韓国経済を全く知らない初心者さんにわかりやすく、韓国が終わっている理由について解説していくのがこのコラム。理由その1は「家計債務」だったが、その2は「企業債務」である。
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企業債務というのは、企業が現在や将来において払わなければいけない義務のことであるが、重要なのは韓国企業の多くが「自転車操業状態」であるということだ。それではコラムの目次だ。
■前回のコラム
目次
1.自転車操業とは何か?
2.韓国企業の債務残高は?
3.資金調達に苦しむ韓国企業
4.資金調達方法その1「証券市場」
5.資金調達方法その2「銀行」
6.企業債務の弊害
自転車操業とは何か?
自転車操業というのは、操業を止めてしまえば倒産するしかない状況のことで、慢性的な赤字経営のこと。ただ、自転車操業という言葉自体は法人だけに使われるものではない。
韓国では自営業の経営状態についても自転車操業という言葉が広く用いられる。意味は同じだ。結局、稼いだ金で元本や利子も払えずに、毎日の経費や家賃だけでどんどん赤字になっても、店を経営している状態だ。自営業も、企業も自転車操業となればそこから抜けだすのは極めて困難である。だから、韓国のゾンビ企業は年々増加していった。
そもそも自転車操業というのはどこか1つでもショートすれば、もう、借金で首が回らない。危険な状態だ。
自転車操業となれば、湯水のように負債が膨らんでいく。なぜなら、支払日に借金を返済するのに、別のところから金を借りてくるのが常時となるからだ。もちろん、誰もただでは貸してくれないので高金利の利息が付く。しかし、高金利でも借りなければ倒産なので、結局、借りてしまう。
韓国企業の債務残高は?
このような韓国企業が2023年、原材料価格や人件費の高騰、金利引き上げなどから輸出不振と内需低迷によって急増した。その債務規模はが今年6月末現在で過去最高となる2705兆8000億ウォンとなっている。現在の日本円だと約309兆円だ。
これは韓国のGDPの124.1%となり、アジア通貨危機の108.6%と遙かに上回っている。つまり、韓国は家計債務もGDP越えで、もう、いきなり二冠である。後は政府債務もGDP越えを目指せば三冠王になるが、さすがに今年が1100兆ウォン程度であると、政府債務がGDPを超えるにはしばらく時間がかかるだろう。
しかじ、家計と企業の債務が急増していて、これを2つ合わせても、家計債務が最新のデータで1875兆ウォンだ。企業債務が2705兆ウォン。つまり、合計で4580兆ウォン。もう、韓国のGDPの230%ぐらいか。
因みに韓国企業の債務は世界第3位である。これも最新データを出しておこう。
国際金融協会(IIF)が19日に出した世界負債最新報告書によると、7-9月期基準で主要34カ国(ユーロ地域は単一統計)の国内総生産(GDP)比の非金融企業負債比率を調査した結果、韓国は126.1%で3位だった。1位の香港が267.9%、2位の中国が166.9%だった。
さらに、韓国企業の不渡り増加率は前年比約40%)でオランダの約60%に続き2位。後、韓国企業の負債増加速度も同じく世界第2位である。
このように韓国の企業債務も家計債務と同じで雪だるま式に増加しており、これも韓国が終わっている理由になりえるものだ。来年に少々、輸出が回復したところで企業債務が減るはずもない。もっと増える可能性の方が高い。
なぜなら、韓国企業は「資金調達」に苦しんでいる。その理由について解説する。
資金調達に苦しむ韓国企業
企業が資金を調達する方法は大きく分けて3つある。1つは証券市場から調達。2つ目は銀行など金融圏から資金調達。3つめは資産売却などだ。
資産売却はいらないセクターなどが出てきた場合、特別益と計上するものだが、実際、経営で苦しくなった資産を切り売りする場合が多い。例えば、経営危機の中国の恒大集団は50兆円以上の借金を抱えて、企業の資産売却に踏み切った。創始者の豪邸やヘリまで。売れる物はだいたい売ったそうだ。しかし、それでも50兆円なんていう負債にとどくはずがない。
また、資産の売却は将来、得られるはずだった稼ぎを減少させることも多い。例えば、工場を売れば、その分、生産量が減ってしまうわけだ。だから、一般的な企業は資産売却で資金を調達することはしない。証券市場か。銀行から資金調達する。
そもそも、何故企業が資金調達をしなければいけないのか。それは資金調達して設備投資をしなければ、これ以上の大きな成長が見込めないためだ。これはなんとなくわかるだろう。
例えば、予算1000円でカレーを作るのと。予算3000円でカレーを作るのでは、カレーに入れる材料が変わってくる。すると、やはり、3000円のカレーの方が美味しくなり、人気もでやすいのだ。もちろん、3000円のカレーが必ず1000円のカレーに勝てるかというのは別の話だ。そこはそういう工夫で1000円でも、3000円のカレーより、上手くなることだってある。
このように資金調達して、大きな資金を研究開発に予算を回すことで、企業は新商品を開発したり、生産性をあげたりする。資本社会が競争である以上、現状維持ではライバルに抜かれてしまう。
