韓国 サムスン電子が崖っぷちであり、その株価も4万ウォン台に突入して、慌てたサムスン電子が総額10兆ウォン規模の自社株買いを宣言して、株価は5万ウォン台へと回復した。これが今週の動きだ。問題は自社株買いだけではサムスン電子の置かれている状況は改善しないてことだ。
もちろん、自社株買いというのは投資家にとって大きなプラス材料となる。でも、これもなぜ自社株買いがプラスになるかを解説しておきたい。初心者さんに向けとなる内容であるが、投資の世界では頻出するワードなので再確認していただきたい。
自社株買いとは?
それで自社株買いとは、企業が自社の株を買い戻すこと。単純な説明だが、これは既に発行済みで市場で売買されている株を買うことがポイントだ。なぜ、これがポイントかというと、発行済みの株の総数が増えないので投資家にとっては強力な資金源で株を買う仲間が一時的に加わったことになる。
また自社株買いには企業がその期間中に自社の株を売らないことも同時に宣言している。これはどういうことか。つまり、1年間、自社株買いをするといった企業が、いきなり資金繰りに困って自社がもっている株を売却なんてあり得ないのだ。増資か何かするにしても自社株買いが終わった後だ。
もちろん、ルール上はできないことはないが、こんなことすれば投資家から信用が桁違いに落ちて暴落するのは言うまでもない。
自社株買いとは同時に株価を支えて、その株を一定期間は売らないことも宣言する。これは投資家にとって大きなメリットだ。
そして、投資家ではなく、株をその時の値段で買う権利、「ストックオプション」を持っている社員へのメリットがある。
ストックオプションとは?
なんだよ。ストックオプションって?新しい用語を出すんじゃないかと思うかもしれないが、これは企業が社員や個人などに発行時に決めた価格で自社の株式を購入できる権利のことだ。社員の報酬として与えられることがある。
例えば、上場した企業の株価が500円でスタートする。でも、1年後に社員が頑張ってその株価を1000円にできたら、ストックオプションを使えば決まった数が500円で買えるので、なんと500円がプラスとなり、かなり儲かるのだ。これは社員のモチベーション維持によく使われる手だ。
特に新規事業の場合、これから会社を大きくしていけば社員に大きなメリットがありますと意味合いで使われる。また、ストックオプションは権利期間内なら行使しないこともできるので、どのタイミングで使うかは社員の判断となる。
敵対的買収も防ぐ
それで自社株買いのメリットとして、もう一つ重要なのは敵対的買収を防ぐ効果だ。先日、セブンイレブンの買収について見てきたが、株価が上がれば当然、買収費用は増えるので敵対的な買収をしようとしても金額が大きくなる。
最初は5兆円の買収が気がつけば7兆円になったりするわけだ。もっともセブンイレブンの買収するのは7兆円でもだめだ。既に創業家+商社+銀行による防衛策として9兆円が出ているからな。
このように自社株買いというのは投資家だけではなく、ストックオプションを持っている社員、敵対的買収阻止など大きなメリットがある。サムスン電子に買収先があるかはともかくとして。
自社株買いのデメリット
唯一のデメリットは企業が自社株買いした分、自己資本比率が消えてしまうてことだ。つまり、将来的に投資に回す金が消える。だから、資金に余裕がある企業でないと自社株買いはできないのだ。
他にもROEやPERの向上とか、非上場企業の場合など色々あるんだが、難しい用語を沢山出してもついていけないかもしれないのでこれぐらいにしようか。
とにかく自社株買いとは自己資本比率低下のデメリットが投資家にどう判断されるのか。懸念材料はあるにせよ。多くの場合は好意的に解釈される。では、サムスン電子の自社株買いはどうなのか。これが本題だ。
では、記事を引用しよう。
サムスン電子が7年ぶりに断行する「自社株買い」は成功事例として残るだろうか。
株価が4万ウォン台まで下がり危機に陥ったサムスンが、自社株10兆ウォン(約1.1兆円)分を買い入れる対策を持ち出したことで、市場では様々な意見が飛び交っている。株価が本格的に反騰するという期待が頭をもたげる一方で、根本的な解決策ではないため株価の浮揚効果は制限的だという見方も出ている。
