韓国 昨年から今年にかけて生成AIのイノベーションが世界中を震撼させた。そして、多くの投資家は時代はAIだと決めつけて、エヌビディアに投資を続けていった。エヌビディアは株主の期待に見事応えて、ついに時価総額1位の企業にまで上り詰めた。まさにアメリカンドリームを手にしたわけだ。もちろん、韓国だってこのエヌビディアの恩恵を強く受けた。
特に韓国のSKハイニックスはエヌビディアに供給するチップを独占していた。今はマイクロンが技術的に追いついてきたが、その供給量はSKハイニックスが圧倒的だ。反対にエヌビディアのテストに合格できないサムスン電子の半導体は気がつけばSKハイニックスに周回遅れとされており、崖っぷちとなっている。
まさにエヌビディアによって、サムスン電子とSKハイニックスは明暗が分かれたのだ。こんな逆転現象が起きるなんて誰も予想できなかった。何よりサムスン電子とSKハイニックスでは規模が違い過ぎる。しかし、これも悪い意味でいえば、半導体だけに集中できないサムスン電子の弱点がそのまま露呈されたかもしれない。台湾のTSMCにサムスン電子が勝てないのは一局集中態勢にあるのも大きい。サムスン電子みたいに家電やスマホなんて作ってないのだ。SKハイニックスだって半導体一本で商売している。
サムスン電子は崖っぷちの半導体を立て直そうとトップを刷新したが、今のままではSKハイニックスに勝つことは土台無理な話である。しかし、SKハイニックスもこのまま順風満帆がいつまでも続くとは限らない。それが今回見ていく二つの不安要素である。一つはアメリカの対中半導体規制にHBMが追加されるかもしれないてこと。もう一つはそもそもAIバブルが崩壊する可能性だ。
最初の半導体規制についてアメリカが中国のAI技術向上に脅威を持ってるのは明らか。AIによって戦争における戦略や戦術というものが格段に洗練される恐れがあるためだ。つまり、安全保障上の問題からアメリカは中国にAI関連のチップを規制するのはそう遠い未来ではない。
だから、こんなニュースがある。その規制の前に中国が韓国から大量の半導体チップを買い集めてるというものだ。まあ、こちらの予想通りであるが。そりゃそうですよね。急に半導体の輸出額が跳ね上がるなんておかしいものな。
では、記事を引用しよう。
HuaweiおよびBaidu(NASDAQ:BIDU)のような業界リーダーを含む中国のテクノロジー企業が、様々なスタートアップとともに、Samsung Electronicsからの高帯域幅メモリ(HBM)半導体を蓄積している。この動きは、予想される米国の対中チップ輸出規制に対応するものである。
この件に詳しい情報筋によると、これらの企業は年初からAI対応チップの購入を増やしているという。その結果、中国は2024年上半期のサムスンのHBMチップ収益の約30%を占めるようになった。
中国企業によるHBMチップの蓄積は、米国をはじめとする西側諸国との貿易摩擦が高まるなか、技術的進歩を維持するための戦略的措置とみられている。こうした状況は、世界の半導体サプライチェーンに対する緊張の影響も浮き彫りにしている。
先週の報道によると、米当局は今月中にも新たな輸出規制パッケージを発表する見込みで、これには中国の半導体業界をターゲットにした新たな規制も含まれる。商務省は具体的な内容についてはコメントしていないが、このパッケージにはHBMチップへのアクセス制限が明記されると予想されている。
しかし同省は、米国の国家安全保障と技術的利益を守るため、輸出規制を継続的に適応させるというコミットメントを表明している。
HBMチップは、エヌビディア(NASDAQ:NVDA)のグラフィック・プロセッシング・ユニットに使用されているような、生成AIアプリケーションに不可欠な高度なプロセッサを作成するために不可欠である。現在、HBMチップの主要メーカーは3社しかない:韓国のSKハイニックスとサムスン、そして米国のマイクロン・テクノロジー(NASDAQ:MU)だ。
特に中国では、最先端のHBM3Eチップから2世代遅れたHBM2Eモデルの需要が強い。世界的なAI開発の急増により、より高度なチップが不足しているのだ。
ホワイトオーク・キャピタル・パートナーズの投資ディレクター、ノリ・チウ氏は、中国自身の技術開発がまだ完全に成熟しておらず、他のメーカーの能力はすでにアメリカのAI企業に予約されているため、中国のサムスン製HBMチップへの依存度が著しく高まっていると指摘した。
中国に備蓄されているチップの正確な数量や価値は不明だが、衛星メーカーからテンセントのようなハイテク大手まで、幅広い企業がこれらのチップを確保していることは知られている。例えば、チップ設計の新興企業Haawkingは、サムスンにHBMチップを発注している。ファーウェイは先進的なAscend AIチップにサムスンのHBM2E半導体を利用している。