では、資金調達するにはどうすればいいのか。まずは証券市場を見ていこう。
資金調達方法その1「証券市場」
証券市場からは株を発行したり、社債を発行したりすることで投資家から資金を調達できる。ただ、多くの企業は株を発行しているので、新たに株式を発行するのは投資家にとってはマイナスになることが多い。よく出てくるのは用語として「増資」がある。
増資というのは企業が資本金を増加させること。その場合、新株予約発行して株式を増やすので、本来、株式を持っている投資家の株の価値が減ってしまう。株というのは発行している枚数が決まっているので、それが増えたら、当然、その価値が減るわけだ。
だから、投資家は増資という言葉に敏感に反応する。企業は資本調達手段としては増資はしにくいのだ。
次に増資がしにくいならどうするのか。今度は社債を発行するという手段がある。社債とは企業が3年満期で、額面、利率を決めて社債を作るので投資家に買ってもらうというやつだ。社債は満期までに利息がもらえる契約もあるので、買えば利息が支払われる。そして、満期になれば投資した資金はかえってくる。
問題は社債が返ってこない可能性があるてことだ。それは企業が資金繰りに困り、支払うお金が用意できない場合。ただ、この場合は社債は株と違って、優先弁済順位は高いので、企業が倒産しても資産を持っている場合は、それを清算して社債の返済にあてる。
だが、社債というのは企業の信頼で、買う、買わないかを投資家が判断するので、当然、儲かっている企業でないと買ってもらえない。儲かってない企業は利率を高くして条件を優遇して購入してもらう。
だが、それはわかりにくいので格付け機関がランク付けをしている。これがトリプルエーとか、そういう信頼度に関わってくる。格付けは銀行の信用度は非常に高い。また、韓電などの公企業もそうだ。サムスン電子やLG電子みたいに韓国を代表する企業の社債も格付けも高い。これらの企業の社債は倒産する心配もないということで、社債の金利が多少低く設定しても買ってもらえるのだ。
このようにして企業は証券市場から資金を調達する。もっとも、現在の韓国企業は一流企業以外の社債はほとんど買ってもらえないのが現状だ。その理由については別のコラムで出てくるが、レゴランド不渡りと、韓電債の大規模発行というものがある。
資金調達方法その2「銀行から融資」
証券市場で資本調達が十分にできなくなれば、韓国企業は銀行から融資を募るようになった。銀行というのは預金者から集めた「預金」を個人や企業に貸して、その利息で儲けているわけだ。だから、銀行は金を貸すときは預金の利率以上に、利息を高く設定する。当たり前の話だが重要なことなので確認しておく必要がある。
つまり、企業が銀行から融資を募れば、普通に高金利で金を借りることになる。もちろん、消費者金融みたい利率よりはずっと低い。しかし、銀行でさえ、貸出金利は7%を超えるのが韓国の現状だ。
企業は高金利でも資金調達が必要な場合は借りるしかない。これがまた自転車操業を増加させる。だから、韓国政府が銀行に貸出金利を揚げるなとか、無茶な要求をし出す。しかし、銀行は銀行で預金者への満期が近づいてるので、別の預金者から資金を調達しないと行けない。
企業債務の弊害
本来、借金をして投資収益を高める適切な負債活用は企業の成長にプラスとなる。これは本当だ。しかし、耐え難いほど多額の借金を背負えば、債務不履行と破産のリスクが高まるのもわかるだろう。
確かに企業は設備投資などを行って,未来の収益源を作っていかなければならない。だから、そのために借金して、それ以上のリターンが数年後に返ってくることを狙う。だが、実際は自転車操業ばかりだ。借金が多すぎて利息を払うだけで低一杯。挙げ句の果ては稼いだ利益では利息も満足に払えない。そんなゾンビ企業が倒産ラッシュを迎えてるわけだ。
先ほど述べたが、社債の金利が高くなって、その社債の利息を支払うことで収益性が大きく低下しているのが現在の状況である。なんとか高い利息を付けて自社債を購入してもらって今年の運営資金が調達できても、来年はもっと苦しい舵取りを迫られる。そんな企業がどんどん増加しているのがわかるだろう。そしていつしか耐えきれなくなり最後は破産ということだ。では、どれだけ破産しているのか
大法院法院行政処によれば、今年1~8月に全国の裁判所が受理した再生・破産など倒産事件は計13万7484件で前年同期を21.36%上回った。特に企業再生と企業破産がそれぞれ63.8%、58.6%増えた。企業の再生や破産の件数が13万78484件で、1年前より21.36%も増加していることになる。
また、稼いだ利益で利子も返せない「自転車操業」状態になってから7年以上たつ企業が全体の3.6%に達したという。
このように韓国企業は非常に厳しい舵取りに迫られており、年々、企業債務を増加させていく。そして、自転車操業が増えてゾンビ企業が蔓延する、それが韓国が終わっている理由その2となる。
多少、輸出が回復したところで、韓国企業の負債が消えるはずもなく、来年、再来年に試練を迎えることになる。