ここからは韓国経済の話題だ。
7月8日の期限が迫るアメリカの相互関税期限、今のところ、合意できたのはイギリスだけだったが、土壇場に来てベトナムとの合意をしたことがわかった。それで興味深いのは相互関税が46%から20%まで下げられたこと。
20%は高いんじゃないかと思うだろう?でも、アメリカのトランプ氏は相互関税は10%が最低ラインだと述べた。つまり、全世界の基準が10%なら、20%というのはそこまで高い水準ではないのだ。
とりあえず記事を読んでから解説しようか。
【シンガポール】米国とベトナムの関税協定は、ホワイトハウスがグローバル貿易を巡る慌ただしい交渉で特に重視している課題を浮き彫りにした。すなわち、中国製品が米国に入ってくる迂回(うかい)ルートを全て遮断することだ。
ドナルド・トランプ米大統領が2日に発表したベトナムとの合意で重要なのは、ベトナムで「積み替えて」米国に輸入されるモノに対し、40%の懲罰的関税を課すとしたことだ。同氏がベトナムからの通常の輸入に適用するとした税率20%の2倍に当たる。
トランプ氏は中国を名指しはしなかった。迂回の定義や取り締まり方法も詳細は不明だ。それでもアナリストらはこの措置について、企業がベトナムを経由して商品を米国に出荷し、中国からの輸入品に通常課される高関税を回避するのを困難にするのが真の狙いだと指摘する。
米国は中国と、もろさも透ける貿易「停戦」にこぎつけ、他の貿易相手国とは協議を続けているが、引き続き中国が通商政策の焦点であることがうかがえる。
ベトナムとの合意が示唆するのは、他の国も米国への輸出を続けたければ、自国経済における中国の存在感を制限するよう求められる、ということだ。英国は最近米国と結んだ貿易協定で、サプライチェーン(供給網)のセキュリティーを強化することで合意した。これも標的は中国だとされる。
「中国の輸出品が迂回ルートを通じて米国市場に入ってくるのを実質的に制限するという、米国の戦略的な意図があるようだ」。HSBCのアジア部門チーフエコノミスト、フレデリック・ニューマン氏(香港在勤)はこう指摘した。
中国外務省の毛寧報道官は3日、米国とベトナムの協定について質問されると、貿易の「交渉や協定は第三者の利益を標的にしたり害したりすべきではない」と述べ、改めて不快感を示した。
ベトナム政府はこの合意を歓迎すると表明した。
ベトナムは、第1次トランプ政権発足と新型コロナウイルス禍に伴うグローバルサプライチェーンの再編で大きな恩恵を受けた。コロナ下の混乱と米中対立激化を受け、中国と欧米の企業は生産拠点の多角化を模索し、ハノイとホーチミン市周辺に工場が急増した。
米国の輸入相手国でベトナムが上位となったことで、手頃な価格の消費者向け商品が豊富に流入するようになった。米スポーツ用品大手ナイキや米アップルなどはベトナムでの生産を拡大した。トランプ氏が同国との貿易協定を発表した3日、両社の株価は上昇した。
ベトナムはグローバルサプライチェーンの再編で大きな恩恵を受けた
ベトナムで米国など西側諸国向けの子ども用家具工場を経営するマイケル・バーチ氏は、20%の関税が米国の消費者にとって値上がりになるのは避けようがないと述べた。
それでも、ベトナムは引き続き製造業の主要拠点であり続けると同氏は考えている。中国から米国に輸出すると関税率は平均40~50%で、20%のベトナムはまだ優位だ。ただしこの優位性を維持できるかどうかは、同じく製造拠点であるインドやインドネシアなどの関税率次第だ。
バーチ氏は「他国に課される関税を見極める必要があるが、われわれが競争力を失うことはないと考えている」と述べた。
ベトナムに対する米国の財貿易赤字は、2018年には日本やドイツに対する赤字より少なく、中国の10分の1だった。
それが24年末までに1200億ドル(約17兆4000億円)超に膨らみ、中国、メキシコに次ぐ規模となった。
ベトナムは米国の貿易相手国で上位になったことで、関税を回避したい企業が中国製品を迂回輸出する拠点として、米国から厳しい目を向けられるようになった。
中国の税関データによると、関税の影響で1~5月の対米輸出は前年同期比10%ほど減少した。一方、ベトナムのデータによると、中国からの輸入は同期間に前年同期比28%増加し、対米輸出は26%増えた。
投資銀行INGのアジア太平洋地域調査責任者ディーパリ・バルガバ氏は3日付リポートで、機械、電気製品、絶縁線、ケーブルなどの分野で「積み替えの明確な兆候」があると指摘した。
ベトナムはこうした迂回に対処するため、原産地証明の取り締まりを強化した。
ベトナムで作られる製品は、衣類、家具、電子機器を含め、中国製部品を使用するものが多い。米国がベトナムからの製品に課す関税率を20%と40%のどちらにするかをどのように決めるかは不明だ。
それでも、「(米国とベトナムの合意が)グローバル企業に送っているメッセージは明確だ。米中間の関税は引き下げられたが、中国を排除したサプライチェーンを構築すべき理由が後退したわけではない、ということだ」。キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、マーク・ウィリアムズ氏とギャレス・レザー氏は3日付リポートでこう指摘した。
ニュースは以上。
これを読んで、不平等条約じゃないかとおもうかもしれない。しかし、問題はそこではない。なぜなら、ベトナムが米輸出でどれだけ儲けているのか。24年末までに1200億ドル(約17兆4000億円)超の貿易赤字である。
この時点でベトナムからアメリカがどれだけ買っているかがわかるだろう。もっとも、これは米国企業が人件費が安いベトナムの工場で作った製品をアメリカに逆輸入しているためだ。
さらに、ベトナムで「積み替えて」米国に輸入されるモノに対し、40%の懲罰的関税を課すとしたとある。これは中国の迂回輸出を潰すのにベトナムが応じたことになる。
内容だけ読んで不平等だと思うかもしれないが、実際はベトナムが圧倒的に有利な位置に付いたことにかわりない。なぜなら、自国産は20%でいいんだから。アメリカ企業も大助かり。だから、アメリカのアップルなどの株価が上昇したわけだ。反対に中国産は40%の税金がかかる。でも、これ中国産だけに限定していない。
そう、ベトナムと言えばサムスン電子である。サムスン電子の世界最大の工場がベトナムにあったはずだ。だから、これは事実上のサムスン電子の製品をベトナムから米輸出したら関税40%かかるてことだ。つまり、サムスン電子大ピンチてことだ。
iPhoneの値上がり以上にギャラクシーが大きく値上がりすることになるわけだ。2024年、韓国のベトナムへの輸出額は583億ドル。そして、そのほとんどは韓国企業からの輸入だ。ベトナムの工場で生産して米輸出という迂回ルートは完全に絶たれたことになる。もっとも、韓国から輸出した方が安いかどうかは交渉次第である。