17日に確認したサムスン電子の資料によれば、会社が今後3カ月間にわたり買い入れ・消却することにした自社株は、普通株と優先株それぞれ流通株式の0.8%の規模だ。これを含め約束した10兆ウォン分を今後1年間ですべて履行すれば、流通株式の2%以上が蒸発する見通しだ。サムスン電子が最後に自社株を買い入れて株価を引き上げた2017年(普通株2.7%、優先株4.8%)と肩を並べる規模だ。証券街で株価浮揚への期待が流れているのはそのためだ。
投資家が重要視する主な指標も小幅ではあるが改善される見通しだ。市場では通常、企業が持つ資本に比べてどれだけの成果を出すかを見るが、自社株を買い入れればそれだけ会計上の資本が減る。従来と同じ成果を出しても、各種の指標は良くなるという話だ。資本利益率(ROE)が代表的な例だ。
問題は、株価下落を触発したと評価される原因がまだ解消されていないことにある。サムスン電子は先月、半導体(DS)部門長のチョン・ヨンヒョン氏の名前で発表したメッセージで、自ら「危機」に言及し、その原因として「根源的競争力」を指摘している。
当時、チョン部門長は「何より技術の根源的競争力を復元する」と述べたが、一カ月以上過ぎた最近でも後続対策は出てきていない状況だ。米国のエヌビディアに第5世代高帯域幅メモリー(HBM3E)を大量納品するというニュースもまだ聞こえていない。「自社株買い」というカードでは、背を向けた投資家らを完全に引き戻すには力不足だろうという評価が出ているのもそのような背景からだ。
サムスン電子の業績見通しが明るいとは言い切れないという面でも、自社株買いの効果に対する疑問が少なくない。サムスン電子が最後に自社株買い・消却した2017年は半導体超好況を享受した時期だ。
会社がおさめた営業利益は、2017年に53兆6450億ウォン、2018年に58兆8867億ウォンで、サムスン電子の歴代1・2位の記録だ。当時、株価が上昇傾向を示した背景には、自社株買いだけでなく実績の好調もあったということだ。
一方、今年のサムスン電子の営業利益は36兆ウォン前後にとどまる見通しであり、来年も半導体の業況とサムスン電子の実績を巡る不確実性は大きい。
危機のサムスン電子、7年ぶりの「自社株買い」は通用するか : 経済 : ハンギョレ新聞
ええ、自社株買いの解説で難しいと思って省略したところが記事に出ているじゃないか。資本利益率(ROE)についてのところだ。なら、解説しておくか。
ROE(資本利益率)とは
自社株買いは発行済みの株を企業が買うので、当然、市場に出回る発行数が一気に減るので株の指標は良くなるのだ。代表的なのは資本利益率と。
それで、計算式が大事なので出しておく。「当期純利益÷自己資本(株主資本)」となっている。
簡単な例を出すと。1億円純利益を出した企業の自己資本が5億円なら、計算はこうなる。
1億÷5億×100=20%
電卓で出すと0.2×100となるので20%だ。これがROEである。
それで自社株買いで自己資本が減るので、1億円自社株買いすれば、
1億÷(5億-1億)×100=25%になる。
つまり、ROEは25%になって資本利益率が向上するのだ。資本利益率の向上は投資家にとっては嬉しいものだ。
結構、ややこしいから省いたのに記事に出てきた以上は解説しておいた。
自社株を買い入れればそれだけ会計上の資本が減る。従来と同じ成果を出しても、各種の指標は良くなるという話だ。資本利益率(ROE)が代表的な例だ。
これでこの内容は理解できるだろう。
結論から述べると自社株買いだけではなく危機を克服できないとあるが、これはその通りだ。エヌビディアのテストに合格しない限り、サムスン電子の危機的な状況はこれからも続く。エヌビディアのテストがそんなに大事なのかとおもうかもしれないが、今は世界はエヌビディア中心に動いているといっても過言ではないのだ。
それだけ時価総額が世界一の企業へと変貌している。もちろん、生成AIブームでだ。そのエヌビディアに認められない限り、サムスン電子ですら三流扱いということ。
自社株買い効果で株価を5万ウォン台に回復しても、それは外資が株価を売り抜けるチャンスを提供することにも繋がる。4万ウォンで買った投資家かられば、ある程度、上がったら業績が良くない企業株は手放すのは常識だ。
サムスン電子がエヌビディアのテストに合格する希望を託すならもっていてもいいかもしれないが、現実は望み薄だからな。