サムスンとSKハイニックスはコメントを控えている。マイクロン、Baidu、Huawei、Tencent、Haawkingはコメントの問い合わせに回答していない。
サムスンは中国市場への依存度が高いため、米国による中国へのHBM販売規制の可能性は、ライバルと比較してサムスンにより大きな影響を与える可能性がある。マイクロンはすでに昨年から中国へのHBM製品の販売を停止しており、HBMの主要顧客にNvidiaを数えるSKハイニックスは、主に高度なHBMチップの生産に注力している。
SK Hynixは今年初めにも、HBM3Eの生産量を増やすために生産調整を行っており、同社のHBMチップは今年分はすでに予約でいっぱいで、2025年分はほぼ完売していることを明らかにしている。
米国抑制の中、中国企業がSamsung AIチップを買いだめ 執筆: Investing.com
このように韓国の半導体輸出が急に増えたのは中国がチップの買いだめに走っているから。対中半導体規制が強化される前に動いているてことだ。だから、サムスン電子の半導体は急回復したわけだが、アメリカのさじ加減次第では利益が急減する可能性があると。
これはアメリカ大統領選挙にも大きく影響するが、トランプ氏が勝とうが、ハリス氏が勝とうが、程度の差あれ、米中対立は深刻化する。世界の覇権を握る国家は一つしか存在できないのは当たり前だ。中国が台頭するなら、アメリカは当然、それを許すはずもない。
しかし、最近はハリス氏がリードという報道が増えてきている。メディア戦略の可能性もあるのだが、トランプ氏が負ける可能性も増えてきたこと事実だろう。こちらは確トラだと思っていたら、まさかのハリス氏、当選になるのか。まあ、まだまだわからない。無能なハリス氏の方が扱いやすいとおもうが、アメリカの弱体化が世界情勢にどんな変化をもたらすかを想像すると、素直に喜べる結果でもないとおもわれる。
ただ、ウクライナ戦争の支援はそのまま維持されるか。トランプ氏はウクライナ支援をやめるとか述べていたが、この辺りがどうなるかは公開討論次第だろうか。今、9月の公開討論日程で、トランプ陣営とハリス陣営が対立しているのだが、頑張って調整してくれと。
それともう一つ気になるのが米利下げ動向である。
[8日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)の政策当局者らは8日、インフレ率が十分に鈍化しており、今後利下げが可能になるという確信が強まっていると指摘した。利下げの規模や時期は株式市場の混乱への対応としてではなく経済指標に応じて判断すると表明した。
2日に発表された7月の米雇用統計が軟調となったことを受け、世界の株式市場は混乱。米景気後退懸念が高まり、より積極的な利下げが必要になるとの見方が広がった。
リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は米株式市場について、最近の下落後も年初来では依然として上昇しているとし、「激変の出来事」ではないとの見方を示した。
また「インフレの全ての要素が落ち着きつつあるようだ」とし、企業経営者から聞いている話に基づき、この状況が今後も続くことに期待していると述べた。
米労働市場の減速は解雇の増加ではなく雇用の伸び鈍化によるものだという認識も示した。
「経済が緩やかに正常化しつつあり、着実かつ計画的に金利を正常化できる状況にあるのかを見極める時間はある」と述べた。
後省略
FRB当局者、今後の利下げ示唆 市場混乱ではなく指標で判断|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)
なるほど。これは判断が難しい。とりあえず、来週のCPIとPPIを見てから予測を修正しようか。9月利下げするには本当にCPIが下がっているかどうかは重要だしな。
では、二つめを見ていこうか。
AIバブルがどうなるのか。どうやら生成AIがもたらすイノベーションは経済革命には至らないという報告書が出ている。これはどうなんだろうな。確かに凄いことであるのだが、あくまでも生成AIは既存のものを学習させていくものであって、既存を越えるものではないという認識なのか。
そもそも生成AIがオリジナルを越えるようになれば、それはネット中に生成AIイラストや動画が溢れてしまうことになる。しかし、そこまでのブレイクスルーはまだ起きないだろう。10年後はわからないが、数年でそこまで進化を遂げるのは難しい。最終的にはそこに行き着くにしても、すぐにはそうならないと。
だから、iPhoneやインターネットみたいな世界の通信手段を劇的に進化させるようなものではないと。もっとも、生成AIも使い方次第ではまだまだ化けそうな気がしないでもないが。
では、記事を引用しよう。
「1990年代後半にドットコム企業で起きたバブル現象は、人工知能(AI)分野でも起きる可能性が高い。審判の日が近づいている。巨大企業がAIに投資するとしても、iPhoneやインターネットに匹敵する経済革命は起きないだろうし、その約束に後押しされて急騰したすべての株式も暴落するだろう。」
