韓国経済、さらに危険になったウォン安政策の誘惑=韓国
記事要約:外部者の執筆コラムということで結構まともな分析がなされている。前半はほとんどただの経済史であり、中国とアメリカの貿易摩擦についての言及である。しかし、前置きが長い。1ページ以上かけてるのでほぼ斜め読みで良いと思われる。今回の記事で重要なのは7段目の「ところが」からである。
オバマ米大統領が署名したベネット・ハッチ・カーパー(BHC)修正法案の関することだ。これについては管理人も注目していたので過度なウォン安政策がこれに違反する可能性があることを指摘した。韓国は為替操作をしているとアメリカやIMFから直接言及されているので、いつものBHC修正法案が火を吹くとも限らない。だから、ウォン安政策を止めようという結論である。
また、先月に韓国は為替操作国ではなく、観察対象国に分類されたので制裁をすぐに心配する必要はないらしい。これってそういう問題の分類じゃないと想う。明らかにこれ以上やるなら為替操作国に認定してBHC修正法案で制裁しますよという警告のような・・・。とりあえず、今のままでは韓国のTPP加入が夢の出来事というのは管理人もそう思う。それでは結論を抜き出してみる。
>輸出を増やすウォン安政策の誘惑は得より失がはるかに大きい。韓国経済の構造的弱点である過度な輸出依存を抜け出すのにも役に立たない。難しいほどマクロ的で中長期的な見識からバランスの取れた経済政策を使わなければならない。
まず、アメリカのことを置いといて,韓国のウォン安政策による輸出の拡大は,韓国経済が1997年のアジア通貨危機で一度デフォルトしてからずっと続いてきたもの。なので、今年で19年目になる。それで韓国はそのウォン安政策でそれなりに豊かな国になった。もちろん、そこにはIMF、アメリカや日本の支援があったことは言うまでもないのだが、輸出拡大で韓国が生きている事実がある。
貿易で食べている国が韓国だ。それがあるのでウォン安政策を止めようというのは一種の自殺行為である。ただ、過度な輸出依存を是正するなら政策は邪魔にしかならない。しかし、現時点において、韓国の貿易依存から抜け出す方法はない。産業構造なんてものは数年で変わるものではない。何十年もかけてようやく変化が見られるものであり、日本だって輸出で稼いでいたのを金融やサービスで稼ぐようにシフトするにもまだまだ時間がかかっている。
中期的な見解を述べれば韓国の輸出依存を治す薬はない。なぜなら、止めた瞬間、経済が回らないからだ。ただ、ウォン安政策をこのまま続けても未来はないだろう。アメリカはそこまで甘くない。トランプ氏になれば本当にスーパー301条みたいなことを平気でやりそうだからな。
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韓国経済、さらに危険になったウォン安政策の誘惑=韓国
第2次世界大戦以降に始まったブレトンウッズ体制は安定的な為替相場と国際収支維持を世界 経済の最優先目標にした。国際通貨基金(IMF)と世界銀行はこれを後支えするために設立された機関だ。そうするうちに1970年代半ばにこの体制が崩れ 外国為替市場の需要と供給により為替相場が決定される変動為替相場制が導入された。その後為替相場政策は基本的に各国の裁量権とされた。
だが中国が世界経済に本格的に編入され為替相場政策が本格的に国同士の紛争対象に浮上した。中国は94年から10年以上にわたり1ド ル=8.28元で為替相場を固定した。中国の輸出が急増し対米貿易黒字も急激に増えた。2000年に約2000億ドルだった中国の外貨準備高は2014年 半ばに4兆ドルまで膨れあがった。これに対し米国の貿易収支は悪化が続いた。金融危機前の2005年に米国の商品貿易収支赤字は680億ドルに拡大した。 貿易収支赤字額が国内総生産(GDP)の6%に達するほどだった。
