こちらもそんなに続かないとは思っていたのだが、どうやら米中で協議継続の間、米国が中国にかけていた相互関税145%が115%下げて、30%になったようだ。期限は90日間で協議を継続しているようだが、これによって中国の相互関税が日本や韓国より高い程度になった。
ただ、協議しているだけなのでこれがどう転ぶかはわからない。高関税の報復合戦はどちらの国民を負担を強いるので、チキンレースになればすぐに終わることが多い。実際、1ヶ月程度ぐらいしか持ってないわけだが、これで終わったわけではない。ただ、これによってドル円やウォンが急降下しているんだよな。
それについては後で確認しておく。まずはニュースを見よう。
【ワシントン、北京時事】ベセント米財務長官は12日、スイスのジュネーブで記者会見し、「米中双方が関税を115%引き下げる」と発表した。期間は90日間。米国の対中追加関税は30%に、中国の対米対抗関税は、一部の農産物などを除いて10%まで下がる。互いに100%超の追加関税をかけ合い、貿易が事実上停止する事態は当面、解消される。
景気悪化に現実味、休戦促す 米中貿易戦争、先行き見通せず
トランプ米大統領は同日の記者会見で、米中協議は「大変友好的だった。中国は国を開くことで合意した」と成果を説明。今週末に中国の習近平国家主席と会談する意向を表明した。
米中は経済・貿易に関する協議の枠組みを新設し、交渉を継続する。ベセント氏は会見で、米中とも「デカップリング(分断)は望んでいない。貿易を望んでいる」と強調。「交渉が進むにつれて、巨額の対中貿易赤字の解消につながる物品購入協定を結ぶ可能性がある」と語った。
米国は4月2日、相互関税として中国からの輸入品に34%の関税を上乗せすると発表。その後、中国が報復したことを理由に、累計145%まで引き上げた。これに応じ、中国も米国からの輸入品に対する関税を125%に設定した。
共同声明によると、米国は相互関税を当初の34%に戻し、そのうち24%は90日間停止。中国の報復を受けて引き上げた部分は撤回する。中国も同様の措置を取る。
一方、トランプ米政権が合成麻薬「フェンタニル」の米国流入対策の不備を理由に発動した20%の対中追加関税は継続。それに対する中国の対抗措置も維持される。会見に同席したグリア米通商代表部(USTR)代表は、合成麻薬対策について、「米中が建設的に協力することで合意した。前向きな道筋がある」と説明した。
追加関税、115%下げで合意 90日間、協議継続―米中:時事ドットコム
これわかりにくいんだが、34%まで下げた関税が、ここから90日間は20%下げて、10%になるのだが、合成麻薬フェンダニルで追加関税20%はそのままなので、合計30%ということになる。ややこしいがこういうことだ。
ただ、米中交渉が上手くいくかどうかは微妙だ。なぜなら、アメリカは対中貿易赤字を減らしたいと考えてることに変化はない。
では、ネットの突っ込みを見ておくか。
1.これ、ようやく「本来あるべき交渉のスタートラインに戻った」だけなんじゃねえの?
2.だいたい元の位置に戻っただけだよなw
ただ人間の心理は戻らんだろうし
パナソニックの様に早々とリストラを始めた所も
施策を止めはせんだろうけどw
3.中国以外の国は2か月後に追加関税延期の期限が切れるから
下手すればそうなるか
4.ひとまず関税を下げて、90日間じっくり落ち着いて話し合おうぜ、って状況だよな
その話し合いって「で、中国さんは迂回輸出やめるの?やめないの?」みたいな話をするんだよね。それってたった90日でまとまるの?
