物価の歪みは、利上げで捕まえられるものではない」などである。
では、早速見ていこうか。
◇ 価格水準を下げるためのソリューション
– 安い光熱費は国民にとって良いことではないでしょうか?
「光熱費の安さは金持ちのためのもので、政府や政界の『庶民のためのもの』というコスプレとは違います。電気料金の安さの恩恵を受けるのは、低所得者よりも所得の高い人です。研究者らは、上位20%の所得者にとっての光熱費削減の恩恵は、下位20%のそれよりもほぼ2倍大きいことを発見した。
エアコンや電子機器を多く使用する富裕層は、浪費し、より多くの利益を得る可能性が高くなります。効率よく生産できて、価格を抑えられるなら、それでいいんです。しかし、現在のアプローチは持続可能ではありません。
国有企業は価格を低く抑えるために巨額の借金を負い、それが国の財政を圧迫しています。とりあえず我慢してるけど、いつまで借金を残せるかが問題だ。また、現在の公共料金の引き下げの負担は、後で借金を返済しなければならない将来の世代が負担するという意味で、世代間の公平性の問題もあります。また、債券利回りの上昇を促す」と述べた。
「借金で公共料金が下がった、今の世代は恩恵を享受するが、負担は子どもの世代が負担する」 (chosun.com)
ついに韓国政府の経済対策を根底的から覆す内容へと踏み切った。韓国の光熱費の安さは庶民のためといいながら、実は金持ち優遇策であるということ。ええ?光熱費が安いと庶民が助かるという「思い込み」をバッサリ切ってくれる。
研究者らは、上位20%の所得者にとっての光熱費削減の恩恵は、下位20%のそれよりもほぼ2倍大きいことを発見した。
韓国経済が急成長してきた要因で、不当に安い電気代というのはあげられるわけだが、それは明らかに金持ち優遇であり、それを続ければ続けるほど経済の格差が増加するてことだ。韓国政府は庶民のために、票欲しさに光熱費を安くで抑えていることが結局、金持ちを優遇して庶民を苦しめる。しかも、その安い公共料金で天文学的な赤字を膨れ上がらせて、将来の世代への大きな負担となる。結局、これもこちらが述べている将来におけるリソースの食い潰しなのだ。
韓国という国はリソースを他国より劇的な速度で使いブーストして経済成長してきた。しかし、それは持続可能な成長ではない。だから、リソースが尽きていけば自然と韓国経済の成長は低成長となり、最後は滅びの運命を迎えるということ。
韓国のユン氏は国民のためといいながら、高物価だからと公共料金を引き上げないでここまでやってきた。しかし、電気やガスを高くで買って、安くで売るという無能の対策は、公共料金のさらなる値上げ地獄を産みだして、結局は国民の生活困窮へと導く。
本当に、国民のためにやることは今が、苦しくても電気料金やガス料金を適正に価格に引き上げて赤字を解消することだった。でも、韓国政府はそれを一切、無視した。ユン氏が上手くやっているなんていう評価がたまにあるが、ほとんどの経済対策が間違っていることが経済学者が突っ込んだことになる。
実際、上手くできてないからハイパーインフレとなり、庶民は生活困窮している。だが、これも序の口だ。公共料金の負債は消えてくれない。いずれ国民がそれを背負うのだ。
では、次に行こうか。
– 農産物の輸入を増やせば、残っていた国内の農業基盤が崩れるんじゃないの?