米国議会は為替相場の操作で自国の貿易収支を悪化させる国に報復措置をする法案を作ろうと試みた。ノーベル賞を受賞した国際貿易論の 大家ポール・クルーグマン教授やワシントンの代表的シンクタンクであるピーターソン国際経済研究所のバーグステン所長のような学者まで対中貿易報復措置を公開的に支持に乗り出した。中国はこうした米国の動きに強く反発し、人為的な為替相場調整はないという頑強な立場を堅持している。85年9月のプラザ合意 当時米国の圧力で急激な評価切り上げを敢行し長期沈滞を迎えた日本の事例を強く意識しているとみられる。
米国議会と産業界の強硬な立場にもかかわらず、為替相場操作を根拠に貿易報復を加える法案は実際には立法されなかった。世界貿易機関 (WTO)体制で合法性の問題が引っかかるためだ。現在の米国の為替相場操作国対応は88年に制定された総合貿易法に基盤を置いている。
財務省が為替相場 政策に対する監視を強化し操作の疑いがある国に対しては為替相場操作防止に向けた交渉を開始するようにする内容が含まれている。だが報復措置が抜けており 実効性は大きくなかったのが事実だ。米財務省が毎年2回為替相場政策報告書を発表したが特別な関心を集めることができないのもこのためだ。
ところがオバマ米大統領が2月24日にベネット・ハッチ・カーパー(BHC)修正法案に署名し雰囲気が変わった。BHC修正法案は為 替相場操作国を米国の政府調達契約から排除したり該当国に対する投資支援を禁止できるようにしている。IMFを通じた監視と公式協議の要請も可能にした。 WTO規範に反する直接規制は抜けているが、これまでよりはるかに強力な貿易制裁が可能になった。BHC修正法案が「為替相場301条」とまで呼ばれる理 由だ。
この法律は特に米通商代表部が貿易交渉をする際に相手方が為替相場操作国に指定されている かを考慮するよう指示している。現在進行中の米中投資協定と、韓国・日本・台湾が含まれたサービス貿易交渉、韓国の環太平洋経済連携協定(TPP)加入交 渉に為替相場問題が影響を及ぼしかねない。
昨年TPPが妥結した後に出された財務当局間の共同宣言文にも各国が為替相場政策と関連した多様な統計資料と情 報を公開するようにする内容が盛り込まれた。為替相場政策が不透明に見えれば現実的な不利益を受ける時代になった。
米財務省は先月出した2016年為替相場報告書で韓国を為替相場操作国ではない観察対象国に分類した。制裁をただちに心配する必要は なくなったが、ただ安心できる状況でもない。TPP加入と対米投資誘致で韓国の為替相場政策が障害要因になる火種は残っている。
特に対米貿易黒字規模が大 きいドイツ、日本、台湾だけでなく、BHC修正法案の核心ターゲットである中国まで一括的に為替相場観察対象国に指定された点を注目しなければならない。 米国が為替相場観察対象国リストに上げたというのは近く直面する全面戦争に先立ち宣戦布告をしたのも同様だ。
現在韓国政府は輸出拡大に総力を挙げている。2010年代に入り停滞した輸出が昨年から急激に減少し景気を引き下げているためだ。こ のために産業構造調整を推進し新産業育成、市場多角化のような努力に傾注している。長期的にグローバル競争力を回復し自然に輸出を増やそうという合理的な 方策だ。
ところで産業界と政府の一部で為替相場を輸出拡大の道具として使おうという主張が提起され心配だ。長期的な体質改善には役に立たず副作用ばかり生 みかねないためだ。そうでなくてもうれしくはない不況型黒字が続いている。韓国の為替相場政策に対する信頼が低くなり米国との通商摩擦が起きる余地が大き い状況だ。
輸出を増やすウォン安政策の誘惑は得より失がはるかに大きい。韓国経済の構造的弱点である過度な輸出依存を抜け出すのにも役に立たない。難しい ほどマクロ的で中長期的な見識からバランスの取れた経済政策を使わなければならない。
安徳根(アン・ドックン)ソウル大学国際大学院教授
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