5.まずね、中国に人権なんかないし、逮捕し放題、弾圧し放題、監視し放題、個人情報取り放題
教育訓練施設とやらに放り込まれて何されっかわからん
そういうのが、膨張政策とってて日本も尖閣沖縄が狙われてる
いわば人類の敵なんだから自由主義諸国と連携して抑え込むのが日本の利益で、
そういう国際情勢を作り出したのは安倍外交の成果
こんな国を持ち上げてるのは極右ファシストでおk
6.中国としては、中国がイニシアチブを持った状態でアメリカに翻意させたかったんだよ
当然「アメリカと膝を付き合わせて真面目に交渉する」という事態も避けたかった
世界中が中国に味方して、立場がなくなったアメリカが仕方なく方針転換する、という展開にしたかった
だがそうはならなかった
まだまだ中国としては苦しい展開が続くだろう
もちろん市場は敏感だから関税が取り下げられただけで反応するだろうけど、それはまた今後同じように敏感に悪化する可能性も十分秘めてるということ
7.これで対西側同盟国だけ今までと変わらずで
中国だけ+30%の関税が追加されただけなら
かなりの策士だろうが
たぶんトランプはそんな深いこと考えてないな
8.トランプが関税下げたのは「ビビったから」ではないでしょ
最初から各国に交渉のテーブルにつかせるためのブラフだったんだから、対抗措置なんてやめておとなしく交渉するなら取り下げるさ
もちろん交渉の結果次第でどうなるか分からんが
9.トランプが色々ぶち上げたせいでグローバリズムの弊害も可視化されて来た。
アメリカの経済安保見直しにギリギリ間に合うかどうか。
10.しかし、少額小荷物の関税無しは無くなったままである
以上の10個だ。
ああ、そうか。下げたようでアメリカが日和ったような印象を受けたが、実際は元に戻っただけなのか。しかも、今、相互関税は10%のままなので、中国だけが30%になっている。さらに重要なのは少額小荷物の関税なしがなくなったのはそのままだってことだ。
ネットで言われてるような中国の一方的な勝ちというようなものではないか。ここで3ヶ月猶予していた相互関税10%をそのままにして中国だけ30%にすれば完璧。というか。こちらはそうなると以前から考えている。しかし、その場合は中国の迂回輸出に対して何らかの対抗策を各国がやってからだと思われる。
結局、この迂回輸出を潰さない限り、安い中国製の流入が自国産業を潰してしまう。でも、中国が迂回輸出を止めるとは思えないが。
それで中国の輸出に対して動いてるのはアメリカだけではない。どうやらEUも中国製に66%の高い関税を課したことがわかった。
では、記事を引用しよう。
欧州連合(EU)の政策執行機関である欧州委員会は4月28日、中国製の高所作業設備に最高66.7%の相殺関税を適用すると突如発表しました。昨年10月に中国製の電気自動車(EV)に最高45.3%の相殺関税の適用を決めてから、6カ月ぶりに再び関税カードを切った格好です。
トランプ米大統領の就任後始まった米国の関税戦争に対抗するため、世界2、3位の経済圏であるEUと中国はこれまで共同戦線を模索してきました。中国の李強首相は4月8日、EUのフォンデアライエン欧州委員長と電話会談を行い、米国の関税爆弾に共同で対処していく意向を明らかにしました。双方は7月にEU・中国首脳会談を開くことでも合意しました。
しかし、それから1カ月もたたないうちに、EUが中国製品に対する高率の関税を適用したことで、共同戦線に亀裂が生じる兆しを見えてきました。EUは米国の関税爆弾で輸出の道が閉ざされた中国製品が欧州に流入することを防ぐ措置も検討しているとされます。
中国は習近平国家主席が自ら東南アジアを歴訪し、関税爆弾に対抗する反米連帯を訴えましたが、状況は中国の思い通りにはなっていません。東南アジアが習主席の訴えを無視したのに続き、EUまでもが背を向け、中国は孤立無援の状況に陥っています。
■中国製品80品目に反ダンピング・反補助金関税
欧州委は4月25日から中国製の高所作業設備に対する補助金に対抗する形で相殺関税を適用したと発表しました。欧州委は既に中国製の高所作業設備に反ダンピング関税を適用してきましたが、今回相殺関税を上乗せして、関税率を20.6~66.7%に引き上げました。
建設工事現場で使われる高所作業設備は、欧州での市場規模が年間10億ユーロ(約1625億円)に達するといいます。フランスのハウロッテ、マニトウ、中国の湖南星邦智能装備(シノブーム)、浙江鼎力機械などが競合しています。
EUは中国企業が政府が支給するさまざまな補助金を受け、欧州現地の製品より20%も安い価格で販売し、市場シェアを拡大してきたと判断しました。中国企業の欧州市場でのシェアは2020年の29%から2022年10月には41%に跳ね上がったということです。中国製EVが欧州市場でのシェアを拡大したのと同じ過程をたどったのです。
EUは昨年3月から中国製高所作業設備に対する反補助金調査を進めてきました。EUは「中国企業が市場価格をはるかに下回る土地使用料、低利の優遇融資、税金減免などさまざまな不公正な補助金によって、EUの競合企業に比べ20%も安い価格で製品を供給し、シェアを高めた」と指摘しました。今回の措置でEUが反ダンピング・反補助金関税を課した中国製品はトラック用タイヤからアイロン台まで計80品目に増えました。
■米国の関税に共同対応を模索したが…
EUは昨年10月にも中国製EVに最高45.3%の高率関税を課す案を示し、中国と関税戦争を繰り広げました。中国もそれに対抗して、EU産の豚肉、乳製品などに対する反ダンピング調査を始めました。