7月、ゴールドマンサックスの株式リサーチ責任者であるジム・コベロ氏が出した報告書だ。昨年までは、AIのおかげで今後10年間は世界の国内総生産(GDP)が7%増加するだろうというバラ色の展望を出したゴールドマンサックスだ。すでに5月、マサチューセッツ工科大学(MIT)のダロン・アジェモール教授もやはりAIの生産性に関する予測が誇張され、むしろ不平等と弊害だけが大きくなることを警告した状況だった。
このような「AIバブル論」が最近、米ビッグテック(アップル・マイクロソフト・メタ・アマゾン・アルファベット・テスラ)企業の第2四半期の実績発表と株価下落以後、いっそう拡散している。3日(現地時間)、ブルームバーグはこれらの企業の利益増加率が29.9%で、昨年第4四半期(56.8%)と今年第1四半期(50.7%)より鈍化し、「今後第3四半期(17.2%)と第4四半期(18.7%)には今よりさらに低くなる見通しであり、投資家らがもはやAIの可能性に共感していない」と報道した。
「バブル論」が広がる理由は、莫大な投資で作り出した「AIモデル」が「収益化」につながっていないためだ。2022年末、OpenAIが「ChatGPT」を出した後、ビッグテックは競ってより巨大なデータ、より大きなコンピューティングパワーに資金を投資した。しかし、収益はインフラ構築に必要なハードウェアを提供したNVIDIA(エヌビディア)などが持っていっただけだ。米国のベンチャーキャピタル(VC)であるセコイアキャピタルは6月、「AIに投入された資金を考慮すれば、技術業界が年6000億ドルの売上を上げなければならないが、道は遠い」と明らかにした。
さらに強度の高い「懐疑論」もある。シカゴ大学のベン・ジャオ教授はハンギョレに「巨大な生成AIモデルは燻製ニシンの虚偽(猟犬の注意をそらすための偽情報)に過ぎず、これが人類のための技術だという話は誇大広告とマーケティングの貪欲さを隠すためのトリックであり、ここに資金があまりにも集中している」と懸念を語った。
しかし、ビッグテックがAI投資を止めることは容易でない。ブルームバーグは先月、ビッグテックがAI投資を再考すれば、株式市場が低迷するリスクがあると警告した。AIブームに支えられ、莫大な株価上昇を味わったビッグテックの立場としては、投資を通じたラリーを続けるしかない状況だという話だ。
フィナンシャルタイムズは2日、今年上半期のマイクロソフト、アマゾン、メタ、アルファベットによるAI関連投資は計1060億ドルで、昨年同期の投資額より50%増加したと報じた。メタのマーク・ザッカーバーグ最高経営者は先月31日、「未来の予測は難しいが、(AIの)力量を確保しておいた方が良い」と話した。アマゾンも「生成AIなど強力な需要が続いているため、下半期の投資をさらに増やすだろう」と明らかにした。
米証券市場暴落の震源地「AIバブル論」…それでも投資を止められないビッグテック : 経済 : ハンギョレ新聞 (hani.co.kr)
ふむふむ。これはAIバブル理論はなかなか面白いな。
特に「AIに投入された資金を考慮すれば、技術業界が年6000億ドルの売上を上げなければならないが、道は遠い」とか。確かにそうだよな。巨額投資をしているが、それによって大幅な収益を上げたのはエヌビディアやSKハイニックスなどのごく一部だもんな。
しかし、ゴールドマンサックスの認識が180度も異なるのは何なのだ。昨年までは、AIのおかげで今後10年間は世界の国内総生産(GDP)が7%増加すると述べていたのに、この報告書の内容は悲観的だ。
それで投資額が凄いな。今年上半期のマイクロソフト、アマゾン、メタ、アルファベットによるAI関連投資は計1060億ドルで、昨年同期の投資額より50%増加した。これだけ見ればAI投資は激増しているが、問題はそれが収益に結びついてない。だから株価が急落しているてことだ。
こうなってくるとAIバブルが弾けるのは来年かもしれないな。収益化に結びつかない投資をいつまでも投資家が許容するはずもない。マイクロソフトに負けないために、他のライバル企業もAI投資をしているわけだが、拡大すればするほどその投資を回収しなければならない。だが、この先、AIがどのように収益をもたらすのかは大変難しい。
仮にバブルが弾ければ、今度はSKハイニックスやサムスン電子などAIチップ量産のためにしている設備投資で一気にヤバくなる。SKハイニックスはAI需要を今の基準で考えているわけだから、この設備投資が不要になればそれだけで危機に陥る。HBMが重要視されるのは生成AI需要があってのことだ。
ということで、これからはAIバブルがいつ弾けるのか。これが韓国経済に関わる重要な新ネタとなる。しかし、収益化が増えない投資はいつか見直される。これから注視していきたい。