「農産物の市場の大半が開放されているのに、特に保護されているのは特定の品目だけなのか。2000年代初頭に自由貿易協定(FTA)が締結されると、輸入果物が増加し、果物価格の変動が小さくなりました。葡萄の輸入開始以降、葡萄農家の収入は停滞しているが、シャインマスケット銃などの高級品により所得が増加した経験がある。農業従事者の保護と食料安全保障は重要な課題です。しかし、安価な輸入品から大多数の消費者が享受する利益のバランスを取る必要もあります。
– 流通コストも高い。
「農産物の消費者価格に対する流通コストは、1999年の39%から2022年には50%に上昇しています。農産物の高騰が農家を煽っているのではなく、流通業者を煽っているのかどうかを考える必要があります。衣料品の価格が高いことも、衣料品の流通が百貨店などの高コストの流通チャネルに偏っている理由です。
– 経済論理はあまりうまく機能しない。
「消費者は、価格が少し上がったからといって、政府や政界に抗議しようとはしません。しかし、農家などは輸入の拡大に非常に敏感です。政治家が票を投じる人や迷惑をかける人の声に耳を傾ける「規制捕捉」のようなものがある。レギュラトリー・キャプチャーとは、利益団体の要請による規制の創設である。
– それでも解決策が見つかった場合。
「供給サイドを改善する必要があります。まずは衣料品や食料品の流通コストを下げる努力が必要になりそうだ。住宅費は、人々が望む住宅の供給を増やすことによって下げる必要があります。物価上昇率が2%台で落ち着いてきた今、公共料金の正常化を進める必要がある」と述べました。
ニュースは以上。
農作物が高い理由は農家だけではなく、流通コストが高いのも問題だと。つまり、流通業者がコストを高くしている原因があると。それについてはなんともいえないな。流通業者の裏の情報などはなかなかニュースにならないからな。
それで保留にしておくが、政治家が票を投じる人や迷惑をかける人の声に耳を傾ける「規制捕捉」のようなものがある。レギュラトリー・キャプチャーとは、利益団体の要請による規制の創設である。
つまり、消費者は多少、値上げしたところで政府や政界には抗議しないが、農家などは輸入拡大に敏感だと。輸入を増やされたら自分たちの野菜の値段が安くなるからという理由だ。でも、それがハイパーインフレを招いているわけだ。経済的には輸入を増やせば価格は下がるのに、それを邪魔する利益団体。まあ、この辺りは何度も指摘したことだ。結局、彼らの利権で庶民が苦しくなっていると。
しかし、韓国のリンゴ価格が写真で掲載されているが、4つか、5つで2万ウォンて表示されている。つまり、日本円で2288円だ。メチャクチャ高いな。普通のリンゴが1個500円以上とか。
最後の段落を見ていこう。
「物価の歪みは、利上げで捕まえられるものではない」
李尹洙(イ・ユンス)教授は、食料や住宅の価格が先進国よりも高い「物価歪み」は、高インフレ時に利上げで対応する金融政策では解決できないと述べた。
―物価の歪みは金融政策で解決できるのでしょうか。
「金融政策はマクロ政策であり、市場全体の金利に影響を与えます。基本的には、金利を上げてローン需要を抑制し、インフレ率を低下させます。例えば、お金を借りて家をたくさん買う場合、金利を上げて家を買うのにお金がかかることで、家を買う需要を減らしていることになります。また、需要が落ち込めば価格の上昇圧力が下がることを期待して、車を買うためにローンを組むことを思いとどまらせたいと考えています。しかし、現在の物価高は生産と供給の構造的な制約によるものであり、利上げで需要を抑制することで下げられるとは言い難い」と述べた。
―それでも、金利が高いからといって物価が下がるわけではありません。
「金融政策が物価水準を強制的に引き下げるのであれば、金利を引き上げなければならない。現時点では、高金利が続く負担は、債務負担が相対的に大きい庶民が負担する可能性がある。高値の恩恵を受けている業界は他にもありますが、庶民は痛みに耐えざるを得ず、公平性の問題も生じます。物価水準の低下はデフレ(物価の持続的な下落)につながり、景気後退に陥りかねません」
―価格水準をターゲットにすることについての議論はありますか?