しかし、トランプ政権が全方位的に関税爆弾を浴びせたことで、EUと中国はしばし休戦し、共同対応を模索してきました。フォンデアライエン欧州委員長は4月8日、中国の李強首相と行った電話会談で、「欧州と中国は米国の関税による世界的な混乱に対応する責任がある」と述べました。李強首相も「中国と欧州は自由貿易の支持者として、協力と意志疎通を強化すべきだ」と応じました。
世界各国は対米輸出の道が閉ざされた中国製品が自国に押し寄せることを懸念しています。インドは4月21日、低価格の輸入鉄鋼製品に12%のセーフガード(緊急輸入制限)関税を課すことを決めました。押し寄せる中国製の安価な鉄鋼製品を念頭に置いた措置だと分析されています。フォンデアライエン欧州委員長も最近、「米国の関税爆弾の影響で中国製貨物がヨーロッパに押し寄せて輸入が増加すれば、EUレベルで保護措置を取るだろう」と発言しました。
■輸出の道が閉ざされた中国製品の殺到警戒
英国ではトランプ米大統領が行ったように、中国製の安価な製品の流入を防ぐため、小額免税制度を廃止すべきとの主張が出ています。英家電小売業者カリーズのバルドック最高経営責任者(CEO)はフィナンシャル・タイムズのインタビューに対し、「中国製の安価な製品がダンピング価格で欧州に集まる兆しを見せている。EUは中国製品に対する小額免税制度の廃止を検討中だが、イギリスも遅れてはならない」と指摘しました。
中国の徐飛洪駐印大使は4月29日、インド紙への寄稿を通じ、「中国は世界貿易機関(WTO)の補助金ルールと市場規則を厳格に順守しており、ダンピングと悪性競争で他国の産業と経済発展を妨げることはない」と主張しました。米中関税戦争の余波で中国製のダンピング製品がインドに押し寄せることを心配しないでもよいとの趣旨だが、説得力に欠けました。
液晶パネル大手である中国の京東方科技集団(BOEテクノロジーグループ)は2010年から受け取った数十億ドル規模の政府補助金で低価格製品を生産し、世界最大手にのし上がった企業です。同社の昨年の財務報告書を見ると、この3年間に受け取った政府補助金は105億人民元(約2080億円)でした。同じ期間に上げた純利益154億元の68%に相当する金額です。世界最大手の液晶パネルメーカーでさえこれなのだから、他社は言うまでもないでしょう。
欧州も中国に背を向けた…反ダンピングに反補助金分上乗せし66%の関税適用-Chosun online 朝鮮日報
ちょっと文章が長いのでどこか切ろうと考えたのだが、これはどれも重要だと思われるので割愛するところがなかった。このようにアメリカだけが、安い中国製排除をしているわけではない。中国はアメリカが虐める。助けてとEUに泣きついたが断られたあげく、それよりもお前の所の補助金でダンピング輸出がうざいので関税60%かけたことになる。
実際、これが世界の流れなのだ。このまま行けば安い中国製に自国産業が壊滅させられてしまう。アメリカもEUだってそれをずっと放置するようなことはしない。しかし、酷いものだよな。BOEテクノロジーっていうのは韓国経済でも何度も取り上げてきたが、安い液晶パネルを世界中に輸出して韓国製シェアを激減させた。そして、採算が取れなくなって韓国では有機ELパネルぐらいしか作れなくなった。
だが、その有機ELパネルもBOEが大量生産をし始めた。こうして中国製テレビが世界中に輸出されるわけだ。日本市場でも既に多くの中華製テレビにこの液晶パネルが使われている。
中国政府の補助金の凄まじさがわかるだろう。しかも、どう見ても利益を出せるのは補助金のおかげであり、普通に生産すれば大赤字になっている。これが氷山の一角でないことも太陽光パネルでの大赤字だったりするので、いくらでも事例がありそうだ。
だから、アメリカが中国製の輸出に関税をかけるのは当然なんだよ。まあ、145%は続かないようだが、30%は一時的な措置だ。
では、ネットの突っ込みを見ておくか。
1.まあ、国内の低中級品製造業が軒並み中国に食われたもんな
2.米中の戦争でどちら側につくか考えたらEUは中国と組めないでしょ
中国の後ろにはロシアがいるしな
3.ブルーチームとレッドチーム、見事に分かれたなぁ
韓国もそっちで頑張れよ、じゃあな
4.中国の世界の工場の役割も終わるな。
5.中国に進出するしか生き残る道はない、と企業を煽った某新聞の責任も重いと思う
以上の5個だ。
このように中国製の流入が自国産業をドンドン破戒していく。それが安いからと輸入していけば、世界は中国製に支配されてしまう。そして、他企業を潰してシェアを独占して頃合いを見て値をつり上げていくのはいうまでもない。
彼らのやり方はいつも同じだが、効果てきめんだ。それを防ぐには政府が対策を講じないといけない。企業の力でなんとかできる範囲を逸脱しているからだ。
それで、最後に米中貿易戦争の緩和で円やウォンが急落しているのを見ておく。
まずはドル円からだ。
115%関税撤廃ニュースで円は急落して148円台まで下がる。そして朝には反発して147円となっているが。どう見ても円安傾向だ。このまま150円に戻ることだって普通にあり得る。
次はウォン動向だ。
ウォンも先ほどのニュースで急落。18時頃に1424ウォンまで落ちてるのはそういうことだ。まさに投げ売りが始まった。それから反発して1408ウォンまで上げてるが、ウォンを上げる材料がないのでただの介入だろうな。