「インフレ目標の代わりに、デフレが深刻な場合の選択肢として議論されてきた『物価水準目標』があります。それはインフレ率ではなく、物価水準を安定させることです。物価上昇目標は2%ですが、それを下回れば、一定の物価水準を設定し、3%の上昇を許容して、その水準に達することを意味します。しかし、近年はインフレの時代により、物価水準の目標をめぐる議論は小康状態になっています。
ニュースは以上。
最後に突っ込んでいるのは韓国の物価についてだ。教授は物価水準を強制的に引き下げるのであれば、金利を上げないといけない。物価が下がるとデフレに繋がって、景気後退に陥るかもしれないと。これはその通りだと思う。韓国のハイパーインフレを抑えるのは金利をあげることだ。しかし、金利をあげて物価水準を引き下げればデフレにも繋がる。金利を上げれば借金の利息が増える。
結局、韓国は金利を上げても、下げても、物価水準が安定しない限りは地獄は続くことになる。
さて、ここで韓銀の金融動向を見ておきたい。先ほど、利上げという言葉が出てきたが、韓銀としては利下げに踏み切りたいそうだ。
[ソウル 11日 ロイター] – 韓国銀行(中央銀行)は11日、政策金利を予想通り3.50%に据え置いた。利下げの時期を検討するとした上で、インフレ率が目標の2%に戻りつつあるとの確信を強めるにはさらなる証拠が必要との認識を示した。
インフレ抑制のために制約的な政策を続ける中、据え置きは12会合連続となった。ロイター調査ではエコノミスト40人全員が据え置きを予想していた。
中銀は声明で「利下げのタイミングを検討する」と表明。「しかし今後の物価の動向が不透明なことを踏まえると、インフレが減速傾向を続けるかどうかをさらに見極める必要がある」と指摘した。
5月の声明にあった「インフレ見通しの上振れリスクが高まった」との文言は削除された。
中銀の李総裁によると、利下げ決定は全会一致だったが、理事7人中2人が今後3カ月以内に金利を引き下げることを支持する可能性がある。
李総裁は政策決定後の会見で利下げ期待の高まりに慎重な姿勢を示した。「物価安定という観点だけであれば利下げを議論するという雰囲気は正しい」としながらも、「(利下げに対する)市場の期待はある意味過剰なようだ」と述べた。
2日に発表された6月の消費者物価指数(CPI)は11カ月ぶり低水準の前年比2.4%に鈍化し、中銀目標である2%に近づいた。これを受けて、中銀が今後数カ月で利下げに踏み切る可能性があるとの見方が強まった。
通貨ウォンは今年対ドルで約7%下落している。このため早期の利下げを求める政治的圧力が強まる中でも、利下げは先延ばしにされる可能性があるとエコノミストは予想している。
ソシエテ・ジェネラルのエコノミスト、Oh Suk-tae氏は「経済成長の鈍化とインフレ率の低下は短期的な利下げを後押しするが、政策当局者は為替と住宅市場に懸念を抱いている可能性が高い」との見方を示した。
1ドル=1400ウォンに向けたドル/ウォン相場の上昇とソウルのマンション価格の回復は金融政策の様子見スタンスを支持するだろうと述べた。
新韓証券のアナリスト、アン・ジェギュン氏は「理事会メンバーは、物価安定の達成に自信を持っているようだが、物価安定と金融安定という中銀責務を踏まえると、金融安定により注意を払うべきだということを認識している」とし、「(8月の)次回政策レビューで反対意見が出るかもしれない」と述べた。同氏は第4・四半期に利下げが実施されると予想している。
韓国中銀、金利据え置き インフレ低下見極め利下げ時期検討へ | ロイター (reuters.com)
韓銀が政策金利を予想通り3.5%に据え置いたわけだが、今後は利下げする可能性が示唆されたと。しかし、それでも利下げには慎重な姿勢を崩していない。こちらは米韓金利差なんて気にしないで利下げに踏み切れば良いと述べている。
アメリカの景気鈍化が見えてきたので、今月はFOMCで重要な判断が出てくるかもしれない。このまま順調にいけば9月利下げになるんじゃないか。韓銀もその頃には利下げに動いているかもしれない。最も利下げに動けば不動産価格が高騰するので、韓銀としてはこれをどうするかだよな。
でも、さっさと利下げしないと高金利で負担増が続くのでますます消費が萎縮してしまう。しかし、利下げすればインフレに陥る可能性もある。ウォンレートも1400を超えてくるかもしれない。
これはバランスが取りが難しいとおもうが、結局、流通量を増やさない限り、韓国のハイパーインフレは続く。そして流通コストの改善が必要だという指摘があったが、この辺りは中国経済の動向が関わってくるんじゃないか。中国経済が失速すれば流通コストは改善されるからな。